Google傘下のDeepMind社から学ぶ最先端のAI動向


DeepMindはAIの分野において世界で最も注目されているロンドンの企業である。創業は2010年で、2014年にはGoogleに買収され、その金額は約4億ポンド(約600億円)と言われる。現在約400人の社員のうち、エンジニア・科学者が約7割を占める。そこでは、汎用的であること、自己学習能力を持つこと、データ中心主義を理念にAIのアルゴリズム開発が進められている。ゲームを用いて開発を進めることで知られており、例えばその一つのアルゴリズム、「Deep Q-Network」に関しては、80年代のインベーダーゲームのような様々なシンプルなゲームを通して数百回学習を繰り返すことで、自ら非常に高度な戦術を学習し、強いプレーヤーとして成長していくことが示されている。(画像はDeepMind社のプレゼンテーション動画より)

 

DeepMindに関して最も有名なのが、2016年に行われた同社が開発した「アルファ碁」と世界トップの韓国の李九段との碁の対局で、世界中の約2.8億人に視聴され、3万5千以上のメディアに報道された。結果は4-1でアルファ碁の勝利だったが、それ以上に李九段さえも対局後に「視野が広がった」と述べたり、アルファ碁もこれまでの学習では見られなかった李九段の動きに攪乱されたりするなど、非常に興味深い対局になったと言われる。

実社会での応用も既に進んでいる。先日Googleが発表した「Cloud Text-to-Speech」というテキストの自動読み上げサービスにもDeepMindの技術が活用されている。ここでは、「WaveNet」というプログラムが使用される。従来の音声認識、読み上げサービスが文字や単語の区切りやつなぎ合わせにより機能していたのに対し、WaveNetでは音声の波長自体のデータをその分析とアウトプットに活用するため、かなり人間の発話に近い音声の再現が可能となっている。この読み上げサービスに関しては12の言語に対して32の異なる音声が使用可能で、今後コールセンターにおける音声自動案内機能、翻訳、スマート家電の会話機能やニュースの読み上げなどにおける活躍が期待される。

他にも、エネルギーや医療の分野での活用が進む。現在、世界中のデータセンターが地球上の3%のエネルギーを消費していると言われる。DeepMindのAIによる冷却システムの最適化では、実際Googleのデータセンターにおいて約40%のエネルギー消費の削減を可能にしたと言われ、今後他のデータセンターでの活用が期待される。(画像はDeepMind社のプレゼンテーション動画より。エネルギー消費の削減に関して。)医療の分野では、イギリスのNHS(国民医療サービス)等との協同の例がある。数千の網膜の画像を用いてAIのアルゴリズムをトレーニングし、眼に関する疾患の兆候の発見を、人間よりも早く効率的に行うことを目指す。こうした疾患の発見に関する作業は通常、医師により数時間かけて行われているため、AIの活用による業務負担の軽減が期待される。

 

さらに、AIが社会に及ぼす負の影響に対する懸念にもDeepMindは取り組む。2月に発表された論文では、いかにしてAIが差別や偏見の問題に対処できるかに関する一つの例が示された。極端な例を挙げると、採用や昇進に関するAIのアルゴリズムが作られたとすると、ある分野では女性の採用や昇進のデータが少ないことが理由に、AI自体も既存のデータに従って男性有利な判断を進めてしまう、ということが起き得る。こうしたアウトプットは性別や人種をはじめ様々な社会的な平等・公正性に関する問題で生じる。そのため、その論文では対処法の一つとして、性別や人種に関する有利不利が逆転した世界を想定し、AIの判断がその世界と同じものであれば公平である、と結論付けるプログラムを発表した。差別や偏見無しで分析すればどうなるか、という部分まで立ち返って判断する点で、平等・公正性の問題への貢献度は大きいとされる。

日本でもあらゆる業種で現場では非常に多くの手作業と人の関与により、効率性の低下と適切でないアウトプットが導出されることが頻出しているため、より積極的なAIの導入と適切な活用が急務と思われる。


山中 翔大郎
山中 翔大郎


国際機関等でのインターンシップや難民支援の社会起業立ち上げを経験。急速に進化するテクノロジーの活用による国内外の様々な課題解決を目指す。一橋大学大学院社会学研究科修了。外資系投資銀行、ケニアの投資ファンド勤務を経て現在はロンドンビジネススクール、ファイナンスコース在学中。

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