<インタビュー記事>福田峰之×中村まこと、スタートアップカフェコザの野望


沖縄県沖縄市、全国でも例がない創業支援施設とプログラミングスクールを兼ねた「スタートアップカフェ・コザ」は東京などの大都市との補完関係を生かした施設として話題となっています。The Urban Folks編集部では運営責任者である中村まことさん、そして現在進行形でプログラミングスクールに生徒として参加していた福田峰之・元内閣府副大臣の対談インタビューを行いました。

福田
縁があってお世話になっていますスタートアップカフェ・コザですが、本当に多くの人、政治家、官僚、地方自治体の人が見に来ますね。そして、僕のように実際にセカンドキャリアを考える年齢の人もプログラミングスクールを受講しに来るわけで、これは成功しているって証拠だと思いますね。どのような考え方で運営されているのかを教えてもらっても良いですか?

中村
僕は東京でも支援・育成投資をしていますが、渋谷を中心としたエコシステム、ビットバレーの仕組みがうまくいっていないと思っています。人によっては日本のスタートアップには投資の価値がないという声すらあります。そして、実際に最近の世界的な潮流としては、シリコンバレーのような先進国でイノベーションが起きるのではなく、実は問題が多い新興国に投資してイノベーションが起きる傾向があります。コザにはそれと似たような環境がありますね。

福田
那覇ではなくコザであった理由もその辺りにあるのですか?

中村
これが那覇ならやらなかったです。コザは13万人の人口、そして42か国の国籍の方が住んでいます。新しいイノベーションを起こすにはダイバーシティーが必要不可欠であるということ、そして沖縄科学技術大学院大学が丁度20分程度の場所にあるというのがポイントですね。


受講生に混ざって黙々とスクールの予習に励む福田峰之・元内閣府副大臣

福田
この場所がシャッター通り商店街の中にあるっていうのも面白いですね。

中村
スタートアップカフェは中長期的には水平展開するものであって、この場所はプロトタイプとして考えています。商店街全体をアーケードがある新たなイノベーションが起きる1つの大きな建物として考えています。実はスタートアップが盛んなベルリンでも東ベルリンのボロボロの建物をリノベーションして使うことが多いのです、センスが良くて家賃が安いという利点もありますからね。

福田
そもそも創業支援の拠点でプログラムミングのスクールをなぜやろうと思ったのでしょうか?普通はそういうことをやらないですよね。

中村
そもそも今の世の中で起業する際にコンピューターやプログラミングを用いずに始めることはあり得ないと思います。爆発的に成長する企業であれば当然ですし、インターネットとLCCがあれば地方でも東京クライアントの仕事をすることは容易になっています。そのため、労働市場の中で市場化されてないところを市場化することに目をつけました。たとえば沖縄はシングルマザーと貧困の再生産が問題になっていますが、彼女たちもプログラミングの仕事をリモートワークでできるわけです。さらに、様々な社会問題を解決するため、スクールを作ってエンジニアがいればリスクなく起業することもできます。

福田
起業支援拠点として、起業を促す、あるいは仕事自体を発注するという出口を用意したところが大きいですよね。

中村
プログラミングスクールの初日に、受講生の方に最初に伝えることは「課題を見つけた時に自分で解決すること」に気が付いてほしいということです。実は我々の運営主体自体は学校を運営しているだけではなく、実際の世界の先端を見据えて開発して投資もしている会社だということが決定的に違うところですね。そのため、良いものがあったら投資したいのは当然ですし、シリコンバーの話をしてもリアルではないので、何もないところから数人でもやれることを実際に示してエコシステムを作ることが大事です。

同時期の受講者内での学習進捗具合が点数ランキングで表示される仕組み

福田
僕もスクールでプログラムをゼロからやって学んでいる受講生だけれども、相当気合入れないとできないですね。これを40日という短期間でやる意味は大きいですね。僕のように役職定年するくらいの年齢、53歳になるとこれぐらい集中してやるのが丁度よく、何とか覚えられる。

中村
人間の学習曲線が一番良いギリギリの期間設定ですね。プロゲートさんのシステムを使ってコストを下げられるところを下げつつも、リアルの授業を提供するとやはり習熟が違ってきます。プログラミングを覚えることはもちろん、最終的にはググる力、自分で問題を解決できる力を身につけることができれば成功です。

