シルバー民主主義と戦うこと・第3回 維新の補助金改革と弱いものイジメ


4月3日から6日までの4日間、皇居ランナー奉仕団を構成しているお友達に誘われて皇居と赤坂御苑への勤労奉仕へ行ってまいりました。勤労奉仕とはいうものの救急車を呼ばれない程度に健康であれば、枝や落ち葉の片づけ、草むしりなどのちょっとしたボランティアの他、天皇皇后両陛下や皇太子殿下のご会釈があります。高齢になられても微笑みを絶やさず各団体とお話されるさまは得難い経験です。日ごろから仲良くされてる方々と団体を構成して参加してみてはいかがでしょうか。神道に限らず宗教や思想が限定されているわけではないようですよ。

それでは都構想住民投票でのシルバー民主主義批判の中で、高齢者が置かれていた当時の環境の説明を続けます。

補助金カットによる弱いものいじめ

橋下さんが打ち出した大阪維新の改革は、非常に細かなところまで目配りされ、後は都構想の実現により後世のリーダーが就任時よりスムーズにリーダーシップを発揮できるよう整備されようとしていました。大阪府と大阪市において重複している事業や施設がどんどん統合され、民営化、民間委託も進んでいきます。

当然そういったところで正規に雇用されている人たちは大反対します。しかしながら同じ事業や施設の中での非正規雇用で働いていた人たちは、それまで大きな差別的待遇を受けていたため、反対は大きな流れとならず、有権者の支持を増していきました。今月からも橋下さんから引き継いだ現市長が自民、公明とも合意し、地下鉄の民営化が始まってます。

統廃合というわかりやすい改革に対して、反対派は大きな流れをなかなか作れるものではありません。得てして戦争もそんなものと思いますが、ごくごく少数の方たちがなんとか自分たちの保身、あるいは利権の拡大を狙い、広く受け入れられるようなわかりやすい理由を作って、自分たちをコアとして大きな流れを周囲を巻き込みながら作っていくものです。

そこで改革に反対する人たちが目を付けたのは補助金改革です。補助金をもらっている人たち、補助金による無償サービスを受けている人たちは、それが広く薄くであれ、他の人たちと比べて困難な環境にあります。自力で資金を調達するのが大変だ。働くことができない。生活が苦しい。移動もつらい。そんなところにメスを入れるというのは何事だ!お年寄りは大切にしろ!弱いものいじめをするな!というわけです。統廃合で煮え湯を飲まされていた共産党から自民党まで既存政党の大連合が出来ました。

無償と補助金は不透明化しやすい

無償提供サービスや補助金事業は不透明化しやすくなる習性を持っています。当然ですが、そのサービスや事業の源が自分のお金ではなく、他人のお金だからです。

無償であるがゆえに、

●誰がどれだけ使っているのか。
●その無償サービスや補助金事業の運営が公正に運用されているのか。
●コストに比べてベネフィットは見合っているのか。

こういったことを監視するモニターコストを最初にカットしてしまいます。無償だからみんなの役に立っているだろう。無償だからデータを取らなくても当然困っている人の役に立っているに決まっているだろう。困っている人の補助金だから当然社会とって良いことに決まっている。そういったデータを取らないゆえに根拠がはんぜんとしない思い込みに近い考えが、なおのこと事態を複雑化させます。

無償事業、補助金では監視コスト、モニタリングコストが重視されない。

この理由は官僚システムの欠陥からきています。行政の執行自体が法的根拠に基づいていたりするので、第三者ではなくシステム内部にガバナンスが組み込まれています。司法なんてリソース不足で役に立ちません。そもそもの人材も予算も行政に対して不足しており基本的には司法に頼ることなく、ガバナンスが完結するように設計されてます。奇特な人だけが行政訴訟を起こすんだよねぇ。みたいなシステムが既に醸成されているのです。

そんな中、無償事業を行う場合はその無償サービスを担う人たち自身にガバナンスが任されるのです。その事業が適正に運営されているかという独立した監視機構が存在しないか、あってもリソースが不足で限界があり奇特な人、告発する勇気のある人頼みの運任せで機能不全となるのです。

これが有償ならどうでしょうか。わずかであっても有償の場合は、そのサービスを受け支払う人たち一人一人が厳しい目でそのサービスを監視します。有償度合が高ければ高いほど、自分の払っているお金の対価はこれでいいのかと常時考えるでしょう。無償サービスにはそれもないのです。

すると、無償サービスや補助金事業の中身はどうなる?

