森友学園文書改ざんの再発防止に向けて


(安倍晋三公式サイトから引用)

森友学園への国有地売却問題について、財務省が経緯に関する文書を行っていたことが明らかになりました。削除された内容には安倍首相や昭恵夫人の名前もあり、政治からの関与を伺わせる内容はごっそりと無かったことになっていました。極めて深刻な問題であり、今後は徹底した再発防止が求められます。

この問題の本質的な問題は下記の通りと考えます。

(1)公文書改ざん

2009年6月24日に成立した公文書管理法には、

「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」

と明記されています。行政機関には「保存」義務があり、定められた一定期間過ぎたものは国立公文書館等に移管するか、内閣総理大臣同意の下廃棄されることになります。当たり前ですが、「改ざん」に関する規定はありません。

刑法258条では、公文書毀棄罪として「公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」と明記しており、本件は公文書管理法違反であるとともに刑法にも違反している可能性があります。しかし、国会審議を空転させ続けた本件のような重大な事案ですら、現状では実行側は「訂正」として言い逃れようとしている有様です。

(2)国会における虚偽答弁

国会における佐川氏をはじめとした一連の虚偽答弁・虚偽資料提出は民主主義を冒涜するものです。国会における虚偽答弁は、現在、証人喚問における偽証罪以外は罪に問うことができません。国会における誤った答弁及び虚偽資料に基づく審議時間を取り戻すことはできず、国民主権を蔑ろにした最低の行為であるにも関わらずです。

(偽証)
第169条
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3か月以上10年以下の懲役に処する。

上記は証人喚問における偽証に適用される刑法上の刑事罰ですが、通常の答弁においても「明らかに重大な虚偽答弁・虚偽資料提出」を行った役人に対して刑事罰や賠償責任を負わせるように法改正することが望まれます。

佐川氏に関しては国税庁長官を辞職して済む話では本来はありません。政権与党の指導部の力が強くなる現行の小選挙区制度下においては今後も同様の現象が起きる可能性があるため、早急な法改正を実施するべきです。

(3)公務員の告発義務の徹底

刑事訴訟法239条には、

(告発)
第239条
何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

と定められています。つまり、国家公務員は本件の文書改ざん等については告発する義務を負っています。しかし、現実には告発は行われることなく、むしろ組織的な文書改ざん行為が行われることになりました。

公務員倫理ホットライン」という形で国家公務員による通報制度は存在しているものの、上記(1)や(2)のように罰則規定が甘いために機能していません。罰則規定が甘ければ直属の上司の違法行為に従うのは自然なことだと言えます。そのため、違法行為を知りながら、告発をしなかった国家公務員に対しても厳しい罰則が及ぶように法改正を実施するべきです。

今回の事案は公益通報制度の不備に起因するものと言えます。

(4)財務省側の政治的圧力の認知

財務省はなぜ「交渉経緯中の首相夫人の現地訪問を含む様々な政治関係者の名前が登場していた部分」を削除したのでしょうか。それは財務省に対する政治側からの露骨な圧力が意思決定に影響を与えていたからに他なりません。

世間では「〇〇の事業は〇〇先生の案件だから・・・」という類の話は腐るほどあるわけですが、それを裏付ける物証が表に出てくることはほとんどありません。本件のように圧力の存在を交渉経緯として記した文書が暴露されたことは極めて不名誉なことと言えます。

本件は「政治家の圧力を使用すれば国有地交渉を有利に進められる可能性がある」ことを白日の下にさらしました。つまり、他の案件であったとしても、政治家の圧力を利用すれば、本来は困難な物事を進めることができることを示唆しています。

行政機関のあらゆる金銭が絡む案件は似たような話が蔓延しており、この手の話をスキャンダルとする前例ができれば全国の地方自治体でも腐敗が明るみに出るケースが増えていくことになるでしょう。

(5)内閣人事局への責任転嫁防止

今回の事案を内閣人事局が設置されたことによる政治による官僚人事が原因とする向きがあります。しかし、民主的に選ばれた「政」が「官」をマネジメントするために強力な人事権を持つことは当たり前です。

本当の問題は、小選挙区制度を採用していながら、まともに二大政党政治が機能していない日本政治に根本的な問題があります。政権交代によって前政権の腐敗を明らかにし、その責任を追及する形ができあがることによって、権力の腐敗に牽制力を働かせることが重要です。

今、内閣人事局を批判する向きを述べている人々がいますが、いずれも「官」側の立場に立ってドサクサ紛れに「官」の復権を狙っているに過ぎません。内閣人事局の機能を死守し、政治によるリーダーシップが今後とも発揮される体制を維持することが望まれます。

 

 


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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