米シンクタンク最新情報・第2回 台湾が訴える、国際機関への参加と東アジアの安定


2月8日、米国ヘリテージ財団にて、台湾の大陸委員会で次官をつとめるChen-Yi Linが台湾の国際機関への参加を求めるスピーチをおこなった。大陸委員会とは行政院 (日本では各省庁にあたる) の下部組織であり、その長は、議決権はないものの行政院委員会 (日本では内閣にあたる) に出席することができる。業務内容は台湾海峡の両岸関係だ。

Linが訴えたのは、中国が今年1月4日にM503航路の北上航路とW122、W123航路の運用開始を一方的に通告したことの危険性だ。これは2015年に結ばれた両岸合意に反している。

一方的に現状の変更を試みることは狭い台湾海峡上空において民間航空利用者の安全に関わるだけでなく、台湾海峡周辺の不安定化を招く。まさにそのような調整をおこなう場である国際民間航空機関 (ICAO) に台湾がいまだ参加を認められていないことが、東アジア情勢の根本的な課題の1つとなっている。

以前にも同様に中国が一方的な運用開始を宣言し、地道な両岸交渉がおこなわれてきた歴史がM503航路とW122、W123航路にはある。

2015年1月12日、中国は同航路 (W121航路をふくむ) の運用開始と3月5日に実際のフライトを予定している旨を一方的に通告した。同日、大陸委員会と交通部 (日本では国土交通省にあたる) は「このような行為は到底受け入れられない」との声明をだし、両岸交渉を要求した。その後、3月2日にはW航路に関して「現時点では運用せず、開始時期は両岸の対話と確認による」ことが同意された。 そして同月29日にM503南下航路の正式運用開始と同時に、「M503北上航路とW航路は当面運用せず、開始時期は両岸の対話によって確認される」という結論にいたるのである。

そして今年1月4日、中国はM503北上航路とW122、W123航路の運用開始を、またしても一方的に通告した。同日のうちに台湾政府は反対声明をだし、両岸交渉を要求したが、いまだそれは実現していない。これは、「両岸係争は求めのあった場合、30日以内に話し合いによって解決されなければならない」と定めるthe Cross-Strait Collaboration Agreement on Flight Safety and Airworthiness (2015) に反するものだとLinは指摘する。

そもそも国際民間航空の健全な発展を目指すICAOは、新しい航路の運用を開始するさいには、影響を受ける周辺国と事前に調整することを定めている。実際に、サウジアラビアをはじめとする中東主要国に航路を停止されたカタールは2017年6月15日、ICAOに仲裁をもとめている。

しかし台湾は、2017年9月27日にカナダで開かれたICAOの総会に出席が許されていない。親中派であった馬英九政権下の2013年であっても「中華台北」名義でのゲスト参加が初めてかなったのみだ。

台湾・大陸委員会は2015年の合意に関して、国際民間航空条約附属書と、法的確信にもとづいた一般慣行を法源にもつ、国際法に則ったものであると説明している。国際法は強制力をもたない。しかし、台湾がICAOの総会といった場に出席することで国際社会のルール履行を中国に求めることは可能だ。

米国ヘリテージ財団にて同じく登壇したJacques deLisle (ペンシルバニア大学教授) はICAOのみにとどまらず、台湾がWHO、IPOL、UNFCCC-COPといった国際機関一般へ参加していくことが重要と言う。国際レジームから台湾が排除されてしまっては、例えば本稿テーマのように台湾から、もしくは台湾へ飛び立つ人が危険にさらされたり、国際犯罪の温床になったりしてしまう可能性が大きい。国際社会がそういった法の支配を尊重しているからこそ、2002年から2003年にかけて中国南部でおきたSARSのアウトブレイクは終息できたのだとdeLisleは指摘した。


渡辺克也
渡辺克也

パシフィック・アライアンス総研 アソシエイト
パシフィック・アライアンス総研のワシントンD.C.支部の立ち上げを担当。神道天心流天津蹈鞴正統・空手免許皆伝。

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