what3words. 世界から住所が無くなる日


ロンドンに革新的な地図サービスを提供する企業が存在する。2013年創業のwhat3wordsは社員数約120人のスタートアップ企業で、Intel Capitalやベンツのダイムラー社から資金調達するだけでなく、世界中の民間企業や政府機関等における様々なサービスに活用されている。

仕組みはシンプルで、世界のすべてのエリアを9平方メートル(3 x 3メートル)に区分けし、そのそれぞれに三つの単語を割り当てることで住所を決定し、表記していく。試しに学校の住所を入力すると、以下のように”king ruins clubs”と表示された。「王様がクラブを破壊した」と特に意味は無さそうだが、何となく頭に残ってしまう。

ではこの仕組みで一体何が便利になるのか。まず一つ目は圧倒的に人間にとって活用しやすい点である。9平方メートルで区切られた世界中の区画を表現するためには、9桁の数字や文字の組み合わせが必要となると言われ、例えば宅配業者に電話で9桁の英数字を伝えることを想像しても、暗記が難しいだけでなく、BとD等の聞き間違えなど、多くの困難が予想される。

次に既存の住所は必ずしも宅配等の際に便利なものではないという実態がある。イギリスでは、道路名と番号で住所が決まっており、会社訪問や宅配では、その場所に着いたとしても入口が見つからず裏側に回る必要が出るなど余計な時間がかかることが少なくない。ケニアでは住所が道路名と建物名だけで表示されることも多く、その土地を知らないと移動に非常に苦労する。また草原や砂漠が広がるモンゴルや中東でも様々な住所表記の問題が存在すると言われるのも想像に難くない。

what3wordsはこうした問題の解決に活用され、地図が機能しにくい地域や状況での国際機関や行政による利用に加え、自動車企業におけるカーナビへの活用、物流業界における配送の効率化、旅行業界における顧客の利便性向上等を目的に様々な分野で活躍する。

例えばモンゴルでは日本郵政に該当するMongol Postがwhat3wordsを活用し、従来、広大な土地において目印だけを頼りに表現されていた住所が3語で示され、郵便物の配達効率が大きく向上した。国際機関による活用としては、災害や紛争等の人道危機の際に、現場から送られてくる状況や写真がその位置を示す三つの単語と共に記録され、迅速な救助や支援の実現に活かされている。

イギリスでHoliday InnやBest Western等を運営するStarboard Hotelsもこのサービスを活用し、顧客がスムーズにホテルの入口に到達できるように、Google Mapの地図に加えて入口に位置する3語をホテルのウェブサイトに掲載する。またDXC Technologyはドローンの操作において、what3wordsとAmazonのAlexaの機能を活用し、音声による飛行指示と3 x 3メートルの区画分けに沿ったルート指定を可能にする管制システムを実現した。

所与のものとして使われ続けた住所表記におけるイノベーションで世界の地図概念を変えゆくwhat3words。今後、日本でも物流や災害支援等の場面で活躍する日も遠くないと思われる。

(写真はwhat3words社のウェブサイトより)


山中 翔大郎
山中 翔大郎


国際機関等でのインターンシップや難民支援の社会起業立ち上げを経験。急速に進化するテクノロジーの活用による国内外の様々な課題解決を目指す。一橋大学大学院社会学研究科修了。外資系投資銀行、ケニアの投資ファンド勤務を経て現在はロンドンビジネススクール、ファイナンスコース在学中。

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