川松・音喜多両都議の「情報発信の在り方論争」に足りないもの


川松真一朗東京都議会議員が「日本を滅ぼす”ブロガー議員”に伝えたい事 議会質問は根拠薄弱な臆測ばかり」という記事で、同じ都議会の音喜多駿都議会議員の情報発信の在り方について苦言を呈したのに対し、音喜多都議も「ついに日本を滅ぼすほどの力を持ってしまったので、政治と情報発信のあり方について考察してみた」で反論を試みています。

筆者の個人的な感想としては、積極的な情報発信を実施すること自体は当たり前のことであるし、それによって政治的争点を喚起していくことが政治の仕事だと思っています。

議員報酬という形で給与を得ている以上、納税者から見ればブログ更新は当たり前に行われるべき「日報」のようなものであり、一人の都民・納税者の視点に立てば音喜多都議のほうが妥当だと思います。川松都議が述べているように自分は凄いことを仕掛けているのだから雇い主に日報を出さなくて良いという話にはなりません。常に行われる情報発信の中で常に牽制的に打ちまくるジャブ、そして一撃必殺のストレートがあれば良いだけの話です。

むしろ、真の問題は、音喜多・川松両都議が双方ともに、政治家が自ら毎日のように頭と時間を使って調べ物をしてブログに書き続けること、またはオリンピックの「開催時期を夏からずらす」という大半の都民にとってどうでも良い寝技を大技だと認識していること、のように「本当に政治家にとって重要な仕事なのですか」と思うようなことを議員の仕事(=政策)としてアピールしていることではないかと思います。本人たちはそれが大事だと思っていることは理解しますが。。。(本人たちは圧倒的に他議員と比べて頑張っているとは思います。)

このまま現状の情報発信を続けても「政治家やマスコミが重要だと思うこと」が「都民にとって重要な政治課題」になるだけでしょう。このような政治家やマスコミが仕掛ける側で都民が受け身になっている政治の在り方を根底から正していくことが大事です。

この状況を変えていくためには、民間・納税者側に政治家に毎日のように政策情報を政治家・有権者にインプットし続ける米国のヘリテージ財団のような即応性の高いシンクタンクが必要です。

都政に対する質が高いレポートとしてまとまった形でタイムリーに提供される、それも都庁からの情報ではなく民間の視点からファクトをおさえたものが政治家・有権者の手に入る環境が重要です。

課題設定・政策作りを担うシンクタンクが成立することによって、政治家の情報発信の質が向上し、政策議論も高度化し、そして都民の感覚と合致した政治が誕生することになります。議員が独りよがりに考えた情報発信からの根本的な脱却が求められます。

とは言うものの、いきなり米国のようなシンクタンクが生まれるわけではないので、都議会議員は毎月60万円の政務活動費が支給される「地方議会の中では破格の待遇を受ける存在」であることを生かし、自ら政策を購入することを宣言して様々な提案を受け付けることからスタートしたらどうでしょうか。政治家としての情報発信の在り方だけでなく、政治家としての情報の受け取り方・質のあげ方についても議論してほしいと思います。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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