「人口減少時代」に「人生100年時代」を迎えることの意味


今この瞬間から、「100歳」まで生きることを考えたとき、その人生を「長すぎる」と思うでしょうか。それとも「短い」若しくは「ちょうどよい」と思うでしょうか。

政府は昨年9月に「人生100年時代構想会議」を設置しました。これは、「人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行うためのもの」だということです。(首相官邸HP 人生100年時代構想会議より)

そもそも「人生100年時代」という言葉は、ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が著書、「LIFE SHIFT」の中で提唱した言葉です。

人生100年時代構想会議のメンバーでもあるリンダ・グラットン氏によれば、現在、日本に生まれる子供の半分が100歳以上の人生を生きると考えられているといいます。さらに同氏によれば、人生100年時代はこれまでの「フルタイム教育」、「フルタイムの仕事」、「フルタイムの引退」という3つのステージからなる従来のライフモデルが、今後は「マルチステージ」へと変化するとしており、そしてそのステージが変化する契機において「学び直し」が必要となり、個々のスキルアップが必要になるというのです。

確かに、65歳で引退しても人生100年と考えればその後の35年間のリタイア生活は長すぎます。平均寿命だけではなく健康寿命が延びるなら、引退後若しくは引退年齢以後の仕事や、その仕事の為の学び直し、生涯に渡る学習も必要になるでしょう。これについて、「いつまで働かせるのか」、「いつまで学ばなければならないのか」等の意見も散見されます。

しかし、望む・望まないに関わらず、寿命が延びるのは「結果」でしかないので、あとは自分が人生をどう生きるか・どう生きたいかを考えるしかありません。

健康寿命が延びることによって働き方や学び方が変わり、今後さらに長くなる人生が様々なステージに変化していくことは歓迎すべきことではないでしょうか。リカレント教育(生涯にわたり教育と就労を交互に行う教育システム)が日本社会に浸透することができるなら、将来的に「時」を重ねることで起こりうる人生のステージチェンジが前向きで発展的なものになるのです。

ただ、この「人生100年時代」に日本社会が順応できたとしても、それだけでは人口減少時代を迎えている日本の諸問題がすべて解決出来るわけではありません。

超長寿社会を前提に、高齢者の定義を引き上げることで「生産年齢人口」を増やし、それによって働き方や学び方が変わり、個々のスキルアップやイノベーションが起こることによって、社会・経済の成長力や生産力が向上することは十分に期待できます。ただし、「増加した生産年齢人口」も、「学び直しでスキルアップした人たち」も、日本では「全ての年齢層の人口」がいずれ減少してしまうのです。
参考 総務省統計局HP 人口の推移と将来人口

日本において人口減少の進行を止めることは難しいかもしれません。しかしその進行速度を「抑制」することは可能なはずです。そしてそれにはきちんと「作用する施策」が必要であることは言うまでもありません。

「人口減少時代」に「人生100年時代」を迎えることは歓迎すべきですが、「低出生率に呼応する施策」と「超長寿社会に呼応する施策」が同時に日本社会へ作用しなければ、そのいずれの効果も不十分なものになってしまうかもしれません。


高幡 和也


1969年生まれ。28年に渡り不動産業に服務し各種企業の事業用地売買や未利用地の有効活用、個人用住宅地のデベロップメントなど幅広い数多くの業務を担当。不動産取引の専門士としての視点で、人口減少時代において派生する土地・住宅問題に対して様々な論考と提言を発信。

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