決裁文書から「安倍昭恵削除」の公文書改ざんが行われた本当の理由とは何か


財務省・太田充理財局長が参院予算委員会で、「安倍昭恵首相夫人が記載された決裁文書を改ざんした日は2017年4月4日」と答弁しました。そのため、首相や閣僚による文書改ざん関与に関するポイントは「4月4日に何が起きたか」を検証することによって推量可能です。

4月4日に何が起きたか

財務省の決裁文書で削除された項目のうち、安倍昭恵氏に関するものは、

・平成26年4月28日の打ち合わせでの学園側の発言として「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と記述

・平成27年1月8日に森友学園が小学校の運営に着手するという新聞社のネット記事の中で「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載される」と記述

・他の国会議員などの訪問状況とともに、平成26年4月に安倍昭恵首相夫人による講演や視察などの記述

の3点となります。

筆者が4月4日の改ざんが行われた日付を踏まえて注目したのは下記の一連の質問主意書です。(逢坂誠二衆議院議員提出)

上記3点の安倍昭恵氏に関する記述は下記の3つの質問主意書への回答内容(閣議決定された行政文書)と齟齬をきたす恐れがあります。

2017年3月14日回答閣議決定「内閣総理大臣夫人の法的地位に関する質問主意書
2017年4月4日回答閣議決定「内閣総理大臣夫人の意向を忖度して働く国家公務員の行為の意味に関する質問主意書」「衆議院議員逢坂誠二君提出塚本幼稚園における内閣総理大臣夫人の講演に随行していた国家公務員の業務に関する質問主意書

決裁文書の改ざん日は、一連の質問主意書への回答が出揃った4月4日の閣議決定の日と外形上一致します。

財務省は閣議決定を受けて上記の森友学園に関する決裁文書と質問主意書への回答文との間で整合性を取る必要があったものと思います。そのため、決裁文書上の夫人の発言・様子に関する記述については「内閣総理大臣夫人が私人である」という答弁、さらに総理夫人の講演についても「私人としてのものであった」という答弁、と書類上の都合を合わせる作業がまとめて行わたものと推測されます。

文書改ざんの決定的な要素は「4月4日」に何があったかという視点で考えることは極めて重要であり、「4月4日」は決裁文書上に記された内閣総理大臣夫人の行為と内閣が行った閣議決定の内容が完全に不一致となった日だ、ということです。

もちろん、他の政治家に関する経緯等もまとめて消えており、財務省は上記の改ざんに乗じて必要以上の大幅な改ざん作業を行ったことになります。これは安倍昭恵氏に関する文書改ざんを行った結果として芋づる式に改ざんせざるを得なくなったことによるものでしょう。

日本の役所は緻密なパズルのような論理の組み合わせで成り立つ組織であり、昔から「行政の無謬性」=「役所は間違いがあってはならないという信仰」が存在しています。したがって、財務省の内部の論理を上回る「閣議決定」が行われたことで、行政上の下位組織である財務省の文書改ざんを行う必要が生じた(閣議決定が後付けでも全体として間違っているわけにはいかない)、と考えることが妥当かと思います。つまり、文書改ざんは首相・首相夫人への「忖度」というよりも組織内の「矛盾解決」を優先するために発生したと捉えるべきです。

上記のように考えると、役所内では過去においても組織内の辻褄を合わせるために様々な「改ざん行為」が常態化していたのではないか、と考えるべきでしょう。「行政の無謬性」とは実は「文書の改ざんによって成り立っていた」という笑えない冗談のような状況だと言えます。本件の文書改ざんの発覚が我が国の公文書管理の在り方全体の見直しにつながることを望みます。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

渡瀬 裕哉の記事一覧