「東京都以外の全ての人口が減少する」時代に向けて


国立社会保障・人口問題研究所は2045年までの地域別将来推計人口として、全国的に驚異的な高齢化が進んだ上で人口増は東京のみという内容を公表しました。これを受けて国政レベルでは「愚にもつかない」地方創生の必要性が再び喧伝されて、来年の統一地方選挙及び参議院議員選挙でのバラマキが実行されることになるでしょう。日本版・ソヴィエトの政策は実質的に破綻していますが、都市部の政治勢力が国政に対して政治的に無策のうちは日本全体で真綿で首を絞める緩やかな衰退が続いていくのだと思います。

国政における議席数は圧倒的に都市部からの議席数が少なく、地方勢力による都市からの税収収奪を止めることは困難です。本年も地方消費税の配分見直しなど、東京からの更なる財政移転を目的とする政策が次々と実行されています。ただし、景気が反転して悪化することがあれば東京を締め付けるだけでは財政移転のための予算を十分に捻出することは不可能です。

日本全体の人口が減少して高齢化することへのソリューションを「東京を痛めつけることで解決する」ことは無理です。なぜなら、その意味するところは、日本全体が「世界の中で高齢化して置き去りになる」ことを意味しているからです。現在の日本の中での地方が将来的には世界から見た場合の日本全体のイメージになるということです。もはや救いようがないことをご理解頂けると思います。

では、具体的にはどうするべきでしょうか。地方への不毛な財政移転を止めることはできない中で、都市部が政治的に勝ち取っていくべきものは「規制廃止」でしょう。つまり、更なる財政移転を約束する(=元々不可避な状況)代わりに、東京都は中央省庁による規制・指導を受けないように権限の移譲を迫ることが望まれます。そして、東京都は不要な規制を全て撤廃していくことで世界中から資本・人材を呼び込んで経済成長及び税収増を実現します。

東京都への人口流入を防ぐために東京23区への大学定員を制限するような行為は、実は地方と東京の両者の首を絞めることになります。このように東京の息の根を止めようとする行為は鵜匠が鵜を絞め殺すような行為であり、全く意味がないどころか単なる愚か者が行うことだと言えます。

地方が人口減少・高齢化によって成長の余地がほぼ存在しないことは明らかであり、地方選出の代議士は東京からの財政移転を取り合って住民の最低限の生活を維持することに集中するべきです。そのためには、東京が経済成長して潤沢な財源を貢ぐことが可能な状況になっていることが前提なので、地方選出議員も自分たちの地域には財政移転、そのために東京を中心とした都市部をどのように経済成長させるのかを真剣に考えるべきでしょう。

建前としては「わが町を活性化させます!」と地方選出の代議士が述べることは正しいわけですが、それは「日本の将来の人口推計」から見れば実現不可能な約束です。現実に実行可能なことは「東京などの一部の地域の規制を全面的に廃止して大発展させるとともに、わが町に都市部の上りを積極的に上納させます!」ということです。元々地方選出議員の人たちはそのことが分かって建前を主張していた利益誘導型の人たちが多かったわけですが、今は本気で地方創生を実現できると思っている人が多くなってしまったことが心配でなりません。

筆者は東京から地方への財政移転は東京にも地方のためにもならないと思うので反対ですが、それでも政治的に行われてしまうものは仕方がないものと考えています。しかし、地方選出の代議士も地方創生によって地方が活性化していく、そのためには東京の活動に更なる規制を加えるべき、という人口推計を何も踏まえていない全く意味不明なことを本気で実行することは大概にするべきです。そして、東京側も財政移転に表面上は反対意見を盛り上げつつも、それをバーターにして大幅な権限移譲及び規制廃止を実現して政治的自立を勝ち取る方向で動いていくべきでしょう。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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