シルバー民主主義と戦うこと・第2回 大阪維新の都構想敗北と高齢者の置かれていた当時の環境


選挙と高齢者といえば、つい最近忘れられない衝撃を受けました。選挙期間中に駅近くに私はタスキをかけて立ち、朝は6時半から夜は10時半ころまで毎日毎時、「飯田です。よろしくお願いいたします。」とお願いをしていた時の話です。お昼のラッシュが終わり、通行も一息ついたところでした。大体140センチないくらいのおばあさんが杖をつきながらえっちらおっちらと歩いてきました。

通常、選挙中、若者やサラリーマンは忙しいので冷たいというか構ってられないという方が多いかと思いますので、一瞥など気にすることはないのですが、高齢の方はどの陣営だとか、支持政党に関係なく、いろいろおと声がけを頂くことが多くあります。「あら、ご苦労さん。」「頑張ってね。」とか「私は誰それ応援してんの。」などの簡単な挨拶から悩み相談まで、この時も何か話してくれるかなーとか少し期待しながら、少し近づいて「こんにちは~」と私から声を掛けました。すると、おばあさんは動きが止まり、まず何をしたかといいますと、地面にツバをペッと吐きました…

えっ…と私が絶句しているところ、追い打ちかけるように少しむくみ気味の目から迫力満点オーラを出しながら私をギロっと睨んで、そしてまたえっちらおっちらと歩きだしました。ちょっとしたショックを受けた私はすぐに休憩に入って、きっと機嫌が悪かったからだろうと思うようにし、なんとか気を取り直して再び選挙戦に戻りました…落ちのない話で申し訳ありません。

それでは、シルバー民主主義に対する批判としてよく話題に上った大阪市での大阪都構想に関する住民投票の話をしたいと思います。

2015年5月 大阪都構想の住民投票が大阪市で行われ、全区の集計で反対多数となりました。インターネットで見られる出口調査の結果を見ると、70代以上の層の反対が大きく目立ちます。50代女性の僅差での反対多数を除き、程度の差こそあれ、賛成が反対を上回っていたからです。

一般的に出口調査と実際の投票結果が大きく異なることはありませんので、70代以上の層の反対が投票結果に大きく影響し全体での反対多数となりました。これを受けてテレビなどでは高齢者の投票行動がクローズアップされ、インターネットではシルバー民主主義への批判、言葉が悪い方たちは「老害」という言葉を使って非難します。

選挙というものは、運動会でやるような玉入れみたいなもんで、選挙の票は、玉入れの玉です。懐しい赤い玉、白い玉これを選手が拾って籠に投げ入れます。この玉が票ということは、有権者が玉ということです。おじいちゃんも玉、おばあちゃんも玉、若者も、女性も玉です。そして、その玉入れに勝った負けたというのは玉が良かったとか悪かったとかという問題ではありません。

選挙に詳しい人などは、候補のことをタマと言いますが、ここでの話は有権者が玉入れの玉という意味です。

同様に選挙結果に対して、ある特定セクターの有権者が悪い奴だったからなどということもないでしょう。今回の場合はいわゆる選挙ではなく政策選択の住民投票ですので、よくわからず反対に投票した方たちへの牽制球にはなったのではないかという意義以上のものはないでしょう。住民投票期間中、どちらに入れようかと思案している時、なにげに隣の隣の隣くらいのじーさんが都構想は反対に入れようと言い出して、なんか頑張ってる。うるさいので入れようか。で、入れちゃった。みたいな、おばあさんは、シルバー民主主義反対!老害!などと言われると、都構想に反対票を入れたことに関して、なんか悪いことしてしまったかもしれない…などとなっているのではないでしょうか。ちょっと可哀そうな気が。

都構想の本質

この都構想の本質は二重行政の解消といわれています。少し前まで、大阪府とその主要部を占める大阪市のリーダーが別々に生まれ、それぞれに議会があり、独自の権力構造が構築されることとなり、議員やその後援者の一部、保守も革新、我も我もと税金ブローカーとなり、それぞれに跋扈して無茶苦茶なことが行われていました。

1つの自治体には行政府と議会があり、それぞれの役割によって、ベクトルの方向が異なります。しかしながら、大阪府と大阪市という重なる場所で行政府が2つ、議会が2つなんてことになると、もうどこに向かっているのか、どこに向かうのか有権者はわかりません。

現代型の地方行政府と議会の関係は、チェック機能が働くというよりもチェックする能力をいかして、いかにして議員が首長の専決処分の中に子飼い業者や政策を放り込むかということが全国的に行われています。首長はそれほど強い権限を持っています。その首長の強い権限を議会側がすり寄って山分けしたり、少数会派であってもおすそ分けしてもらうイメージです。

こうしてお金を節約するのではなく、使うことばかり考える議会となり、さらには重なる地域の行政府と議会の関係の中で、それぞれに議員が派閥を作り、俺すげー、いや俺たちの方がすげーと子供顔負けの勢力争いが生まれます。そのうち相乗りがなんとも美味しいことに気づきました。保守も革新もどちらも心地よくあるために、建設費用は保守側へ、維持費は革新側へ…というのはざっくりすぎる分け方ですが…どちらも困った人たちへ向かう税金、将来投資に関するものに向けられた税金、そして施設や事業を維持管理する税金をブローカーとして美味しく頂いてきたわけです。こうして税金を浪費し借金が膨れ上がっていくシステムができあがりました。

そのおかしな構造を変えてやろうと出てきたのが松井一郎さんです。橋下徹さんという強力な飛び道具を手に入れて、既存の構造をひっくり返そうと二人三脚で仕掛けていき、保守の一部と無党派層、主に税金を支払っている層をまとめ上げ、強力な地方議員集団を作り上げました。というのが私のざっくりとした理解です。

そうして都構想の前段階に改革を進めていくわけです。既存のろくでもない政治家であれば政策だけを唱え、あとはお楽しみというところ、まじめな2人はせっせせっせと行政改革と補助金改革を進めていきました。


飯田佳宏
飯田佳宏


1973年3月生まれ、北海学園大学卒業。自営業の傍ら、株式や不動産の売買で生計を立て、衆議院議員公設第一秘書として議員会館にて事務所の統括、農林水産委、法務委、災害特別委などにて質問作成・政策立案等、2年間勤務した経験も持つ。2017都議選では日当制による議員報酬ゼロ、職業議員ゼロ、しがらみゼロを掲げ、地方議員ゼロの会を組織したが、擁立候補は全員落選した。現在、タメコ(株)、(株)ログバー、(株)ディ・エフ・エフ等、スタートアップ企業のマーケティングアドバイザー、顧問等を務める。

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