UberとOla、日本に先行するインドのライドシェア事情


インドではここ数年ライドシェアサービスが、ここ数年大きく普及し、都市部を中心に交通インフラの風景を変えています。

通勤時間帯には、オフィス街の前はUberやOlaの車両で埋め尽くされる。

UberとOla

インドで主要なライドシェアサービスはグローバルプレイヤーのUberとローカルプレイヤーのOlaの2社です。いずれのグループもソフトバンクから出資を受けておりシェア争奪にしのぎを削っています。デリー近郊で2社合計15万台の車両を有しているとも言われ、東京の約5万台と比較してもその規模感が想像できます。

また、所得格差の大きいインドならではで、ライドシェアの対象となる乗り物もオートリキシャから、バイク、バス、乗用車、高級車と様々です。実はインドでは、これまでも乗り物をシェアするという習慣は一般的にあり、通勤・通学時のバンやリキシャ(オート三輪)を数人でシェア(乗合)して移動するということは一般的に行われていました。地下鉄等の公共交通機関が日本のように発達しておらず、どうしても車での移動が必要となることと、安く移動するためには多少の不便は受け入れるという合理的な考え方が背景にあります。それが、最近のスマートフォンの普及とテクノロジーの発達によりさらに加速しています。

また、元々所得が高い層は自家用車でオフィスまで通勤する習慣がありますが、近年自動車台数が増加し都市中心部では駐車場不足なども課題の一つとなっています。そのため自家用車で通勤する場合、オフィスから離れた場所に駐車しなければならなかったり、駐車スペースの不足解消のため立体駐車場などの導入が始まっているほどです。よって、固定のユーザーに帰属しないライドシェアサービスは、駐車場を必要とせず、今後も人口流入が続く、大都市圏においては引き続き普及していくと考えられます。

日常私自身も利用していますが、ライドシェアサービスは非常に便利なサービスです。例えば私の場合、毎朝スマートフォンで配車をしたタクシーに自宅前から乗り、30分ほど離れたオフィスの前までドアツードアで移動します。車内ではスマートフォンでSNSやメールチェック、電話することも当然できます。

距離にして15キロ、料金は250ルピ―(約430円)とインド的には安い金額ではありませんが、日本人からすると電車代と大して変わらない金額ではないでしょうか?決済も事前登録したクレジットカードから引き落としなので、降車時には特に支払いのやり取りは発生しません。また、行先も配車時にGPSで設定しているので説明は追加で必要なく、道が分からないということもありません。Google Mapが快適に指示を出してくれます。

Uberの配車画面

日本のタクシー事情

一方で、日本においては、タクシーを利用する際に不便を感じることが多々あります。タクシー乗り場からしか利用できない(銀座でタクシーを拾おうとすると、素人にはもはやどこから乗ればいいのか不明)、行先を知らない、支払で1万円札が使えない、カードが使えない、個人タクシーだと近場だと乗車拒否される、そして最後に料金が高いことです。少し距離を乗ると2000円を超えることもあり、心の中でこの金額払えばインドなら1日貸し切りできるのになとつぶやいています。

私自身は、ライドシェアサービスのなかった、2010年からインドのニューデリーに住んでいます。公共交通機関が未発達な都市に住む不便さも知っていますし、ライドシェアが既に交通インフラとして日常生活に普及している便利さも享受しています。タクシーとライドシェアは同じ移動手段ですがユーザーとしての体験は全く異なります。以下に簡単な比較表を作成してみました。

タクシーの場合は、タクシー会社がありその従業員がサービスを提供するため、サービス品質を担保するのはタクシー会社の責任です。一方で、ライドシェアの場合、個別のドライバーがサービスを提供するためサービス品質を担保するのはドライバー自身です。品質を担保するため相互に評価するシステムが導入されており、信用をベースにライドシェアの環境が構築されています。今まではお客様が神様という上下関係がありましたが、シェアリングエコノミーの中ではサービスの提供者も受益者も対等な立場で相互に評価される仕組みにあります。

実際に評価の高いドライバーから優先的に配車されるため、ドライバーの接客態度も向上してますし、評価の低いドライバーは最終的に配車される台数が減るため継続していくことが困難です。


Olaの乗車後のドライバー評価画面

少しライドシェアサービスについて、長所ばかりを述べてしまいましたが課題もあります。不特定多数のドライバーを利用するため、安全面での課題や忘れ物をした際にドライバーと直接やりとりを行わなければならない点は非常に不便です。私自身車内に一度忘れ物をしたことがあり、ライドシェアの場合基本的にはドライバーはすぐに次の顧客にサービス提供を開始してしまうため、なかなか連絡がつかなかったり、忘れ物を届けるための追加料金を請求されたり苦労をした経験がありました。

日本では既存のタクシー産業対ライドシェアの構図がありますが、インドでは既存のタクシー業者は圧倒的な利便性の前にほぼUberとOlaの2社に吸収され、車両はタクシー会社の車両を利用していますが、配車はUberとOla経由になっているのが現状です。日本ではまだ規制緩和が進んでおらずタクシー中心の車両移動サービスが提供されていますが、今後はその緩和が進み消費者がライドシェアのサービスを選択できるようになり利便性が高まっていくことを期待しています。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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