「未来型ショッピングと決済イノベーション」とは何か?


Visaはロンドンにイノベーションセンターを構え、未来型の決済を実現するための研究開発と製品化が進められている。まずは同センターを訪問した際に体験したいくつかのプロジェクトを紹介したい。

Visa Connected Carは、運転に関連する支払いを全て自動化した装備を持つ。音声認識も兼ねたカーナビの進化版のような端末を通して、ガソリンスタンドでは必要な給油量が自動で計算され、端末に登録された決済情報の参照により支払いまで自動で完了される。駐車場の利用も同様に、駐車場側のセンサーと車側の端末間での通信により、自動で停車時間や料金が計算され、精算機に向かうことなく決済を完了させることができる。

ファストフードのテイクアウトも日常の買い物もこの仕組みでさらなるシームレス化が進む。端末の音声認識機能を通じて希望の店、商品やメニューを伝え、注文から決済まで車内で完了させることができる。そして従来と同じくナビゲーション機能により車で店まで向かい、店では後は待たずに受け取るだけとなる。(写真は筆者撮影)

次はカードやスマホを利用せずに、自分自身が決済のツールとなり支払いを行う機能を体験した。フランスのSafran社と協同のプロジェクトで、買い物客は専用の端末に自分の手をかざすだけで支払いを完了させることができる。生体認証の仕組みを活用し、予め登録した自分の指紋等の情報とカード等の決済情報を、端末から読み取る手の情報と照合し、決済を実行する。世の中から財布も小銭も決済用ICカードもなくなる日はそう遠くないだろうと感じた。(画像はSafran社のWebsiteより)

最後はVR決済。デモとして体験したのはコンサートのチケットやグッズ購入を実行できるVR決済機能。VR環境の中でいくつかの商品が選択できる項目が表示され、視線を特定の場所に合わせることでクリックの機能を果たし、商品の選択や購入画面へのページ移動が可能となる。これも事前に登録した決済情報をもとに、VR環境の中だけで、財布もカードも取り出すことなく買い物が完了する。コンサートやスポーツ観戦だけでなく、ホテルやレストラン等、様々な買い物がVR環境下のリアルな体験を通して、より実体験に近い納得感に基づいた購入が可能となる。(画像はVisa社の動画より)

Visaと同様、Mastercardも多くの先進的プロジェクトを進めており、続けてイノベーションオフィサーの話を聞いた際に興味深かったいくつかのサービスを紹介する。

まずはソフトバンクのペッパー君が接客し、Mastercardでの決済が可能なカフェ。ペッパー君との会話ですべての注文が実行され、単にメニューの選択が可能となるだけでなく、その日のおすすめのリコメンドや割引適用に関する会話にまで対応しており、そのクオリティは人による接客に引けを取らない。自分のスマホの情報をワンクリックでペッパー君のタブレットとリンクさせることで、その場で決済可能となる。このサービスの普及により今後、様々な店舗の無人化が進み、従業員不足の解消等が期待される。(画像はMastercardのWebsiteより)

次はスマートミラー。ショッピングに特化したTech企業、Oak Labs社と協同で開発され、買い物の環境を大きく変える。買い物客はまず好みの服を選択し、試着室へ。値札にはRFIDタグが付けられており、店舗のシステムにはどの服が選択されたかが記録される。試着室のミラーはタッチパネル機能を持ち、照明の明るさや言語等が選択可能となる。試着後、別のサイズや色を試したい場合は、タッチパネル機能を通してその場で店員にリクエストすることが可能で、売り場に戻る必要はない。買う服が決まればミラーと自分のスマホとを同期させ、レジに向かうことなくその場で決済可能となる。ミラーにはおすすめの商品を表示する機能も持ち、また次回の買い物のために気に入った服の情報等を自分のスマホに送付することもできる。(画像はOak LabsのWebsiteより)

最後はARで、ウェアラブルデバイスを開発するODG社と協同でスマート眼鏡を活用した製品が発表されている。買い物客は眼鏡上に表示されるAR画像により、好きなコーディネートを選択、確認でき、気に入ればデバイス上でそのまま購入まで済ませることができる。(画像はODGのWebsiteより)

こういった話に触れ、体験していると、「未来を描こう」などと昔、小学校の授業等でわいわい話し合っていたことがそのまま現実になっているようで、テクノロジーの発展スピードの凄まじさと、イノベーション実現と活用の有無による勝敗の差の今後の一層の拡大が感じられる。


山中 翔大郎
山中 翔大郎


国際機関等でのインターンシップや難民支援の社会起業立ち上げを経験。急速に進化するテクノロジーの活用による国内外の様々な課題解決を目指す。一橋大学大学院社会学研究科修了。外資系投資銀行、ケニアの投資ファンド勤務を経て現在はロンドンビジネススクール、ファイナンスコース在学中。

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