<インタビュー記事>―沖縄はエストニアを目指す、スタートアップカフェ・コザが開く未来―


 

沖縄県沖縄市、全国でも例がない創業起業支援施設、プログラミングスクールとICTによるFAB施設を兼ねた「スタートアップカフェ・コザ」は東京などの大都市との補完関係を生かした施設として話題となっています。The Urban Folks編集部では仕掛人の1人である上田紘嗣・沖縄市副市長へのインタビューを実施しました。

Q.沖縄市がICT産業によるスタートアップ支援に取り組まれている理由を教えてください。

A.(上田)
スタートアップカフェ・コザを中心とした取り組みは「沖縄市の雇用をどうしようか」というところからスタートしています。市のスペックは、面積が49キロ平米(うち16キロ平米が嘉手納基地)で人口は14万人となっており、人口密度が神戸市並みで製造業を誘致するにも広大な土地がありません。また、嘉手納基地の門前町として発展してきたと言う人もいるくらいに、第三次産業中心の経済構造となっています。そのため、限られた狭い場所で可能性があるものを選んだ結果ですね。

Q.スタートアップカフェ・コザが創設された経緯についてお教えください。

A. (上田)
従来までの市レベルのICT政策というとインフラ整備や市庁舎内でのICT化の取り組みなどがありますが、沖縄市でも様々取り組んだものの、実際にはなかなか目に見えるような成果に繋がらないことが多いものでした。また、コールセンターの誘致のような施策にも取り組んでおり、これはこれで重要なのですが、働いている方からはキャリア形成が難しいという声もあがっていました。解決策を模索していたところに、スタートアップやICTについて民間で勉強会等を開催されていた方々がおり、市職員や市議会議員がジョインする形で議論が発展し、沖縄市としてバックアップすることになりました。そのような経緯もありスタートアップカフェ・コザの運営は民間のコンソーシアムで運営されています。

Q.他の自治体で行われている創業支援施設との決定的な違いを教えてください。

A.(上田)
今回の取り組みは形式やハード施設ありきではなく、実際にコンテンツを練ってからハード整備を行ったということころですね。スタートアップカフェ・コザで実施するプログラミングスクールでは、単純にプログラミングの教科書をなぞるのではなく、雇用増や起業を目的に作られた取り組みとして、実際に民間のコンソーシアムが東京等で受注した仕事を卒業生に発注するなど、出口を見据えた取り組みとしています。卒業制作もあるのですが、良いものに対しては投資の対象になるものもあると聞いています。シャッター街のど真ん中の空き店舗を利用したこともあり、多くの人が面白がって見に来てくれますね。

 

Q.プログラミングスクールは既に卒業生が300名程度になっていますが、どのような方が多いでしょうか。

A.(上田)
プログラミングスクールは市民だけでなく市外の方も低料金で応募いただけます。東京の経営者の方にコンセプトに共感して頂いて、新人研修を兼ねて10名程度が2か月泊まり込みで参加して頂いたこともあります。

Q.プログラミングスクールの受講生には年配の方、中高生、外国の方など、色々な人がいいますね。これもスタートアップカフェ・コザの特徴でしょうか。

A.(上田)
そうですね。沖縄市は人口が増加していて街中でもよく子ども連れの親子を見かけます。また、40か国以上の国籍の方々が住んでいるダイバーシティに富んだ街でもありますからね。プログラミングスクールへの参加条件は、原則としてやる気があるかどうかだけです。ICTを特別なものだと思わず、面白がって色々な方々が参加してくれると良いと思っています。文科省では、2020年から小学校のプログラミング教育が必修化されますが、沖縄は大家族の同居家庭も多いので、お孫さんから高齢者の方など市民の多くがプログラミング教育を受けるきっかけになるではないかと期待します。

Q.沖縄市独自の地域課題を解決するためのICTの活用方法などをお考えですか。

A(上田).
沖縄市では政府の日本再興戦略2016、未来投資戦略2017に沿った1万人規模の多目的アリーナを作る予定になっていますが、スポーツや芸能などとICTを組み合わせた新しいサービスを作っていきたいです。既に2023年に開催されるバスケットボールワールドカップの誘致に成功し、次はほかの屋内スポーツの国際試合の誘致も狙っています。その中で最先端のICTとイベントを組み合わせたサービスを作るとともに、これは個人的願望に近いのですが、街全体・商店街など全体をサイバー化するようなスマートシティとして発展させていければ面白いことになると思っています。

Q.スタートアップカフェ・コザの将来的なビジョンについてお教えください。

A.(上田)
沖縄県全体の人口はICT先進国と呼ばれるエストニアと同じくらいです。この地域全体を実証研究アイランドとして、例えば海外で利用されていて日本に導入できていないサービスや、地域課題を解決し日本全体のイノベーションにつながるようなアイデアを具体化していきたいですね。東京でうまくいっても地方では状況が違うことも多い中、むしろアジアに近く、多様な課題のある沖縄のような地方で成功すれば日本中ひいては世界にスケールするサービスになるのではないかと思います。スタートアップカフェ・コザをその取り組みの中心として活用していき、理想は卒業生の寄付などで取り組みを維持・発展できるようになることですね。


The Urban Folks 編集部
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