シルバー民主主義と戦うこと・第1回 シルバー民主主義と戦う前にまず、私たちは彼らのことを知らない


75歳以上の高齢者の投票行動をシルバー民主主義とし、それに対抗しようとしている方に反論をさせて下さい。

後半に私が実際に地方を個別に訪問して聞いた言葉を羅列しておきます。数万軒のお宅を訪問して印象に残った言葉です。彼らの最大の関心ごとである、誰がいつどこでどのようになぜ亡くなったかが関心ごととして言葉の節々に出てきます。実際、60代以下の若い人達は、オレオレ詐欺に引っかかってしまった高齢の方をバカだなぁと他人事のように考えているでしょう。しかし、残念ながら生物学上において私たちは間違いなく彼らと同じ道を辿ります。ですので社会環境や制度を改善しない限り、未来の私たちは同じ悩みを持つことでしょう。より母数が増える分、その悩みはより厳しいものになるかもしれません。

統計を取りようがないのですが、年を経ると、特に男性の行動は、論理やリスクなど行動の動機となるものが、どうでもよくなるきらいがあるように感じます。いわゆる頑固というのもそうです。自分が間違っていても、自分のやっていることが危険なことであっても、自分を曲げないというものです。本人は、道理を超えてワクワクしていたり、黙々とやっていることがあります。さらにはそれを家族に強要したり、息子娘は言うことを聞かないかもしれませんが、奥さんは逆らうのが面倒なので粛々とついていっていることもあるでしょう。彼らが特殊なのではなく、そうではない私たちもある一定の年齢に達すると一定数そうなるのでしょう。ただそういう一面を捉えて高齢者の行動を軽んじたりする考えには疑問が残ります。逆にすぐ挫けそうになる私としても彼らの一途さは見習いたいくらいです。

その中で、私に残っている強い印象のあるものは、(嫌いだった)あいつは俺より先に死んだと私に教えてくれる時の表情です。一人だけではなく多数の方の表情が私の中に残っています。なんとも言えない柔和な表情で幸せそうに語られる世界がそこにあったのです。

これは私の感じたままの主観ですが、皆様にとっても、これから迎える高齢化社会というのは、80歳であれ90歳であれ、友人が少なくなり家族とのコミュニケーションもなくなり、地域コミュニティから一歩離れた世界というのはこういうものなのだと頭の片隅に置いといてください。

そこには、生きるか死ぬかの本当の戦いをしている彼らがいるのです。私たちの世代ほとんどは、まだ本当に生きるか死ぬかの戦いをしていないかと思います。負けた方が本当に死んで、勝った方が本当に生き残る、本当の戦いです。

そういった命をかけた戦いを私たちは知らないのです。そこで彼らの置かれている環境を理解せず、問題はシルバーだ!改革だ!と言いながらノコノコと若いもんが出てくるので、彼らは全力で戦うことができるわけです。そうでなくても彼らは全力で戦います。彼らは自身の取り巻く環境は政治でしか良くできないと考えています。私たちは全力を出しません。将来に期待したり、テクノロジーで変えられると思っているからかもしれません。この彼らのエネルギーと私たちとのそれとのギャップがシルバー民主主義の源だと考えています。

ここで私が心から思うのは、彼らは敵ではないということです。彼らは未来の私達なのです。もし彼らと戦うことがあるとするなら、それは相互理解の不足です。彼ら(高齢者)の多くは若者が奨学金制度でとんでもなく苦しい環境に置かれ、子育ての環境に格差があるとこを知らないと思います。同時に私たちは70代、80代で今の日本でこんなことが放置されたままでいるのかという状況を知らないでしょう。お互いが敵にすべき対象ではなく、お互いに理解しなくてはならない対象なのです。

だからこそ、今一度、彼らを敬ってみようと思いました。改めてお年寄りを大事にしよう。彼らの直面している課題に正面から向き合おう。そしてそれが私たちの未来にとって一番大事なことなのではないでしょうかということです。

彼らのシルバー民主主義を叩き潰すことによって、私達の幸せがやってくると考えてないか。彼らから選挙権を取り上げたり、高齢者がいなくなれば、高齢者が黙れば社会が良くなると勘違いしていないだろうか。今一度よく考えてみなくてはいけないと考えております。

