<東京大改革の今:第8回> ハコモノの魅力アップのその先は?


公共施設(いわゆるハコモノ)の再配置・統廃合が地方自治体の大きな課題である一方、東京都では「施設サービス魅力向上プロジェクト」というものが進んでいる。

これは、公園・動物園、文化施設、スポーツ施設で来場者・来園者の多い施設を対象として、「サービスを利用者目線で総合的に点検・評価し、必要な改善とサービス品質の向上を通じて、施設の魅力向上」を目指した活動である。

平成29年度に他団体への視察等を実施、施設の特徴に応じた点検手法を検討、平成30年度は都政改革本部事務局が所管局と協働して対象施設の点検・評価を実施したそうだ。

対象は、公園・動物園が130施設、文化施設が8施設、スポーツ施設が10施設。

地道な点検・原点から立ち返って

その際のチェックの視点は以下「資料1」の通り。見ればわかるが基本的なものだ。


【資料1】点検手法

驚いてはいけない(笑)。基本的なことだが大事なことだ。
さらに、ブレークダウンして、チェックリストを見てみよう。その一部を抽出すると

<駐車場>
【項目】複数の箇所に駐車場が分散している場合各駐車場に他の駐車場の誘導案内がある:【視点】他にもっとわかりやすい設置場所はないか?
【項目】障害者用の駐車スペースがある:【視点】設置場所は最適か?

<利用者施設(屋内)>
【項目】各入口から施設内の各階・各所へ迷わず行くことができる:【視点】ルートの案内表示はわかりやすいか?

<利用者施設(窓口)>
【項目】利用料金は電子マネーやクレジットカードで支払うことができる

項目ごとに、それぞれの視点でチェックする活動であった。

東京体育館、どこが変わった?

「施設視察から気づいたこと -東京体育館と東京都美術館のケースー」という資料があり、東京体育館(千駄ヶ谷駅付近)の都政改革本部顧問のチェックがまとめられている。

以下「資料2」に示したのが、東京体育館の注意喚起表示の一例である。

 


【資料2】「施設視察から気づいたこと -東京体育館と東京都美術館のケースー」P6

これに対して、「注意喚起ポスターが数多く貼られ、全体の美観と印象を毀損している。(都有設備の宿命として、都民から何らかのクレームがあった場合、何らかの対応をせざるを得ないという事情か)」といった鋭い指摘が顧問からなされている。

クレームが来て、個別にその都度対応しているうちに、様々のパターンの注意喚起が積み重なってしまった現状への指摘である。現場はわかっているものの、色々忙しく、対応を重ねるうちにどんどんバリエーションが増えてしまって収拾つかず、基準を設定したり、統一したりする時間もないまま時間が過ぎてしまったということが想定される。

また、利用面についても、「新たな利用者を増やすには早朝利用など利用時間の拡大の検討が必要(過去に短期間(2週間程度)試行したことがあるが、人件費、燃料費等採算面等の課題から導入に至らなかった。しかし、追加料金制やプール水温の調整等の柔軟な運用のもとでの実施は可能ではないか)」との指摘もあった。筆者は施設利用者であるが、まさにその通り。同感である。

今回の改善の前と後の変化は以下「資料3」が示している。写真ではわかりにくいが、注意喚起を簡潔にしたということだ。


【資料3】「施設視察から気づいたこと -東京体育館と東京都美術館のケースー」P8

ただし、顧問の見識に疑問

とはいえ、改善は筆者の専門分野なので厳しいことを言おう。正直、プロとしての目から見て甘い、甘すぎる。問題は3つある。

①基準がない:「多すぎる」「わかりづらい」など感想・所感としてはいい意見だが、単なる利用者目線の指摘でしかない。何と比べ「多すぎる」のか。基準が示されてない。

②サービス品質と魅力の定義がない:施設の魅力アップというが、サービスレベルや魅力が未定義。施設のあるべき姿を議論しないのなら外部顧問の意味はない。筆者が40年近く利用している芝公園について「公園としての認知度が低い」「増上寺、プリンスタワー、ホテルなどで分断されており公園の全体像を都民がイメージしづらい」などの意見は首をかしげてしまう。

③現場の「気づき」が引き出されていない:外資系戦略コンサル出身の外部顧問の方々の意見程度のことは普通、現場の職員は気づいているもの。現場の意見や改善提案が引き出されたようには感じられない。

今後、自主的・自律的な改革として所管施設の点検・評価と見直しを進めていくみたいである。「「高齢者」・「障害者」・「外国人」といった多様な利用者の視点により、点検・評価を行う」という点にも期待したい。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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