残念ながら、なんでもアリとなってしまうことが多いのです。誰がどれだけ使っているか気にしなかったり、その事業がどれほどのベネフィットを受益者にもたらしているかをきっちり測っていかなくなると、給与負担を考えない人員増から始まりコネ採用、これがまかり通ると派閥化する採用利権となり臨時職員すらコネ採用となります。また外注のずさん発注にはじまり、特定業者・団体の利権化とつながります。

この関門をクリアするとそれをコアとして我も我もとどんどん増殖していきます。そして、目的が定められていない補助金は本当にどうでもよいことに使われて、目的が定められている補助金はなんとかして根拠の薄い理由をつけたり、領収書を偽造して付け回したりするようになります。

モニタリングコストを軽視した無償サービスや補助金はとても高くつく。

このように困っている人たちにとって、どれだけ助かる事業であっても、こういう輩がワンサカと集まってきたら、もうそれは事業として成り立たなくなります。

便益より害悪の方が多くなり、本当に困っている人を見つけてはえっちらおっちらと余計な雇用、余計な発注を重ね、旨味を占めてさらに余計なことを増やしていくのです。困っている人たち助けになっているからと最低限のサービスを高値で受注し、最低限のコストしかかけないサービスが高齢者や障害者への無償サービスや補助金事業で目白押しになります。これが私の実感です。

一体誰が得をしているのでしょうか。高齢者や障害者がのんべんだらりとホクホク顔で楽して生きてるなぁとはとても思えません。シルバー民主主義批判に見られるように、シルバー世代が実質的にそれほど優遇されているとはいえないのではないかということです。

補助金をいちどやめてみたり、有償化度合を調整してガバナンスを強化する。

これが橋下さんの行った補助金カットの意義であって、決して弱いものイジメではなく、弱いものや困っている人たちをネタにして税金を貪っていないかどうかを確認し、そういった輩がいた場合は掃除しにいくという意味を持ってきます。どこの自治体でもやっているように文句の出ないところからそぉーっと予算を少しずつ削って他事業の費用を捻出するというやり方がありますが、主に行政上がりの首長によってよく行われている手法です。

これなら私も本当に弱いものを単にイジメてるだけだよなぁと感じるでしょう。しかし、大阪府と大阪市のように理念やプロセスをはっきりと明示した上で行われる改革は、有権者の信頼を持つことができるのではと思われました。

残念ながら、都構想の住民投票は高齢者の理解と説得がうまくいかず、弱いものイジメという高齢者にしわ寄せがくるという懸念を払拭することができずに反対多数となりました。この結果はシルバー民主主義に負けたのではなく、橋下さんの改革をわかりやすく説明するパワーが少し弱かったというように考えております。

未来を志向するにあたり、シルバー世代を敵にまわす必要はなく、余計なところに線を引く必要性を感じません。これからはシルバー世代が標的なのではなく、シルバー世代のためといいながら税金を食い物にしている輩が敵なんだともうちょっと範囲を絞って設定すべきであると考えます。その上でやり過ぎた有償化は正していけば良いのです。

大阪市は敬老パスとして無償としてきた地下鉄とバスによる市営交通の乗車に関して、2013年7月に年間3000円の更新料、2014年8月に都度50円の有償負担とし、年間80億円余りの支出となっていた無償事業にメスを入れました。また2011年、2012年と単年度26億円の赤字を出してきたバス事業を2014年には8億円の黒字に転換させました。地下鉄も民営化され改革の成果が見通せるようになった今年は年間3000円の更新料が廃止されます。

現在の都度50円負担での市の支出は15億円程度となっているとのこと。数字を並べると小難しく感じますのでなるべくさけたいのですが、一度有償化してお金の流れを把握して改革した結果、無償サービスからの改善例としては目を見張るべきものではないでしょうか。

80億円の支出→15億円へ=単年度65億円の改善
26億円の赤字→8億円の黒字へ=単年度34億円の改善
地下鉄民営化→プラスアルファ
(65億円+34億円+プラスアルファ)×複数年度=改革の成果

計算あってるでしょうか。バス事業だけで20年で500億円の赤字出してきた事業と無償化で本当に必要とされていたのか不透明だった年間80億円の支出と合わせて、年間100億円の収支改善となるなんてすごくないですかね。本当に計算合ってるでしょうか。笑。こういうのを見るとどう考えても敵はシルバー民主主義ではない感じがいたします。

モニタリングと情報公開の一つの案として

また、行政の下に情報公開の機能をつけるとどうしても、それは恣意的、意図的を問わず最小限しか公開しないような力が働きます。今も揺れてる国の文書改ざん、文書隠しもそうですが、国会の下にある国会図書館の法律を改正して情報公開機能を強化することと並行して、有権者により近い地方議会の下にも情報公開機能も持った部局があってもいいのかなと考えますがいかがでしょうかね。

おまけ

おまけとして、北海道の札幌市と滝川市で介護タクシーを不正利用したという、無償サービス悪用とモニタリングの軽視が重なって被害額が膨れ上がった例を一つあげておきます。やろうと思えばここまでやれるみたいなすごい例で、しっかりとモニタリングして洗い出せば他にも出てくるのではないでしょうか。ここでも敵はシルバー民主主義ではありませんね。

滝川市生活保護費不正受給事件


飯田佳宏
飯田佳宏


1973年3月生まれ、北海学園大学卒業。自営業の傍ら、株式や不動産の売買で生計を立て、衆議院議員公設第一秘書として議員会館にて事務所の統括、農林水産委、法務委、災害特別委などにて質問作成・政策立案等、2年間勤務した経験も持つ。2017都議選では日当制による議員報酬ゼロ、職業議員ゼロ、しがらみゼロを掲げ、地方議員ゼロの会を組織したが、擁立候補は全員落選した。現在、タメコ(株)、(株)ログバー、(株)ディ・エフ・エフ等、スタートアップ企業のマーケティングアドバイザー、顧問等を務める。

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