花を活かしたまちづくりの可能性


【出典】イタリアの花(筆者撮影)

花を見ると美しさに感嘆し、心が和む。

その一瞬の輝きにはかなさを感じ、何かを思いだし、人生や生死をそこに感じる人も多いだろう。花や植物の存在はわたしたちの生活を彩っている。何気ない散歩の時、何かのお祝いのとき、葬儀のとき、デートのとき・・・そこには花がある。花が我々人間を祝福してくれているように思えるときもあり、見守ってくれているようにも思えることがある。

花は香りを

昔も今もよい「香り」のほとんどを植物に依存している。ラベンダーは紫の花だけではなく、茎や葉にも「香り」の成分を含んでいることが言われている。また、バラ、ジャスミン、イランイランの花は香水の原料にもなる。

しかし、どこまで花がこの社会において大切にされているのだろうか。自治体には「県の花」「市の花」「町の花」が定義されている。その地域の代表的な花が選ばれ、市章にも花がモチーフにされているところもある。

しかし、どれだけの人が知っているのだろうか。

自治体の取り組みとしては「花いっぱい運動」「アダプトプログラム」として、市民が公園や道路へ植樹をする事業、児童生徒の教育プログラム、著名な花を中心にした観光事業、公共施設の維持管理における植栽剪定などがある。また、自治会や企業なども活動している。

【出典】京都の桜(筆者撮影)

しかし、花見が観光地化していたり、植物園がある場合を除き、一部の人を除いてどこまで認知されているのだろうかと感じることも多い。花・植物がどのようにして生息したのか、地域においてどういった意味があるのか、花はどういった存在なのか、歴史との関係など地域社会全体に共有されているようには思えないのが現実だ。

花の「価値」、そして「効果」

花は様々な効果をもたらす。個人にもたらす効果としては、花を見て感情が和らぐ、癒される、育てることで植物への思いやりが育まれる、いきものへの愛や感謝の気持ちを持てることなどがあげられる。また、理科・生物学といった教育的な面もあげられる。自然界における花の位置づけ、機能・役割など環境の学習にも役立つ。さらに花についての文学的知識の向上にも役立つ。

花を咲かす植物に目を向けてみると、愛媛大学農学部の仁科弘重氏らが掲げている「グリーンアメニティ」という考え方がある、これは、オフィス,アトリウム,家庭などで,室内に植物を配置して人間の快適性を向上させることと定義される。仁科氏らの研究によると、植物の影響の大きさは植物の好き嫌いや種類によって異なるものの、植物を育てることが人間の心理に及ぼす影響は確認されている。

視点を変えて地域社会にもたらすものとしては、上記の事業に参画することで道路や公園などの美観・景観が守られる、緑が守られる(緑被率向上)といった効果がある。こうした活動を通じて住民のコミュニケーションのきっかけになるなどの効果もあげられる。さらに、地域の花・植物が未来に引き継がれることで、歴史・伝統の保持に貢献し、訪問者の印象に残ることで観光資源として認知される可能性もある。

このようにはかりしれない可能性を持っている。心理面に限って言うと、前述した以上に人間の心理や行動に影響を及ぼしているのかもしれない。無意識的に人々の心や感情に影響を与えているようにも思われる。コミュニケーションのネタとして、我々の社会を豊かにしているのだ。

そして、学校教育で触れる機会の多い子供、一部の植物に対しての愛が深い市民以外に花の可能性をどのように広めていくのか。

自治体は花の存在を知り、考え、活用をこれまで以上に考えていってもいいのではないか。花・植物は環境学習、生涯学習、歴史、観光、政策、都市計画、様々な面で使える資源である。

【出典】東大寺のフジ(筆者撮影)

自治体の総合計画、景観やまちづくり計画、環境基本計画などの策定においても、どのようにして花が生息したのか、地域においてどういった意味があったのか、伝承上どのように語られていたのか、住民にどのように認知されているのかなどを知り、花をどのようにしてまちの景観に彩りを加えるかなどが議論してもらいたい。

特に東京都と「花」

特に、都会のジャングルになってしまっている東京。美しく良好な景観づくりを世界的に先導するための理念や施策方針を構築して欲しい。

そもそも美しさ、景観の良好さの定義は不明確であり、漠然としている。議論を重ねたとしても、なんとなく可もなく不可もないものに落ち着くものになりがち。・
ただ、東京五輪を踏まえ、新しい東京の在り方が歴史的にも問われる中、コンクリートと江戸文化だけでは寂しすぎる。

景観政策において、都民の感覚・美意識が反映されていないと思うからです。民間の開発が進みすぎていて、あまりに早い変化に住民が戸惑っている人も多い。「こんなもんか」「仕方ない」という理解を多くの都民はしていると思う。しかし、景観は人の心に無意識的に影響を与えるので、都民の声や感覚・美意識といった部分を可視化することで変わってくる。

さらに、現在の「東京らしい」景観では、愛着心や愛郷心が持つのが難しい面もある。だって花もすくない、コンクリートと建築と広告にあふれる街を好きになれようか。

愛郷心と「花」

「ブルースト効果」というものがある。

香りを嗅ぐ事により、その時の記憶や感情が蘇る現象のことである。「におい」は大脳辺縁系を経ないで記憶を支配する海馬領域や感情を支配する偏桃体に直接的に伝わるため、「フラッシュバック」のような症状を示すようだ。

だからこそ花なのだ。花の匂いは我々の記憶にダイレクトに訴えかける。つまり、過去のいい思い出、切ない想い出などひっくるめて思い返せるのだ。まちの記憶と結びつき、過去とつながる。

最後に、人間と植物が共生することが心の安定や安寧に役立つことはいうまでもない。東京都景観計画概要版を見ると、非常に素晴らしい取り組みをしている一方、都民には内容が理解されにくいと思う。

花や植物の権利も考えて欲しいがそれができないにせよ、花をいかしたまちづくりを期待したい。


西村健


人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。 慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで行政・民間の業務改革、能力開発を支援してきた。独立後、プレゼンテーション向上、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。

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