普通のことができない組織を「最強の官庁」と持ち上げるのをやめよう


久々に実家に帰る用事があって、親世代が見ているワイドショーを半ば強制的に視聴させられる機会がありました。

番組を見ていて驚いたことは「いまだに財務省を「最強の官庁」と呼び、官僚を「エリート中のエリート」と呼んでいることでした。そして、元財務官僚が自分が所属していた時には文書改ざんなどあり得なかった、と堂々と述べていたことにも驚きました。

不正防止のための内部統制・法令順守の基本は「不正をやるか・やらないか」ではなく「不正をできるか・できないか」ということに尽きます。つまり、「不正をできる」組織である時点で、内部統制がまともに機能していないダメ組織でしかありません。

今回の一連の話は「財務省」も含めた中央省庁が「文書管理すらできない二流組織」だということが明らかになっただけのことで、「財務省」という看板が付いていなければ「仕方ない組織だな」という一言で終わるレベルです。

また、佐川元国税庁長官は、1998年から2001年まで近畿財務局理財部長を務めた以外は、2016年に理財局長に就任するまでは国有財産管理に関わったことがない人物でした。官僚は頻繁な人事ローテーションの下で様々な部署をたらい回しになり、淡々とミスなく人生を過ごしていくことが求められます。

その結果として、自分の所管している組織ついて明確な責任を取る意識が育ちにくく、自分が責任ポストにある任期が過ぎ去るまで問題を隠蔽することで乗り切るインセンティブが常に働くことになります。つまり、人事制度も「無責任体質」を助長する仕組みになっているのです。

上記のように「内部統制」も「人事管理」もほとんど機能していないダメ組織が存続できる理由は「定期的に徴収される税金によって運営資金が賄われているから」に他なりません。毎年のように決められた税率に基づいて税収が振り込まれてくるわけですから、実際には滅茶苦茶な組織運営を行っていても早々に経営危機は訪れないわけです。

むしろ、この手の組織は改ざんなどの隠ぺい行為を上手に行うことで問題を無かったことにするだけで組織の温存が可能だと言えます。

このように書くと「官僚は優秀で真面目だから今回の文書改ざんは例外である」と述べる有識者が多数いますが、この人たちはまともな組織で働いたことがない人たちだと思います。個人が持つ法律などの文言上の辻褄合わせの論理性を組織的な優秀さと勘違いするべきではありませんし、冒頭に述べた通り、組織マネジメントは所属員の意識に関わらず不正を防止できるものでなくてはならないからです。

筆者の周囲にもご多分に漏れず、受験競争を経験した人や政治・行政の業界の関係者が多いわけですが、彼らはいまだに「官僚は優秀」「文書改ざんは信じられない」という、ちょっと良く分からない話を真面目な顔で話しています。しかし、組織に所属している人々がテストで成績が良かったかどうかなどは「些事」に過ぎず、不正防止のシステムを整備せずに人物依存のシステムを放置した「言い訳」として通用するわけがありません。

今回の財務省による公文書改ざん問題の本質は「組織管理のレベルが低い」というだけのことです。「組織的な不正が可能な状態で、隠ぺいのインセンティブを持つ腰掛けの上司の下で働くこと」は真面目な職員の人たちに多大なストレスを与えることにつながります。意味がない「無謬性の神話」は捨て去って、低レベルな組織運営の在り方を根本から見直すことが必要です。

官僚組織のような市場の論理とはかけ離れた自浄組織が働かない組織に関して、組織に対する評価を人物依存の評価で行うことほど無意味で危険なことはありません。メディアは中央省庁や官僚を訳も分からず持ち上げる権威主義を垂れ流すことはやめて、適切なマネジメントの仕組みを導入して少しでもまともな組織として機能する必要性を視聴者に伝えるべきでしょう。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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