【第2回・ポリテック最前線】行政サービスは、公務員からコンピュータと「民」が担う時代


新宿区議会議員の伊藤陽平です。連載第2回目のテーマは、コンピュータによる行政サービスの変化です。国や自治体では、ゆりかごから墓場まで、きめ細かなサービスが行われています。一方で、少子高齢化により、財政的に課題を抱えながら多様化したニーズに対応することが求められています。これまでの行政サービスでは到底賄いきれず、将来世代の負担を前提にし、抜本的な問題解決が行われてきませんでした。この問題を解決する鍵は、コンピュータにあります。

RPAで公務員の仕事がコンピュータによって代替されはじめる

ICT化が進む中で注目されているのが「RPA」です。Robotic Process Automationの略で、ロボットによる業務自動化のことを指します。SFのような話ですが、2018年につくば市で導入が始まりました。

実際につくば市で現場を視察させていただいたところ、一般的なWindows端末がRPAによって自動的に操作されていました。これまでの事務処理を分析し、コンピュータにシナリオを登録することで自動化をしています。つくば市では、まず税務からRPAを導入されました。特定の時期に業務が集中することで残業が発生するため、職員のワークライフバランス向上という効果を期待してのことです。

さらに、コンピュータによる業務自動化は事務作業に限ったことではありません。例えば、以前の連載の中でも書かせていただいたEdtechに関連するサービスは、教育行政ですぐにでも実用化可能なものばかりでした。さらに保育の分野では、子どもの様子をセンサーで感知して通知するIoTサービスも開発されています。保育以外にも、障がい者福祉、高齢者福祉の分野でも、コンピュータの活用が進むでしょう。

テクノロジーで、「民」でも政府機能を持てる時代に

コンピュータによって、市民や企業など「民」も力を持ちました。行政サービスのメリットは、お金を一箇所に集め効率的に運用できるということです。例えば、図書館は先進的なサービスでした。本の多くは、購入して読んだ後は、常に必要とされるものではありません。読み終わった本は本棚で眠ることになりますが、図書館という仕組みによって、一冊の本を多くの人とシェアして読むことで、無駄が無くなります。しかし、この素晴らしい仕組みも、図書館一択というわけではありません。新宿区では図書館による貸出に、1件あたり1,200円かかっています。民間サービスと比較しても、決して合理的な事業とは言えません。漫画喫茶など図書館が担っていない分野は市場化され、さらにインターネットや電子書籍が普及したことで、月額1,000円程度で小さな図書館以上の作品にアクセスできる定額制の電子書籍サービスなども存在します。国や自治体が行ってきた、「多くの人とつながり、お金を集め、サービスを提供する」ことは、インターネットの普及以降はハードルが急激に下がりました。

国や自治体の信用についても、Webサービス上のレーティングや仮想通貨など、新たな手段が登場しています。そして、一見テクノロジーと関係のなさそうな分野でも、社会起業家と呼ばれる人たちが、これまで国や自治体が担ってきた課題解決を行う動きも加速しています。どれもテクノロジーと無関係ではなく、Webサイトによる集客、クラウドファンディングによる資金集めなど、ICTの恩恵で民間で事業化されています。

公務員のスキルセットを見直し、未来を見据えた改革を

これからは、人が担っていた仕事がコンピュータへ、そして行政が担っていた仕事は民間へ、と変化が起こります。しかし、私が申し上げたいのは、今すぐ公務員を廃止するということではありません。行政サービスのあり方がテクノロジーによって見直され民間で担うことになる、とお話をさせていただきましたが、行政職員や市長や議員などの政治家の仕事が完全になくなるわけではありません。

コンピュータも万能ではありません。ICT化や民営化により、コストが増大するリスクもあります。つくば市でのRPA導入は、実務を熟知し自動化のシナリオを作成するICTスキルを持っている職員がいたから可能でした。

公民連携についても、コストを下げて質が高まるという前提ではなく、その背後で多額の税金が投入され、パフォーマンスとして行われることも増えてきました。そのため、民間が担うために環境が整っているのか、判断をする必要があります。事業が上手くいく場合、そもそもキーマンが公民連携の対象となる分野のビジネスモデルに精通し、市場性を見極める力を持っていることも多いです。

民間出身の職員や外部人材は前職の経験があるため、業界内でしか共有されていない情報も熟知していることがあります。また、政治側からも民間の視点を取り入れることができます。特に自治体の首長は選挙で選びますが、民間時代のバックグラウンドを活かして公民連携を進める事例があります。もちろん、民間で新たなサービスが提供可能となった場合も、過去の実績にとらわれてしまい、身動きが取れないことは多いです。行政側の意思決定が必要で、それが適切なタイミングでなければ、成果を出すことは難しいです。それらを見極めるのは、テクノロジーを含め時代に合った新しいスキルセットを持った人たちです。


伊藤陽平
伊藤陽平

新宿区議会議員
30歳最年少の新宿区議会議員。立教大学経済学部経済政策学科卒業。大学在学中にIT企業を設立し、代表取締役に就任。Webアプリケーションの開発やWebマーケティング事業を展開。 ブロガー議員として365日年中無休でブログを更新し、多数のメディアへ寄稿する。また、日本初のAI議員として機械学習を議会活動で活用している。

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