新しいものづくりがつくる産業の未来(第1回)


The Urban Folksをご覧の皆様、はじめまして。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所、Creative Smash株式会社代表の川島京子と申します。
これから6回にわたり、「新しいものづくりがつくる産業の未来」というテーマで連載をさせていただきます。第1回目の今回は、近年注目を集めるIoTと、IoTを知る上で大切な要素の一つである3Dプリンタについてお話をさせていただきたいと思います。

インターネットに繋がるモノ

2014年以降、IoTという言葉に注目が集まるようになり、世界的にブームになりました。ご存知の方も多いと思いますが、IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略です。センサーや通信機能を備えたモノは、インターネットと繋がることで情報を相互に交換しますが、そのようなモノを私たちの身近なところでIoTデバイスとかウェアラブルデバイスといった呼び方で耳にすることが多くなりました。

IoTデバイスは、これまでは活用されていなかった情報を含め膨大な情報を取得し、サーバーに送り分析することが可能です。例えば、健康管理のためのデバイスであれば、運動量を計測し、取得したデータを元に最適な運動頻度や消費カロリーを提案してくれています。私はApple Watchを毎日利用していますが、一定の時間動かなければ立ち上がるように立ち上がって動くようにとアラートが飛んできたり、日々の活動量(運動量や消費カロリーなど)を計測してくれています。
さて、近年ブームとなったIoTですが、実はIoTという言葉が最初に登場したのは90年代の末で、IoTの概念自体はブーム到来する10年以上前からありました。IoTの提唱者として知られるイギリスの技術者ケビン・アシュトン氏が、1999年にInternet of Thingsという言葉を使用したことが始まりでした。IoTの概念自体は新しいものではなかったとしても、近年のブームによって新たなイノベーションが数多く生まれたことは事実です。「ブーム」というと、いつか終わってしまうようなものに聞こえるかもしれませんが、ブームがなければ注目されなかったアイデアや、製品として形にならなかったモノもあったでしょう。

通信と製造のコスト革命

現在、企業から個人まで多くの方が様々なIoTデバイスを製造し世に送り出しています。コストを抑えて試作品を作り、クラウドファンディングを通じて資金を集め、集めた資金で量産化する、という良い流れもできています。

このようなことが可能になった理由として、通信や製造に必要なコストが下がったことが挙げられます。通信に関しては、例えばインターネットサービス大手のさくらインターネットはsakura.ioというサービスで、通信モジュールやデータ処理等に必要なシステムを含む、IoTのプラットフォームを提供しています。利用料は通信モジュール1台につき月額60円(税別)となっており、通信モジュール自体も8,000円(税別)で販売されています。さらにsakura.ioが体験できるハンズオン形式の勉強会も開催されており、筆者もこの勉強会に以前参加させていただいたことがあります。参加者の中には、IoT初心者の方や個人の方も多く、IoTに挑戦するハードルが下がっていることを実感しました。製造においては3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーション機器が身近になったことは非常に大きいです。

3Dプリンタは未来をつくる魔法のマシン

2012年にWired元編集長であるクリス・アンダーソン氏の「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」が出版され、メイカーズムーブメント(メイカー革命)が注目を集めました。クリス・アンダーソン氏は「MAKERS」の中で、メイカーズムーブメントの3つの特徴をあげています。

1 デスクトップのデジタル工作機械を使って、モノをデザインし、試作すること(デジタルDIY)
2 それらのデザインをオンラインのコミュニティで当たり前に共有し、仲間と協力すること。
3 デザインファイルが標準化されたこと。おかげでだれでも自分のデザインを製造業者に送り、欲しい数だけ作ってもらうことができる。また自宅でも、家庭用のツールSで手軽に製造できる。これが、発案から企業への道のりを劇的に縮めた。まさに、ソフトウェア、情報、コンテンツの分野でウェブが果たしたのと同じことがここで起きている。
(引用) MAKERS 21世紀の産業革命が始まる /クリス・アンダーソン

つまり、メイカーズムーブメントは3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション機器によって、専門知識がない人でもアイデアを形にし、SNS等を通じて発信し、共創することでオープンイノベーションが加速する、ということ。まさに、このムーブメントによってIoTデバイスを含む数多くのアイデアが形になりました。
余談ですが、3Dプリンタの歴史は1980年代まで遡ることができます。1980年、3Dプリンティング技術の一つである光造形の元となる技術を開発したのは、日本人の技術者・小玉秀男氏でした。小玉氏は特許を出願したものの、当時は評価されず、必要な審査請求をしなかったため特許取得には至らなかったそうです。その後、3Dプリンタメーカー大手「3D Systems」創業者であるチャック・ハル氏が3Dステレオリソグラフィー(光造形)の特許を、同じく大手3Dプリンタメーカー「Stratasys」が積層方式(FDM、熱溶解積層法)の特許を取得しました。そして後に彼らの特許期限が切れたことで、個人でも入手できるほどの安価な3Dプリンタが広まるようになりました。

人間を拡張するテクノロジー

モノの製造コストが下がったことで、人間の拡張がほぼ無限に、そして誰もができるようになりました。この発展は、どこまで広がっていくのでしょうか。私たちの体を越え、空を越えて、すでに宇宙でも3Dプリンタが活用されていますが、やがて宇宙にその手が伸びていくのではないでしょうか。

「テクニウムは生命の基本的な特性を拡張し、そうすることで生命の基本的な善を拡張する。(中略)これらの特性はテクニウムの「望む」ものなのだ。」
(引用)テクニウム テクノロジーはどこへ向かうのか? / K.ケリー

環境や必要なものが揃いつつある今、私たちの創造力こそに価値があり、無限のアイデアの前には無限の可能性が広がります。私たちを取り巻くテクノロジーも、そんな未来を望んでいるのかもしれません。


川島京子
川島京子


1989年東京都生まれ。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所リサーチアソシエイト。Creative Smash株式会社代表取締役。2008年、明治大学在学中に インターネット上の仮想世界「Second Life」にて音楽ユニットをプロデュースし、企業とタイアップしたバーチャルイベントを実施。メジャー音楽レーベルに勤務を経て、24歳で独立。国内最大級の3Dプリンタメディア等ものづくりやクリエイティブに関わる事業を展開。

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