福田
このような形で草の根の人材育成を進めることは重要だと思いますね。これから更に高度な技術者、最も高いレベルのサイバーセキュリティの技術者を3万人作ろうって新たに法律まで決めたけれど、そのためには今までの一般的な仕事を誰かほかの人がやらなくてはいけない。だから、ボトムアップで裾野を広げる押上型の人材育成が大事ですよね。

中村
その通りです。そして、もう1つの問題として、日本はプログラマーが数学出来ない、という問題があります。プログラマーが上に上がろうと思ったとき、工業数学を教える仕組みが日本にはほとんどありません。沖縄科学技術大学院大学にはIBMのワトソンを作ったような方がおり、数学などについても高度な学びの場を提供できる環境があります。
我々もワンランク上のスクールを創ろうと思っているのですが、3年間くらいかかりますね。今ちょうどプログラミングスクールを始めて1年半、その中からも上を目指す人材が出てくるでしょうね。

福田
プログラミングを社会課題の解決のためにどのように使えるかという見方ができる人材が必要だね。僕のように、たとえば40日間、利活用の専門家がプログラムを学ぶ。それだけではなく、プログラマーが社会的な利活用を考える。そんな感じのプログラムも良いね。

中村
その意味ではセカンドキャリアの人たちの経験が大事になってきます。テクノロジーと社会の両方を分かっている総合格闘技のイメージです。AIがコーディングしてしまう時代がくるとプログラマーも淘汰されます。その時、社会課題をプログラミングを使って解決できる人材が重要になります。そのため、ここでは社会課題的なことに対するイベントも開催していて、価値を作れる人間を作っていくことに力を入れてます。

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福田
人生100年の中でセカンドキャリアとしてプログラミングを学ぶ人に期待することは何ですか。

中村e
東京のビットバレーがうまくいっていない理由は、若ければ良いということで大学生に投資してなかなかうまくいかなかったからです。それはシリコンバレーでも一緒でしたが、30代・40代の社会人の経験を持った人に投資したらうまく回り始めました。今、実際に社会を変えている日本人は40代の人たちが凄いなと思う人が多いですね。ITが特別な人たちが使うものというイメージを変えてほしいですね。

福田
僕みたいな政治家はルール形成の専門家としてやってきたわけだけれども、これからスタートアップが成功するために、必要なルートをしっかり繋げる人も必要ですね。

中村
20代は社会的な繋がりをちゃんと持っている人は少なくてオボコい。30代・40代でITを身に付けたエコシステムの中心になる人材です。自分自身の自己受容感や欲求を埋めるためではない社会を変えたいという人を掘り当てること。ロビーイングなどもこなせる人材も重要で、取り組みを一緒に支えてくれるクレイジーな官の人たちとかが出てきてくれると良いですね。

福田
最後に今後のビジョンについても教えてもらえますか。

中村
インターネットだけではなく人と人が繋がる中でミーム(文化的遺伝子)の伝播が重要です。ミームを持った人たちが有機的に結びつくことで未来への考え方が拡がります。そのため、国内だけでなく海外展開も考えていきたいです。日本の若者が「努力が報われない」と思っている現状を変えて、中国の若者のように「企業面接に落ち続けたジャック・マーみたいな人が10年でやれるなら俺もやれる」と思っている感覚を伝えたいです。そのため、若者だけでなく30代・40代・50代の社会システムを作る人たちと「どのように結びついていくのか、どんな未来を創るのか」というネットワークを作ることを意識していきます。

福田
プログラミングスクール卒業生が、起業し社会課題を解決するビジネスで成功し、儲かるような事例がたくさん出てくるように協力しますよ。先ずは卒業生ネットワークのための同窓会づくりから始めますか。


福田峰之
福田峰之

前衆議院議員
1964年生まれ、目黒サレジオ幼稚園、東京学芸大学附属世田谷小・中学校、神奈川県立白山高校、立教大学社会学部卒業。衆議院議員秘書、横浜市会議員(2期)、衆議院議員(3期)。内閣府大臣補佐官、内閣府副大臣を歴任。多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授。2017年「希望の党」から東京5区(目黒区・世田谷区、一部除く)で立候補するが落選。

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