この政府に税を預けて良いのか?


会計は、金勘定や数字合わせではありません。この人に任せていいのかをその結果に会って、功績を計るのです。財務省が平成30年2月23日に公表した『国民負担率(対国民所得比)の推移』を利用すると、この国に税を預けて良いのかが、少し分かるようになります。

国政が主権者に提供すべきは「福利」だと、憲法の前文は記しています。憲法学者の清宮四郎は、憲法の前文は、「憲法の憲法 」としました。「福利」の「福」は、「幸福」の「福」です。幸福はすべての人々の目的ですが、何がそれぞれの人の幸福を増大させるかを、他人が知ることはできません。「福利」の「利」は「利益」の「利」を示します。

独立宣言の起草者の一人であり、第3代アメリカ合衆国大統領であったトーマス・ジェファーソンは、その就任演説で「賢明でつつましい」ことをあるべき政府の要件としました。賢明でつつましい政府は、国民を不幸にせず、損失を与えません。

自由経済を研究し啓蒙する自由経済研究所は、「納税者の日」と「子供の日」を算定し、発表しています。「納税者の日」は、平均的な日本人が税を払うために元旦から、何月何日まで働かなければならないかを示したものです。「子供の日」は、「子供にツケをまわさない日」の略称です。「子供の日」は、今年度の政府支出を、税等で主権者が全額支払うために、何月何日まで働かなければならないかを示します。

国民主権を掲げる民主制では、主権者の承諾があって、主権者は税を負担します。税の負担に承諾を与える機会のない子供達にツケをまわすのは、民主制を否定することになります。政府支出を税や社会保障負担で賄うことができれば、「納税者の日」と「子供の日」は一致します。政府支出が、税収や社会保障負担で補えなければ、子供にツケをまわすことになり、「子供の日」は「納税者の日」よりも、先になります。

良くなるということの本質は、時間的な変化です。他と比べて良いとか悪いとかはではありません。次の表は、10年平均の国民負担率と潜在的な国民負担率から計算した「納税者の日」と「子供の日」の推移です。

昭和50年の国民所得は、昭和40年に比べて4倍に増えています。この当時の政府支出は、国民所得の4分の1程度でした。昭和60年の国民所得は、昭和50年のほぼ3倍に増えています。平成7年の国民所得は、昭和60年のほぼ1.6倍。平成17年の国民所得は、平成7年年のほぼ1.1倍となります。平成27年の政府支出は、国民所得の半分になりました。この年の国民所得は、平成17年の3%減となりました。政府支出は増えましたが、国民所得の成長は止まり、減少に転じました。税金を増やしても、国民を「利」することはなく、貧しくしたのです。

国民を不幸にしていないかの指標として自殺者数、出生率、失業率を並べました。これもそれぞれの年までの10年間の平均です。自殺者は増え、出生率は減り、失業者は増えています。

平成30年度の「子供の日」は6月27日、「納税者の日」は6月5日となりました。この数字は予算に基づいているので決算等を反映するまでは暫定の日付です。平成30年度は、税や社会保障を負担するために、6月5日まで働いた後、漸く稼ぎは主権者自身の懐に入ります。子供にツケをまわさないためには、1年のおよそ半分を働かなければなりません。家族のためにではなく、政府のために1年の半分を働くのです。

「子供の日」の推移は、どれほどの国民負担であれば国民生活を圧迫しないのかを見せます。「この政府に税を預けて良いのか?」の答も見えるでしょう。

会計は、金勘定や数字合わせではありません。この政府に税金を預けていいのかを計る公会計が必要です。


吉田寛
吉田寛

千葉商科大学院大学教授
公会計研究所代表、自由経済研究所代表、1999年より、主に「子供にツケをまわさない!」をテーマに講座を開催。難しい話を簡単に、分かりやすく解説することで定評がある。「なぜ、子供にツケをまわしてはいけないのか」「どうすれば子供にツケをまわさないですむのか」、忘れてはいけない肝心要のポイントを語る。

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