なぜ佐川亘寿前国税庁長官は「証人喚問」にまともに答えないのか?



出典:日刊ゲンダイ

2018年3月27日、佐川亘寿前国税庁長官の証人喚問が行われました。朝から行われた証人喚問をNHKで全て拝聴しましたが、「文書改ざんに関する経緯等」については「刑事訴追」の恐れがあるから答えないの一点張りという結果になりました。

佐川氏は「なぜ証人喚問にまともに答えようとしない」のでしょうか。それは証人喚問における虚偽の陳述や証言拒否の量刑が非常に軽いからに他なりません。

〇議院証言法により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき
3月以上10年以下の懲役に処する。ただし、審査や調査の終了前で、かつ犯罪の発覚する前に自白したときは刑が任意的に減免される。
〇正当の理由なく証人が出頭・宣誓・証言を拒否したとき
1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。情状によって禁錮及び罰金を併科しうる。

この程度の量刑にしか過ぎないため、60歳の年齢に達して、しかも国税庁長官を「辞職」した佐川氏にとってみれば、証人喚問を侮辱する回答拒否を繰り返したところで、せいぜい1年以下の禁固、それも執行猶予付きになるのが関の山でしょう。回答拒否しながら告発されても、あとで関係者が仕事を世話するなどをすればお釣りが容易に来るわけです。

したがって、佐川氏は公文書の改ざんに伴う罪や偽計業務妨害罪などの量刑が重い刑罰を回避するため、証人喚問への証言を拒否する、ということに合理性があります。証人喚問は犯罪者を裁くものではないため、犯罪の捜査対象になっている人間を呼んだところで、真相の量刑が証言拒否よりも重ければ回答するわけがありません。

佐川氏の回答で唯一意味があったと思われる点は「首相、夫人、官邸などからの改ざんに関する指示や関与は無かった」という佐川氏の認識は「局長である自分に官邸からの指示・関与や部下や報告が無かった(知らなかった)」ということを根拠としているという点でしょうか。

筆者は、佐川氏の発言が仮に全て事実であったとするなら、少なくとも安倍昭恵夫人の名前が削除された理由は、以前に拙稿で示した仮説『決裁文書から「安倍昭恵削除」の公文書改ざんが行われた本当の理由とは何か』のように、改ざん日である4月4日に発された閣議決定による方針明示(つまり、直接的な指示や関与ではない方針明示)を受けたものであったように考えられます。

佐川氏のように失うものがない人物(辞職・引退した人物)ではなく、虚偽答弁や回答拒否によって失うものがある人物を呼ばない限り証人喚問は意味をなしません。証人喚問を一度始めた以上、上記の佐川氏の認識以外に何らかの指示・関与があったかを明らかにする、という本日の唯一の成果を踏まえた更なる喚問が行われることに期待します。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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