スポーツ現場のリアル・第3回 スポンサー圧力論の虚妄~ハリルホジッチ監督解任記者会見



ハリルホジッチ監督が、4月27日(金)日本記者クラブで会見しました。

「こんな形で去ると考えたことはなかった。考えつく限り、最悪の悪夢。人間として深く失望した。私に対するリスペクトがなかったように思う」

と発言しました。激しく、厳しい物言いをする方であり、一部には暴言王などとも揶揄されてい人でしたが、大人の対応をした形です。

コミュニケーション?

オフィスに監督室を作ってもらい、ほとんど毎日こもって、熱心な仕事をしたハリルホジッチ前監督。その、強化委員とのコミュニケーションに対して。

「何か問題があるのなら会長が監督に聞いてきてほしかった。ショックを受けているのは前もって誰も何の相談もなかったこと」

と発言しています。解任された方にはしっかり話さないといけないし、解任に反対した国民にもしっかり話してほしいですが、会長の権限でもあり、話せない事情もありますので、そこは何とも言えないところです。

日本サッカーはどこにいくべきか。どういうスタイルでいくのか。ハリルホジッチさんのサッカーではあまりに技術信仰の強い日本サッカーとはスタイルが相いれないこと、特に選手との間で考え方の違いが大きくなったということでしょう。ハリルホジッチさんの縦に早いスタイルは、体が強靭なアルジェリア代表の選手はできても、日本人で大丈夫かという疑念がどうしても残りますから。

しかし、指導者としては素晴らしい面もありました。サッカー日本代表のGK川島さんのブログから拝借しますが、指導者として、選手に成長を促したことがうかがえます。

「フランスでもヴァイッドは厳しい監督で有名だ。
クレイジーだと言っても誰も驚かないだろう。
でも、彼自身の選手時代にも自分自身にも厳しかったこともとても有名だ。

だからいつだってヴァイッドの要求は僕にも厳しかった。
褒められたことは一度もない。代表も外された。
お前は代表に呼ばれる立ち場にないとも言われた。

でも、キャリアの中で、成長するきっかけをくれたのは、
いつだって自分にNOと言ってくれる人だった。

ある監督が言ったことが僕の心にいつも残っている。

「真実というのは心が傷つくものだ、
でも、それから耳をそむけてはいけない。」

ヴァイッドはとても厳しかった。
でもいつだって選手が成長する事を考えている監督だった。
その裏にはいつも選手を想う愛があったし、
ピッチの外ではお茶目なおじいちゃんのようだった。」
「川島永嗣オフィシャルブログ」2018.4.9記事、原文ママ)

と言っています。ハリルホジッチさんのすばらしさがわかります。槇野さんも同様の発言をしています。

広告代理店・スポンサーの圧力?

世論の一部には、サッカー協会がスポンサーの圧力を受けた、受けてなくても忖度したとの意見が根強くあります。アディダス社と契約する香川さん、様々な企業との関係がある本田さん、広告代理店の電通などを想定した意見ですが、個人的にはムリクリすぎる論理だと思っています。

実際、スポンサー、特に電通は商品差替えや広告作り直しで大迷惑受けている模様です。第三世界の政府ではないですし、スポンサーする企業が協会に特定の選手の選出を強要する、指示する、お願いする、忖度する、お願いしなくいてもにおわす関係というのは現代では健全なスポンサー関係ではないですし、無理な構図、ほとんど陰謀ものだと思っています。

あるJリーグチームの方に伺いましたが、チームとスポンサー間では全体的な経営についての意見交換はあっても、選手起用など含めたチーム方針についてのスポンサーの介入などありえないとの回答でした。
他の方にも聞きましたが、スポンサーとの契約書にもそんなことは書いてないそうです。

もしそんなことが万が一あったとしても、そのことが判明したら企業のほうでも相当の問題になるでしょう。あれだけタレントの不祥事に対しても敏感になるのに、そんな行為はリスクが非常に高く、できるわけがありません。

大企業としての品格、社会的責任も果たせないということで、世論の強烈なバッシングが予想されますし、そもそも巨額のスポンサー料を払う以上株主などに対して説明がつきません。そもそもコンプライアンス違反です。将来、私はサッカーチームのスポンサーになりたいと思っていますが、チームに対して「金も口を出す」ような行為は、社会人としても不適格ですし、健全な関係ではないことを知っています。普通の経営者なら絶対にできません。

ということで、構造的にそんなことができないことが理解できたでしょうか。

田島会長へのリスペクトはどこに?


確かに年の事業収益が200億円、代表関連事業収益に限定すると51億7875千円です。

スポンサー料は代表を含んだ全体で
・アディダス・ジャパン社:年間32億円
・キリングループ:年間25億円

となるとさすがに膨大ですが、だからと言ってという話です。

また、今回のバッシングは、田島会長へのリスペクトも書いているように思えます。それなりに組織の長としての権利を行使したまでであり、組織と関係上、オープンにすると色々困る事情もあるのだと思います。感情的に「ハリルホジッチさんへのリスペクトを欠いている」と批判している人に「田島会長へのリスペクトは?」と問いたいところです。

とはいえ、西野監督のもと、本田さんが中心のチームになることでしょう。星稜高校時代から「ほとんど監督」と言われ、サッカーの内容を仕切っていた男です。リーダーシップとチームを思いやる人間です。
自身でも「強みはマネジメント」とその指導力に優れる本田さんの逆風下でもチームを引っ張り、活躍をしていただくことを心から期待したいです。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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