「Me Too」110年ぶりの刑法抜本改正と政治関係者の性的モラルの見直し


昨年はハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行疑惑を皮切りに、トランプ大統領のポルノ女優への関係口止め料疑惑、民主党アル・フランケンのセクハラ問題、アラバマ州上院補選の共和党候補者ロイ・ムーアの少女への性的暴行疑惑など、政治問題を絡める形で#Me too運動がアメリカで拡大しました。

ワインスタインはアカデミーから追放、フランケンは議員辞職、ムーアは落選など、名前が挙がった代表的な人物たちは何らかの形で責任を取らされています。もちろん、トランプ大統領も民主党側だけでなく共和党側からも厳しい批判が出ています。アメリカでは、著名人や政治家に対して性への高い倫理観が要求されるため、セクシャルハラスメントの疑惑が発生する人物はそれだけで社会的に受け入れられない土壌があります。

一方、日本でも平成29年7月13日に110年ぶりに性犯罪に対する刑法が抜本的に改正されました。

これまでの刑法の規定では、強制わいせつ及び準強制わいせつ、強姦及び準強姦は、いずれも親告罪でしかなく、被害者の名誉やプライバシー保護などの観点から、当該事案を訴追するかしないかを被害者の判断に任せてきました。しかし、過去においては被害者が泣き寝入りすることも多く、被害者の精神的な負担を軽減することを意図し、被害にあった方の告訴無しでも起訴できるように今回の改正が行われました。日本においても人権擁護のための法的環境が整い始めたこともあり、次はそのための社会的ムード作りが行わていくことが重要となっています。

近年、日本のメディア上でも著名人及び政治関係者による性的素行を問題とした報道が続いてきました。

たとえば、最近報道があったものだけでも、メディア関係では山口敬之氏と伊藤詩織さんの問題国会議員では青山正幸氏と事務所女性の問題地方議員でも音喜多駿都議会議員の過去の女性関係に関する報道などがあります。

上記報道された事案には裁判で係争が続いているものや既に和解済・解決済とされているものもあります。しかし、これらの事案は各人の弁明にもあるように実際に何らかの不適切な行為が行われたことで問題化しているわけです。その背景には同意の有無が不明瞭な状態(昏睡・酩酊状態など)における関係の是非や各人の社会的な立場を踏まえた立ち振る舞いなどを深刻に捉えてこなかった日本社会の性の問題に対する低い倫理観の問題を感じます。

過去においては、公職時代の橋下徹氏が沖縄県で、米軍の元海兵隊員が20歳の女性会社員に性的暴行を加えて殺害した事件への解決策として、メディア上で「風俗の活用」を提案したこともありますが、アメリカでは「風俗産業自体が日本社会のように大手を振るって街中で堂々と看板を出しているような社会ではない」という日米の文化の違いすら認知されていないこともその一例です。

刑法における性犯罪が親告罪から非親告罪に法改正された現状を踏まえると、今後はメディアや政治関係者は性に対する高い倫理観を持つ人物であることが常識として求められていくべきです。これらの職に就いている、または就こうとする意思がある人物は、性に対する認識をしっかりと持って様々な問題や誤解が生じる余地がないように常日頃から行動することが当然です。

一方、アメリカでも「ただの復讐」あるMe Too告白に批判が殺到 問われる告発者の責任の記事にもあるように、女性側が無理筋の告発を行っているのではないか、という批判が出てきていることも事実です。

しかし、日本社会の性意識はその段階にすら至っていないものと思います。Me Tooと声をあげることは、被害者にとって非常にハードルが高いものです。昨年の刑法改正を機として、性的被害者が泣き寝入りすることがなくなり、政治関係者に高い倫理観を持った人物が選ばれるようになることを切に願います。


飯島直子


エッセイスト

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