海外教育コラム(第2回 英語教育を「そこまでやる」時代)


子供に英語をネイティブなみにマスターさせるには、英語で全科目を教育するのが最も効果的だ。片親が欧米人または英語ネイティブの日本人で家庭内を英語環境にできるのであれば日本の学校に行っても子供はバイリンガルになる可能性は高い。しかし、そうでない場合には、子供が最も多くの時間を過ごす教室内、さらに友達との会話を英語にする必要がある。至極シンプルな話だが、日本国内でこの環境を作ることが最も難しい。日本人の英語力が上がらない最大の理由がここにある。日本人は中学校から大学まで英語を勉強しながら英語ができないとよく言われるが、むしろ日本語に比べて使う機会や時間が圧倒的に少ないからできないと考えるべきだ。

では、この最初の難関をどう突破すればいいか。日本国内で言うならば、インターナショナルスクールに行かせるのが手っ取り早い。幸いなことにこれだけ英語教育熱が高まっていても、筆者が長女を最初に入れた12年前から東京を除けば競争状況が大きく変わっていると思えない。学費は確かに高いが、リーマンショック後、東京都心のマンションの価格は5割は上がってると思うものの、インターナショナルスクールの学費はそれほど変わらない。私立小学校のお受験ほど親の手間もかからない。英語をマスターすることで子供が得る様々なメリットを考えるともっとインターナショナルスクールに子供を通わせる親は増えるだろう。

ただ、そうは言っても日本にはインターナショナルスクールの数も定員も限られており地域も首都圏を中心とする都市部に限られている。実際のところ出願しても入学を認められないケースは多いだろう。また、地方在住の場合には、自宅から通わせることができなかったりする。それなら一層のこと、海外のボーディングスクール(寄宿学校)に小学校から行かせるという方法もある。特に英語学習のスタートが遅く、小学校入学時以降に英語力が十分でなければ、日本のインターナショナルスクールは入学を認めてくれない。むしろ海外のボーディングスクールの方が小学生次であれば入学が容易だったりする。小学校からボーディングを認める学校はそれほどの数はないが、スイス、イギリス、オーストラリアにはある。当然学費も高額で、子供と小学校から離れて住むのは相当辛い。そこまでするか、と言いたくなる気持ちも理解できるが、実際に何人かの知人たちが行かせている。

そこまでの学費を支払うのは困難だったり親元から1人で小学生を離すのは忍びなかったりするという場合には、英語圏の小学校や多言語圏のインターナショナルスクールに母親と一緒に住んで通うという方法がある。昔から中国人はアメリカやカナダを含む様々な国で子供に英語教育を施していた。何年か前に韓国人がよく母親と子供たちをニュージーランドに親子留学させて、残った父親が寂しい思いをすると話題になってた。オーストラリア、フィリピン、マレーシア、インドネシアにも韓国人の親子留学は多い。日本の場合、父親の海外赴任で家族が同行し、子供たちが現地で通学するケースはよくあった。親子留学はせいぜいハワイくらいだった。昔、新聞が保有マンションを売却して子供を留学させる中国人や親子留学の韓国人をそこまでやるかという風潮で記事にしていた。が、その後一部の韓国企業や中国企業はグローバル化し、こういった企業への就職のハードルはどんどん上がっている。おそらくそこまでやった人の苦労は報われただろう。筆者の従兄弟は長女と奥さんをニュージーランドに留学させたが、その甲斐があって長女は今年グローバル韓国企業に就職した。今後グローバル日本企業も英語が堪能な日本人を今以上に積極的に採用するようになるだろう。今はまだそこまでやるかという話が、あの時ああしていれば良かったという話になる。特に日本では、周りと違うことを行うことを特に躊躇する傾向にあるのでこういう事態に陥りやすい。

今後日本人の親子留学は増えると筆者は思う。その背景は通信やITの進歩により、人々の働き方が変わり、東京その他日本国内に居なくても日本企業と取引しながら収入を上げることが容易になった。その形態は個人の場合もあれば、海外で起業する場合もある。また、そういう外注企業が増えると現地で就職する道も広がる。そもそも日本企業と取引しなくてもユーチューバーやインスタグラムを使ったりブログを書いたりして、インターネット世界の不特定の顧客から収益を上げることもできる。しかも、こういった選択肢が子育て世帯の若い人たちに急速に広がっている。昨今のベンチャー起業ブームで若くして事業を売却すれば海外赴任の辞令を待つまでもなく自由に海外に家族で移住して子育てをできる。また、そこまで行かなくてもそもそも海外で子育てをしながら収入を上げることができる。

日本企業と取引をしながら生活しようと思えば、時差が少ないアジアの国が適切だ。教育レベルが高いことで有名なシンガポールや香港がこういう方たちの中で人気移住先だが、生活コストは比較的高い。シンガポールや香港で住むビジネス上の理由があるのでなければフィリピン、マレーシアでは学校は英語で教育しているし、タイ、ベトナム、インドネシアでもインターナショナルスクールでは英語で教育している。日本のインターナショナルスクールに行かせるのと違い、実際に海外で教育を受けた場合には、日本の高校や大学を受験することになっても帰国子女枠で比較的有利になるというメリットもある。知人の子供たちが海外に移住して現地のインターナショナルスクールやローカル校に行かせる数が増えている。日本の駐在員も最近は日本人学校ではなく現地校やインターナショナルスクールに子供を行かせる人が増えてきた。2、3年前からこうして育った子供たちが海外大学に合格したという知らせを毎年耳にするようになった。日本の働き方が大きく変わる中で今後さらに増えるだろう。子供はあっという間に成長し、英語を柔軟に吸収する時期はすぐに過ぎる。「そこまでするか」と躊躇していると「ああしとけば良かった」と悔やむことになる。


玄君先
玄君先


神戸市出身。私立灘高校,東京大学法学部、UC Berkeley LLM,三井安田法律事務所,西村あさひ法律事務所,モルガン・スタンレー証券,メリルリンチ日本証券、リーマン・ブラザーズ証券を経て弁護士法人港国際法律事務所代表、シンガポールにてEntrehub Serviced Officeを運営。シリコンバレーにてMicro Venture CapitalのTaimatsu Venturesを設立し、スタートアップ企業に投資中。

玄君先の記事一覧