インドの「スマートシティ政策」とは?


現在インドでは、100のスマートシティを建設する計画を掲げ、住宅都市省(Ministry of Housing and Urban Affairs)のもとでスマートシティミッション(SCM)が推進されています。他国では、ITや最新技術を活用し既存の課題やインフラを解決することを目的としていますが、インドのスマートシティ計画ではそれらに先立って生活に不可欠な水道や電気などの基礎的なインフラを整えることも目的としているのが特徴です。

SCMの中でスマートシティの中心的インフラとして掲げられているのは以下の10項目です。

10項目の中心的インフラ

1. 十分な水供給
2. 安定した電力供給
3. 下水処理、ゴミ処理
4. 公立的な都市交通・公共交通
5. 低所得者層向け住宅
6. 安定したIT接続・デジタル化
7. Eガバナンスと市民参加
8. 持続可能な環境
9. 市民の安全とセキュリティ
10. 健康と教育

私自身は首都のニューデリーに住んでいますが、住んでいるエリアによって水供給される時間帯が定められており、常に十分な水が使用できる訳ではありません。各家庭では水が供給される時間帯に大きな貯水タンクに水をくみ上げる必要があり、万が一くみ上げるのを忘れると半日は水が使えなくなりますし、水を使いすぎた場合も同様です。水・電気・ゴミ処理などの基礎的なインフラが整備されることは、住環境を改善するとともに、経済活動を活発に行う土台になることは間違いありません。

都市交通・公共交通に関しては、電気自動車を中心とした交通インフラの電化を目指しています。インド政府は、一時期2030年までに国内販売車両の100%を電気自動車にするとまで発表し電気自動車の普及に意欲的に取り組んでいます。その背景には大気汚染の改善、増加するエネルギー需要への対応、新規製造業を振興することによる雇用創出などが挙げられます。

ブバネシュワルと呼ばれるインド東部の都市で、SCMの一環でEモビリティ政策が掲げられた政策は、導入まで含めた包括的な内容となっています。デリー近郊でも中心部で普及しつつある電気リキシャ(三輪車)や電気バスを活用するもので、走行ルートの整備、充電ステーションの整備、バッテリー交換を容易にする規格整備、購入インセンティブ、建築基準改正による充電インフラの設置義務、電気リキシャ向けの電気料金の減免、化石燃料車両への加算税などを検討しています。

尚、2030年までにインドで販売される自動車が全て電気自動車に代替されるかは、まだ不透明な部分が多いですが、電力省では電力法を改正し現行法では認められていない電力の再販売を可能にすることで、充電インフラ整備に向けたさまざまな企業の参入を促進する方向で動いています。また、EV向け充電インフラの整備に向けたロードマップ作成のための委員会も設置されています。

また、州政府主導で動いているプロジェクトでユニークなものとして、アンドラ・プラディッシュ州の新州都アマラバティの建設プロジェクトが挙げられます。同州は2014年にテランガナ州から独立して新たに生まれたインド29番目の州になりました。ゼロからの州都建設であるため様々なインフラ設計がゼロから行われているのが特徴です。都市開発のマスタープラン作成は昨年シンガポールのコンソーシアムが受注しています。コンソーシアムにはインドで既に5都市10プロジェクトを手掛けているシンガポールの大手デベロッパーアセンダスも参画しており、積極的に先進的な外国の都市開発ノウハウを吸収しようという姿勢が見てとれます。

アマラバティのスマートシティ構想は、インド初の真のスマートシティともうたわれており、1. エネルギー(スマートグリッド、再生可能エネルギーなど)、2. スマートヘルスケア(遠隔医療など)、3. 教育(Eラーニング、教育のデジタル化など)、4. IT(公衆無線LAN、IoTなど)、5. インテリジェント交通システム(交通・駐車管理システムなど)、6. 建物(グリンビルディング、雨水の再生利用など)の6つの分野に分類され計画されています。日本企業としてはトヨタ自動車の現地合弁会社(トヨタ・キルロスカル・モーター)がアンドラ・プラデッシュ州政府と覚書を交わし、プリウスのプラグインハイブリッド車と小型EV車両の導入実験を行う予定となっています。

13億人以上の人口を抱えるインドでは、一部の州が日本の総人口を超える総数の人口を有している場合もあります。各州首相は強力な権限を有しており、自州の発展のために外国投資の誘致にも積極的な姿勢を示しており主要国には独自のミッションなども送っています。そのため、州間での発達を競うインセンティブが働いており、州都を中心に独自の発展を遂げています。私自身、今後とも現地で各都市の動向を注意深く見守っていきたいと考えています。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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