ロンドンの宅配tech業界の熾烈な競争とは


東京でもAmazonやUberEatsがよく知られているように、ロンドンでも宅配サービスは日々進化し、また激しい競争が繰り広げられている。

まずは最大手のAmazonで、日本と同様、Prime会員だと月6.5ポンドの会費で当日配送、40ポンド以上の買い物だと2時間以内の配送が可能となり、他の小売、宅配業者の脅威となっている。同じく食品・日用品の宅配で有名なのはOcadoで、下記画像のようなAIを駆使し高度に自動化された配送センターを持つことで広く知られている。配送料は約3-7ポンドで、75ポンド以上の買い物で無料となる。注文を受けた商品の配送センターでの自動集配システムや宅配ルートの最適化により、配送コストをギリギリまで下げることができるのが強みとなる。(画像はBBCのウェブサイトより)

これらに真っ向から勝負を挑むのが大手スーパーのTescoで、Tesco Nowのアプリでは約8ポンドの配送料で1時間以内の食品・日用品宅配サービスを提供する。Tescoは宅配スタートアップ企業のQuiqupと協力してTesco Nowを実施するが、いかに配達員の手作業や待機時間を減らし、AmazonやOcadoのような効率的なオペレーションを進められるかが課題と言われる。

同様に食事の宅配アプリも広く普及している。UberEatsと同じく有名なのはDeliverooで、ファーストフードチェーンやレストランの食事の宅配に強みを持つ。蓄積した注文・宅配データの分析により、配達員の効率的な配置、待機時間の減少によるコスト低減を可能にしている。またJust Eastもビジネス推進チームが強力なことで有名であり、地元の低価格帯レストランやテイクアウト専門店と広く提携しており、競合のhungryhouseの買収等にも顕著なようにさらなる規模拡大を目指す。

これらのサービスの一つのトレンドとしては、StuartやScootFleet等の宅配スタートアップ企業との提携により、宅配部門の縮小と注文プラットホーム事業への注力という動きがある。StuartはAPIの活用による顧客企業サービスとの連携を通して、様々なビジネスの宅配サービス実現を可能にしてきた。代表的な顧客としてはカルフールやピザハットが挙げられる。ScootFleetはユニークで、バイクの荷台の表示の電子化により、ロゴを自由に変えることで顧客企業の配達であることを明示することができる。こうしてJust Eatをはじめ様々な注文プラットホームやレストランの配達業務を柔軟に引き受けることで回転率を上げ、収益率向上を目指す。(画像はScootFleetのウェブサイトより)


ただしこうした分業化のモデルでは、飲食店からの僅かな手数料や約3-5ポンドの配送料を注文プラットホーム企業と宅配企業で分けることになり、利益率はかなり低くなり、規模拡大による収益化を目指した採算度外視の競争が生じやすくなる。スタートアップ企業としては、この競争に勝ち抜くためには事業拡大の好循環に乗る必要がある。強力なセールス、安定した事業運営を可能にする管理部門、十分な配達員、効率的なシステム、これらを可能にする豊富な資金力。こうした要素が一つでも欠けると競合に後れを取ることになる。VCも中途半端な金額の出資では勝てないことを知っているため、大規模な投資に賭けるかどうかの難しい決断を迫られると言われる。

技術や知財を軸としない分野での事業では、このような激しい争いが生じることが多くなる。こうした厳しい競争環境に目を向けると、Amazonがスマートホーム関連事業に積極的に投資し、宅配概念自体を根本的に変えてしまうことで勝者を目指そうとしている理由もわかる気がする。(画像はAmazon Keyのウェブサイトより)


山中 翔大郎
山中 翔大郎


国際機関等でのインターンシップや難民支援の社会起業立ち上げを経験。急速に進化するテクノロジーの活用による国内外の様々な課題解決を目指す。一橋大学大学院社会学研究科修了。外資系投資銀行、ケニアの投資ファンド勤務を経て現在はロンドンビジネススクール、ファイナンスコース在学中。

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