東京大改革の今・第5回 ゆりちゃんカラーの予算編成!?


小さなことからこつこつと。

東京都が特別秘書や会計管理局長などの専用公用車10台分を廃止し、8,000万円の経費節減をするらしい。32台の台数31%を減らすことになった。「それだけ?」という人もいるだろう。しかし、そうした動きが出てこない日本国政府と比較してみてほしいものだ。

さて、東京大改革には3つの改革だけではない、日常的な業務執行にも変化がみられる。今回は、30年度予算の概要を見ていきたいと思う。

前年度の29年度予算における取り組みでは「分かりやすい予算関係資料の充実」を図ったそうなので、随分と見やすくなった。この流れは30年度にも継続されている。以下の写真を見ればその違いが明らかになる。同様の個所で比べてみよう。

【図1】

(出典)東京都予算案の概要(28年度) P38

【図2】

(出典)東京都予算案の概要(30年度) P45

言葉遣い、具体的な数値、デザイン・・・・。一見見ればわかるレベルの違いは明確だ。では、細かいレベルではいったい何が変わったのだろうか。

【変化1】都民の声に耳を傾ける

予算編成プロセスの⾒直しで、「東京⼤改⾰」を加速化させていくポイントは都⺠や職員の意⾒を募って事業構築に活かす仕組みを新たに導⼊したことにある。大きくいうと、2つの特徴がある。1つは都⺠による事業提案制度。「都民ファーストの視点に立ち、従来の発想に捉われない新たな視点から都政の喫緊の課題を解決することを目的として、平成30年度予算編成において、都民による事業提案制度を試行的に導入」と歌っており、簡単に言うと、都民からの事業の提案をしてもらうということである。結果、提案募集で255件の応募があり、既存事業との重複や実現可能性をチェックして26件が選定され、ネット投票をもとに知事査定、9事業が選出。30年度予算額では8.5億円になる。
具体的には

◇ICTを活⽤した地域包括ケアシステムの構築モデル事業:2億円(新規)、サービス付き⾼齢者向け住宅を拠点とした、ICT技術の活⽤による⾒守り体制の構築を⽀援
◇森と⾃然を活⽤した保育等の推進:2億円(新規)、⼦供の「⽣きる⼒」を育むため、⾃然環境を活⽤した園外活動を⽀援
◇⾷品ロス削減!区市町村連携事業:0.5億円(新規)、賞味期限を迎える前の⾷品の有効利⽤など、⾷品ロス削減に取り組む区市町村を⽀援するた めの補助メニューを区市町村との連携による地域環境⼒活性化事業に追加

といったものが選出された。IoT、子供の自然とのふれあい、フードロスなどなど社会課題への対応は先進的な内容となっている。この制度、「予算編成過程で住民が直接事業提案する制度を導入するのは都道府県で初」ともいわれている。オープンデータへの姿勢も小池都政になって変わってきたし、ネット投票という挑戦的な取り組みは評価したい。

もう1つが、職員による事業提案制度。応募総数164件の事業提案の中から、「シニア向けセミナー農園整備事業」や「SNSを活⽤した教育相談体制の検討」など15件が反映。それ東京都がやることか?SNSやネットが相談において機能するのか?という疑問はおいておいても、こうした職員のやる気、組織のモチベーションアップに心がけているのが特徴だ。都政改革本部の改革の流れとも一致する。

都民の耳を傾ける姿勢を示し、実際取り組んだことについては、それで意義があることだろう。

【変化2】トップの方針に基づく新規事業

政策的に具体的には、小池カラーが明確になっている。

◇産後ケア⽀援事業:0.5億円(新規)、産後に安⼼して⼦育てができる⽀援体制の確保に向け、産後ケアを⾏う区市町村を⽀援
◇産婦健康診査⽀援事業:2億円(新規)、産後うつの予防等の観点から出産後間もない産婦への健康診査を⾏う区市町村を⽀援(規模  23区市町村)
◇在宅⼦育てサポート事業:9億円(新規)、保育サービスを利⽤していない1歳未満児の保護者の家事負担軽減を⽀援(規模 20か所)
◇待機児童解消に向けた取組:1,576億円(29年度は1,381億円)と拡大

さらに、関連事業を図解し、「ライフステージに応じた切れ⽬のない⽀援(全体像)」として示している。

【図3】

(出典)東京都予算案の概要(30年度) P39

全体の事業の関連、位置づけがわかりやすくなった。新規事業、事業の並べ方・順序、予算案の隅々に知事が明確に打ち上げたビジョン・方針が反映されており、都民に約束したことを実現しようとする姿勢が垣間見れる。ただし、3つのシティ実現に向けた基⾦を3,954億円を取り崩しているので、財政的には注意が必要ではあるが。

【変化3】事業評価の取組で過去最高の効果

行政評価の専門家である筆者にとって、これまでの東京都の事業評価は話にならないレベルであったが、少しは前進がみられた。関係部局と連携した専⾨的視点からのチェック、新たな公会計⼿法の活⽤で、予算編成の過程で多⾯的な検証を⾏ったようだ。「2020年に向けた実⾏プラン」に掲げる各施策の実施状況レビュー結果を踏まえている点も、評価をよくみせる評価に終わらせない、運用面でPDCAサイクルを回すことの必要性をだんだんに理解してきたらしい。

中でも、その効果に注目だ。「施策のPDCAサイクルを⼀層強化し、新陳代謝を促進すること」で676件の⾒直し・再構築を行ったとのこと。いずれも過去最⾼だそうだ。特に、内容を見ていて、監査結果に基づき⾒直しを図る事業評価、複数年度契約の活⽤を図る事業評価のところが印象的である。前者は他の自治体でもあまり明確に見られない。監査は監査、事務事業評価は評価のような連動が見られないケースもあるので、その意味で印象的だ。後者は、行政は事業を単年度でみがちだが、複数年度で見る視点を進めていこうという点がとってもよい。

まだまだ課題も多いが一歩前進

最後に。東京都は「エビデンス・ベース(客観的指標)による評価の導⼊」という「成果」を強調している。しかし、専門家からすると「それは違う」ということは念のため言っておく。とはいえ、予算編成プロセスも前進している東京大改革、今後の改革に期待したい。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、オムニメディア代表、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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