政治の世界は高齢者を味方につければ勝てるのです。彼らは未来の私たちです。死ぬ気で生きている彼らを批判して、彼ら以外を味方につけるより、彼らの納得のいく政策と活動を提供し、期待を受け止めることができるようにしていなくてはなりません。

その中で、そもそもの原因は経済活動の停滞にあるとするならば、そこのテコ入れに協力してもらうのが良いのではないでしょうか。彼らの問題の多くはテクノロジーで改善することができること、そして日本社会にテクノロジーを流通させ世の中を便利にしていくには、彼らの政治力がどうしても必要なことを私たちは丁寧に説明していくべきではないでしょうか。

私はシルバー民主主義批判の気持ちはとてもわかっているつもりです。ただ高齢者を批判して票をまとめ上げようとすることは、いつか必ず高齢者となる私たちにとっても、政策の選択肢を大きく狭め、天につばする行為ではないかと感じるところです。お年寄りは大切に。

あいつはな、ガンであっという間に死んでった。悪いことはするもんじゃないね。

悪いやつはすぐ死ぬのよ。定年になった途端に逝っちゃったのよねぇ。

あら、あの人亡くなってたの? えーなんで? この前の旅行で元気だったのに。

娘はちょくちょく顔出すんだけども、息子はさっぱりだわ。頼りになるのは息子でなくて娘だってゆーけどホントだわね。

なんか倒れたら、あっという間だったみたいだよ。息子は全然帰ってこなくてね。娘だけだ。近くにいたの。あの息子とあそこのお父さん仲が悪くてね。

あの人ねぇ、最近見ないなと思ってたら亡くなってたのね。残念だわぁ。

(認知症の奥様をそばに置いて) 施設にいれたらなぁ、すぐ胃瘻にされるのさ。それだけは見たくないから、出来るだけ手元に置いときたいのよ。

膝が痛くてね。息子は病院に行けって言うんだけど、私は行かねんだ。病院行ったら帰って来られんのよ。ぽぉーっと呆けたようになりたかねぇしな。

俺はな、もうすぐ死ぬんだよ。どうしようもねぇだろ。喋るのも苦しいんだよ。こんな姿で息するのもうやだよ。

息子には心配すんなってゆってんだ。私の世話して嫁さんに迷惑かけられねぇし、帰ってくるのに事故でもあったら大変だべや。

あんた何やってんの。ほぉー、ほぉー、頑張れぇ。息子と歳変わらんの。ほぉー、息子と話すとき言っとくわ。

いやーやーやー、こんなとこ人訪ねてくるとなんて、思ってねぇべさ。大体人と口聞くのが久しぶりだってばさ。ほぉー、であんた何?

はぁ、はぁ、それはアンタ。えらいねぇ。うんうん、わかった、わかった。

いやぁもう、なんとかして、国民年金だけならほんとツライんだわ。アンタしらねぇんだから教えてやるけどさ、私なんか月7万だよ7万、公務員で先生やっとった夫婦なんかは月60万だろ?、うちは、ふた月で15万にもならねぇのさ。

一人で暮らしてると、寂しくってねぇ。人の声が聞こえてくるとなんか安心するんだわ、んだから、こやってな、ラジオかけっぱで寝てるのよ。ハッハッハー

こんなところでしょうか。私の見たシルバー民主主義として敵視されている人たちの一番の話題は「誰かが亡くなった」次は「誰かが大変で困っている」というものです。なんとかしてあげたいですよね。


飯田佳宏
飯田佳宏


1973年3月生まれ、北海学園大学卒業。自営業の傍ら、株式や不動産の売買で生計を立て、衆議院議員公設第一秘書として議員会館にて事務所の統括、農林水産委、法務委、災害特別委などにて質問作成・政策立案等、2年間勤務した経験も持つ。2017都議選では日当制による議員報酬ゼロ、職業議員ゼロ、しがらみゼロを掲げ、地方議員ゼロの会を組織したが、擁立候補は全員落選した。現在、タメコ(株)、(株)ログバー、(株)ディ・エフ・エフ等、スタートアップ企業のマーケティングアドバイザー、顧問等を務める。

飯田佳宏の記事一覧