戸田市の小学校でプログラミング教育や落合陽一氏の授業!


Edtech特集の第五弾のテーマは、「公教育」です。

埼玉県戸田市では、産学官が連携した教育改革が行われています。強力なリーダーシップを発揮する戸ケ崎教育長は、「戸田市の子どもたちが、人工知能では代替できない能力と人工知能を活用できる力を身につけられるようにしたい。」と明確な目的を定め、公教育の常識を打ち破るほど多数の先進的な事例を生み出してきました。

産学官連携で教育改革を推進

2020年から小学校でプログラミング教育が必修となりますが、戸田市ではすでにプログラミング教育が行われています。ベネッセ、インテル、グーグル、マイクロソフトなどの民間企業と連携し、低学年でも体感的に学べるロボットを活用したり、高学年以上では本格的にコードを書くプログラミング授業が行われています。


(出典)戸田市教育委員会

他の小学校で行われるプログラミング教育は、Scratch等のビジュアルプログラミングが想定されている場合が多いです。しかし、戸田市の場合、小中学校を通しての長期的な学びを想定し、最終的には具体的にHTMLやJavaなどを実務で用いられるスキルを身につけることを目標として打ち出しています。

また、NPO法人PICCSと連携し、社会の第一線で活躍する大人が学校で授業を行う「夢育」が行われています。PICCS代表理事でヘッジファンドPAGの伊藤潤一さんによる金融教育、北京五輪でフェンシング史上初の銀メダルを獲得した太田雄貴さんによる授業が行われました。
そして今回の記事では、メディアアーティストで筑波大准教授の落合陽一さんの「夢授業」の様子をお伝えします。

香料とオレンジの味を見極められる人間を育てたい

まず、落合さんが取り出したのは、フレネルレンズです。落合さんはアーティストでもあり、Media Ambition Tokyoで展示されていた作品でも実際に使われていたものです。

「レンズを除いて見ると、逆さに見えない?」

と子どもたちとやり取りをして、そのままフレネルレンズを子どもたちに渡しました。子供達は興味津々に覗き込み、落合さんの話に吸い込まれていくように、授業楽しんでいるようでした。

そして、次に取り出したのは、大量のグミです。子どもたちに味や色などの情報を事前に伝えず、グミを食べてもらいます。事前に情報がない状態で、味や色を当てられるか実験を行いました。

実験の結果、約3分の2の子どもはグミの味がわかりませんでした。落合さんは、「パッケージがないと味わからないんだよね。変な話だけど、俺たちは見た目を食ってるんだよ。」と話します。オレンジジュースの例に挙げ、本物のオレンジが入っているわけではなく、香料の味をオレンジだと認識していることを解説されました。

「オレンジ自体を育てるのがアート、何を入れたらオレンジになるかを考えるのがデザイン。香料とオレンジの味を見極められる人間を育てたい。」
科学者でありながらアーティストをされている落合さんならではのお話です。今回はグミで被験者実験を行いましたが、科学者として日々実験を繰り返していることを子どもたちと共有しました。

最後に落合陽一さんが手がける最先端の研究が紹介されました。その研究は、空間のある一点だけで音が聞こえるスピーカーです。
まず音を扱う前に、光を用いたデモンストレーションが行われました。学校にある一般的なプロジェクターから光が発せられています。しかし、この光の色が見る場所によって変わっていました。

どこにでもあるプロジェクタを使っているにも関わらず、なぜ場所によって色を変えることができるのか。その仕組みはシンプルで、こちらの一枚のスライドを出力していたからです。

プロジェクタが出す光も波です。落合さんは、音も波なので、ピンポイントで音を届けることができるのではないかと考えたそうです。落合さんが開発されたスピーカーを使うと、特定の場所でのみ音が聞こえるようになりました。

落合さんからのお話が終わると、子どもたちからたくさんの質問が飛んできました。
「科学者ならスモールライトとか、どこでもドア作れるの?」
「いつから世の中に興味をもったんですか?」
「費用はどのくらいかかったんですか?」
「そのスピーカーの音ははどこまで届くんですか?」
「尊敬する人は誰ですか?」
「どうすれば科学者になれるんですか?」
など、質問は尽きません。

落合さんの授業では、デザインやアートについて香料を使って理解を深め、その過程で科学者が行う被験者実験を体験しました。世の中に関心を持つことで、日常の延長に科学があるということが子どもたちにも伝わったことでしょう。

これからのAI時代を生きていくには、学校教員が教えられる範囲を学ぶだけでは不十分です。例えばテクノロジーに関しては、プログラミング教育の先の本質的な学びまで大人が目利きをして、未来に必要なことを子どもたちが学べる場をつくることが不可欠です。
授業が始まる少し前に、戸ケ崎教育長や教育委員をはじめとした方々が会議室に集まっていました。教育関係者が落合陽一さんの書籍をすでにお読みで、AI等のテクノロジーが急速に発展する社会でどのような教育が必要か活発に議論が行われ、落合陽一さんの夢授業に大人も集中していました。志のある教育関係者が集まっていたことに、未来への希望を感じました。
落合陽一さんの授業は公教育の常識を覆すものですが、今後はより必要になるでしょう。その気になれば、決められたルールの範囲であっても、質の高い教育はできることか証明されました。

今回はEdtech特集ということで、主にテクノロジーに関する取り組みをご紹介させていただきましたが、戸田市ではその他の取り組みも先進的です。
戸田市では、PEERプログラムを開発しています。PEERは、プログラミング教育(Programming)、経済教育(Economic Education)、英語教育(English)、リーディング・スキル教育(Reading Skills)の4つのテーマですが、学校で授業を受けても身につけることが難しい分野です。また、アクティブラーニングや英語教育など新たな教育を未来に対応できる人材育成を着実に進めています。

テクノロジーと共存することで、先進的な教育を行う自治体と、古い教育をアップデートすることなく続ける自治体とに分かれていきます。戸田市のように、産学官連携を推進し本当に良い教育を子どもたちに届ける意思を持っていることが、未来を決める鍵になるでしょう。


伊藤陽平
伊藤陽平

新宿区議会議員
30歳最年少の新宿区議会議員。立教大学経済学部経済政策学科卒業。大学在学中にIT企業を設立し、代表取締役に就任。Webアプリケーションの開発やWebマーケティング事業を展開。 ブロガー議員として365日年中無休でブログを更新し、多数のメディアへ寄稿する。また、日本初のAI議員として機械学習を議会活動で活用している。

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