2018年・地方創生から東京蘇生に切り替える年


まち・ひと・しごと創生総合戦略が発表されてから3年間の無駄な年月が流れました。その間、全国の地方自治体では将来の人口目標とそれを実現させるための総合戦略という絵に描いた餅を策定することに貴重な頭脳と時間を費やしました。

少子高齢社会という危機的状況下にも関わらず、そもそも十分な民間市場が存在する見込みがない場所に地域起こし協力隊として若者を送り込み、まるで中国共産党の下放政策さながらの人的資本の無駄遣いが行われました。東京から莫大な財政移転を実施して作り上げたのは、若者と日本の未来を奪った政策の哀れな残骸です。政策が狙った都市への人口流入の抑止すら成果としては十分に果たせませんでした。

中央政府からの財政移転で感覚が麻痺した地方自治体は、GRPの約40%が政府最終消費支出と公的資本形成が占めている半社会主義的な経済に堕している地域も少なくありません。また、市民税総額と市役所給与総額がほぼ同一の状況となっていても、ほぼすべての住民が何の疑問を持っていないどころか、更に多くの中央政府から財政移転を求める餓鬼道のような有様になってすらいます。その結果として、2017年も消費税の地方割り当て分が変更されて東京都は1000億円の減収となるとともに、森林環境税などの地方への財政移転を進める新たな税金が創設されました。

一方、世界では新興国においてメガシティーが勃興しており、東京を始めとした日本の大都市に伍する、または東京を将来性で凌駕する都市も現れ始めています。

中国は言うに及ばず、東南アジアやインドの諸都市を見ても、既に東京、大阪、愛知などの一部地域以外の日本の諸都市よりも発展している都市が存在しています。日本が国土の均衡ある発展や地方創生などの政府主導の誤った政策を実行している時代に、これらの諸都市は民間資本を流入させるための各種規制緩和などの施策を実行し、世界経済に接続することでグローバルな意味で「本物の地方創生を実現した」地域だといえます。

中国の沿岸部の諸都市は漁村から世界有数の大都市に成長し、バンコクなどの東南アジアの中心都市では東京並みに高層ビルが立ち並び、インド・デリー近郊では新興都市グルガオンが都市丸ごと建設されつつあります。私たち日本人が誤った優越感でアジア諸国を見下すテレビ番組や中国崩壊予測本などで気持ち良くなっていた時、それらの国々の人々は日々努力をして発展の果実を掴んだのです。私たち日本人は世界の現実に目を向けて、過去の栄光にすがる思考を捨て去る必要があります。そして、東京から地方にノスタルジーを満たすためだけに、人材・資金・情報をバラまいて散財する政策を転換させるべきです。

今、日本に必要な政策は、地方創生ではなく「東京蘇生」です。アジアの中心都市としての地位を失いつつある東京及び東京圏に再びあらゆる経営資源を集中し、経済・社会の成長を継続するアジアの息吹を吸収することで蘇らせることです。

東京圏は世界最大の人口を擁する経済圏であり、従来までは日本の各地方からの人口流入、多様な才能を持った人材の集中運用によって経済成長が支えられてきました。しかし、本格的なグローバル化した時代において、日本の地方からの人材の流入だけでは明らかに不十分であり、世界中から優れた人材に選ばれる魅力的な都市であり続けることが重要です。

そのためには、都市開発の規制緩和によって再開発を大規模に推進し、ソフト面のインフラもグローバルな要素を包括的に採用し、あらゆるテクノロジーを積極的に普及し、人間の社会への貢献や働き方自体が大きく変わっていく、都市の革新、そして人間の革新を促すことが必要です。現在の東京都の子育て・高齢化などの諸問題なども地方への財政移転を縮小し、都市に再投資することで自然と解決することができます。(むしろ、都市の課題は地方への財政移転によって解決に必要な資金を奪われて残置されているとも言えます。)

新しい都市間競争に勝ち抜くためには、世界最先端の医療技術、機械学習による高度な教育、自ら復元する部材など土木の革新、3Dプリンターの普及、ブロックチェーンの利用促進、野菜工場の高生産性化、その他諸々の技術革新によって、現代社会を全く異なるレベルに革新し続ける意志と力が求められます。

日本の国会の議席は地方からの議席が大半を占めており、日本全体の議論が時代遅れの古びた利権を守るための政治になることは必然だといえます。だからと言って、しかし、日本の都市部は国会の時代錯誤の議論に付き合うべきではありません。御用識者・御用社会起業家らの意見に耳を貸さず、自らの頭と身体で時代を前に進めるべきです。

東京をアジアの中心地として蘇生させること、そして日本の諸都市が健全な競争を国内外の諸都市と行うことができる精神を取り戻していくこと、2018年が新しい時代の幕開けになることを望みます。


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渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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