THE OTAKU議員・第3回 今、何が必要か?別の視点から見たビッグサイト問題の本質とは


こんにちは。大田区議会議員のおぎの稔です。「THE OTAKU議員」第3回となる今回は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催により、お台場周辺やビッグサイトが使用できなくなるいわゆる「ビッグサイト問題」について取り上げます。

東京都が代替え会場として計画している青海の仮設施設が期間までに完成するのか?という事も大きな懸念点になりそうですが、今回は日本のMICE※(国際会議)関連企業、専門家の組織であるMPI Japan Chapterの会長である前野伸幸様に、ビッグサイト問題や今後のマンガ、アニメ産業の展望などについて訊いてみました。


写真:前野氏と筆者(おぎの)

ビッグサイト問題の経緯は第1回をご覧ください。
THE OTAKU議員・第1回「東京ビックサイト問題とは?」
MPI Japan Chapter

※MICEとは、企業や団体国際機関や学会が行う会議(Meeting)、研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとったものを指します。

東京ではなく首都圏の問題に

・同じく展示場などの施設を使うことの多いお立場から見て、今回のビッグサイト問題をどのようにお考えですか?

前野氏「ビッグサイト会場問題を考える前になぜ、このような騒動が起きているか考える必要があると思います。展示会イベントだけでなく国際会議や音楽イベントなどを含めて、首都圏の会場が飽和している問題が既にあり、オリンピック・パラリンピック問題も首都圏の問題として考えるべきです。」と語る前野氏、では具体的にどういう事でしょうか?

前野氏「幕張メッセ、ビッグサイト、横浜パシフィコ、高崎にも会場が出来ます。そうした首都圏全体の会場との連携策を打ち出す必要があります。オリンピック問題に絡んだ会場問題の回避の方法があると参加者もそう考えてくれるのではないでしょうか?」

大田区にも流通センターや大田区産業プラザPIO、アプリコがありますが、各自治体にも大なり小なり施設はあります。回避の方法があるという事で、首都圏、関東近郊での開催を模索し様々な対策、準備を行う事が出来ますね。

前野氏「いずれにせよ、宿泊施設が足りなくなります。首都圏全体や地方へ還流する事もある程度考えなければなりません」

考え方の転換を

前野氏「展示会産業や同人誌即売会のようなイベントだけを見れば、産業としてのパイが減るかもしれませんが、日本の経済全体でみればパイは増えるのではないでしょうか?」

オリンピック・パラリンピックによって展覧会のようなイベントや交流、他にも様々なサービス、産業のPRのチャンスが訪れると考える事が出来ます。業態にもよりますが、そちらに注力をする事でマイナスをイーブン、もしくはプラスに転換する方法を考えるべきということかもしれません。展示会のようなイベントも小分けにして開催する事も視野に入れても良いでしょう。

前野氏「長野県でも終了後に問題になりましたが、オリンピック・パラリンピックでの会場問題による機会損失だけでなく、オリンピック・パラリンピックの特需から来る施設等の投資、その反動が東京に大きな影響を与えるかもしれません。東京都はオリンピック施設を何十年にも及ぶ負の遺産にしない努力もしなければならないのです。」

日本のMICE産業も変化をしてきた

前野氏「近年、MICE関連のビジネスイベントも見本市形式から、プライベートショー形式に変わってきました。1000枚の薄い名刺交換より、10回の濃い商談。フラットな展示会、名刺交換が中心のイベントから、濃密な商談、クロージングな懇親会形式になりました。今回問題を抱えているマンガ、アニメ産業や同人誌関連の方々も、展示会以外の違うことにもっと挑戦しても良いのかもしれません。」

2020年に海外から大勢の人が一斉に押し寄せる機会をどうやって利益に結びつけていくのか、マンガ、アニメに関してもそういったイベントを増やしていく事も必要なのかもしれません。

ビッグサイト問題は会場の行政依存が本質的な課題

・都が計画している青海の仮設施設についてはどのようにお考えですか?

前野氏「1964年の五輪の際に建設された代々木体育館は立地も施設も良かったのですが、青海施設のオリンピック後の民間売却も考えるのであれば、民間が買い取ってくれる施設にしないといけませんね。」

・ビッグサイト問題について東京都のスタンスはどう思いますか?

前野氏「東京都は多分に努力をしてくれていると思います。ただ、問題の解決の為にはみんな協力しないとならないのではないでしょうか?他国と比べても、展示会の主催者、関連団体がリスクを負っていません。」

外国では、大きな展示会の主催者や産業関連団体は投資をしていると聞きます。今回、警備から計画変更、仮設展示場の建築と東京都がお金を出して対応する事になっていますが、その点をどうお考えですか?

前野氏「行政が全て作っているからこそ、今回のような件が起きているのではないでしょうか。形は様々ですが、音楽業界の解決策のように民間でリスクとコストを負う事も必要だと思います。」

音楽業界の解決策

音楽業界も同様に五輪開催に伴う会場問題がありました。2016年問題とも言われ、2016年前後に行われる既存の大規模施設(さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナ、日比谷公会堂など)の老朽化に伴う改修という、会場が絶対的に不足するという問題を抱えていた音楽業界ですが、もともと問題を抱えていた事もあり、オリンピック・パラリンピック開催や関連工事が重なる影響への対応も早く、解決策として横浜みなとみらいに、収容客10000人のホールを業界で建設するなど対応をしています。

首都圏における、大型ホール・会場不足問題の解決の一助となることを目指して ぴあ、収容 1 万人規模の大型音楽アリーナを、 横浜・みなとみらい地区に 2020 年春開設(ぴあニュースリリース2017年7月20日


写真はぴあ株式会社HPより引用(http://corporate.pia.jp/download/new-arena170720/index.html

これは、同人誌即売会ではなく、展示会産業全体の話になりますが、発表の場、展示会の場を行政に依存が過ぎるからこそ、今回のオリンピック・パラリンピック会場問題が起きているという事も確かです。
同人誌やコスプレ系のイベントの課題で言えば、表現内容に対する規制の問題やコスプレでの会場内外の通行、また、会場によっては他の会議やイベント等に比べ、同人誌即売会系のイベントのランクを下げられていて、会場が取りにくい、使わせてもらいにくいといった話も聞きます。オタク的なものに限らず、展示会産業が行政依存を続ける限りは、今後も同様の問題が起こり得るかもしれません。

業界間で協力して会場を作り、対応をしていく事も、一朝一夕ではできませんが、一つの方向性として考えていく必要もあるのではないでしょうか?

次回はMICEの専門家の前野様から見た同人誌、オタク産業をどう思うのか?大田区にどんなポテンシャルがあるのか?という事を書いていきます。

前野伸幸氏
Nobuyuki Maeno
(株)ホットスケープ
代表取締役
MPI Japan Chapter 会長


荻野稔
荻野稔

大田区議会議員
非正規雇用、NPO活動で障害者支援に携わりながら、都議会議員秘書を5年務め2015年より現職(1期目) 表現の自由を守る政治運動にも携わり、2010年、石原慎太郎元都知事の知事提案条例の否決に関わる。

荻野稔の記事一覧