「新しいものづくりがつくる産業の未来・第5回」地域Iotとつくば副市長


連載「新しいものづくりがつくる産業の未来」、第5回目となる今回のテーマは「地域IoT」です。1月27日に開催された「地域IoTフォーラム」の中から、つくば市の事例についてお話された毛塚幹人つくば副市長のお話をご紹介させていただきます。
毛塚副市長は、2017年に当時26歳で最年少副市長となりました。
若い副市長を迎え、IT・先端技術に強みのあるつくば市では産学官が連携し、日々新たな挑戦を続けています。

「世界の明日が見える街」

つくば市は、緑の中に研究所のある素敵な学術研究都市です。170を超える研究所があり、約23万人の人口のうち、博士号取得者が8000人ほどいます。つくば市では「石を投げれば博士に当たる」と言われ、そのくらい研究者の多い街です。また、それに伴って外国人の研究者も多く、多様性に富んだ街でもあります。そして、ロボットが街を走ることができるような国際戦略総合特区でもあります。

つくば市が抱える課題

こんな尖った要素を多く持つつくば市ですが、課題も多くあるとのことです。
まず、人口は2035年にピークに達し現在は最後の人口増加期と言われているため、マルチな構造改革の必要性を感じられているそうです。
また、全国有数の学術都市として、研究者の獲得競争にも晒されています。しかし、科学技術を実装しやすい都市である一方、住民アンケートでは、科学の恩恵を感じていない方が過半数ということで、科学技術で世界の課題を解決する先進都市として存在価値が問われている状況です。

このような課題を抱えているつくば市ですが、本日のテーマである「地域IoT」がその課題解決のキーワードになるということで、具体的な事例を交えてお話されました。

街の課題を解決する地域IoT

「このような課題に対し、地域IoTがその課題解決のキーワードになると考えている」と毛塚副市長は話されました。
つくば市では、すでに様々なIoTの導入が進んでいます。まずは、AEDの最適活用です。現在、つくば市では救急車でAEDを届けるまでに10分程度の時間がかかっているところを、119番をすることで近くのAED所有者に連絡が入り届けることができる仕組みを開発しているそうです。また、信号機のBluetoothの発信によって、つくば市内を歩くコミュニティロボットが画像認識を必要とせずに、信号を渡れるようになっているとのことです。


またつくば市では、「ソサエティ5.0社会実装プログラム」という取り組みが行われています。現在5個のプロジェクトを進行しており特別支援学級の先生と生徒が互いに振動するデバイスを使ってコミュニケーションを取り合う仕組みや、公共のトイレに用をたすたびに健康状態をチェックできるシステムが構築されています。

最先端が集まる仕組みづくり

ロボットが街を走り、様々な分野で新しいシステムが導入されていくつくば市。行政として、このような民間との連携を促進する仕組み作り力を入れられています。

まずは、補助金です。1つのプロジェクトにつき100万円の補助金を設け、5つの募集枠に対して、全国から21件の応募がありました。行政の価値はあくまで「補助金よりも調整ごとである」ということを打ち出し、そしてあらかじめ予算を獲得することでスムーズに連携を進められるようにしたことで多くの応募があった、と毛塚さんは話されました。

また、RPAによる業務の効率化のお話はとても興味深いです。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、日常の繰り返し業務を自動化するシステムで、大手企業等でも導入されています。つくば市では現在、他の自治体と同じように働き方改革を導入している中で、ITを使って業務量自体の削減をできるように取り組まれているとのことでした。
企業と共同研究というかたちで進めるため、研究費は無料というのも驚きです。

徹底的に無料化してテクノロジーの柔軟性を高めること

このような取り組みを無料で行うために具体的に行われたことも、消化されました。
では、具体的に無料化を実現するためにどうしたかということからお話します。
それは、科学技術の実装のタイムラグを置いたことと、プロジェクトに柔軟性を持たせたことです。
まず1点目の実装のタイムラグに関してです。プロジェクトに応募されるものは、民間で既に実行されており、ノウハウが蓄積されています。民間企業には行政に売り込みたいニーズもあるので、つくば市を一事例目としてもらうことで、他自治体にも導入しやすくなっています。
そして、柔軟性に関してです。行政は民間に比べてプロジェクトのスパンが非常に長いです。共同研究と位置づけ、さらに無料化して長いスパンで柔軟性を持ったプロジェクトの構成することで、対応されています。
毛塚さんは「徹底的に無料化してテクノロジーの柔軟性を高めることが、つくば市の行政戦略です。」と強調されていました。

アジャイル的な行政

行政とりわけ地方自治体は、国家と比較して膨大な個人情報を直接保有しています。
つくば市は無料化や共同研究を活用してIoT導入の仕組みを作ることで、ウォーターフォール的な行政からアジャイル的な行政を目指したいと話されました。
つくば市から新たな事例が生まれることで、他の自治体への導入がよりスムーズになります。「これこそが、地域IoTの意義である」と、最後に締めくくられました。

地域IoTフォーラムを終えて

行政の目線から、具体的な取り組み、取り組みを行うにあたっての仕組みづくりについてお話をいただきました。無料化、外部人材の活用など、実際に行うにあたって様々な課題もあるかと思いますが、ぜひ他の自治体にも広がってほしいと感じました。
最後に、一般社団法人地域デザイン学会の原田保理事長は「行政のどの単位でも構いません。気が付いた人が努力をして圧倒的な成果をあげるという運動をすることが大切です。マイナーな人間がトリガーになって全体を動かしていくことが地域デザインを創ると考えています。」と、総括をされました。地域IoTから大きな地域デザインの流れが生まれていくでしょう。

一般社団法人地域デザイン学会
http://www.zone-design.org/


川島京子
川島京子


1989年東京都生まれ。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所リサーチアソシエイト。Creative Smash株式会社代表取締役。2008年、明治大学在学中に インターネット上の仮想世界「Second Life」にて音楽ユニットをプロデュースし、企業とタイアップしたバーチャルイベントを実施。メジャー音楽レーベルに勤務を経て、24歳で独立。国内最大級の3Dプリンタメディア等ものづくりやクリエイティブに関わる事業を展開。

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