インドの「最新」仮想通貨事情


インドの最新仮想通貨事情

インド政府は仮想通貨に対して何度かコメントを出していますが、規制や税制などは確立されておらず議論を呼んでいます。今回は、過去の政府のコメントを時系列で追いながら、インドにおける仮想通貨規制の最新状況を確認したいと思います。

尚、海外では一般的に仮想通貨は”Crypto-Currency”と呼ばれ、直訳すると暗号通貨ですが、基本的には仮想通貨と同義です。(以下、 “仮想通貨”と表記します。)

2017年12月5日(インド準備銀行 プレスリリース)

インド準備銀行は、2013年から3度にわたって、仮想通貨取引に対して警鐘を鳴らしています。内容としては、仮想通貨保持者に対して、仮想通貨取引には潜在的に経済的、財務的、業務的、法的、消費者保護及びセキュリティの観点からリスクがあると警告しています。また、インド準備銀行としては、いかなる事業体・企業に対してもビットコインやその他の仮想通貨取引にかかるライセンスや承認を与えていないことを強調しています。

2018年2月1日(インド財務大臣 国家予算案スピーチにて)

以下の財務大臣のコメント(以下抜粋、英文原文)が、仮想通貨の今後の取り扱いについて注目を集めました。

“The Government does not consider crypto-currencies legal tender or coin and will take all measures to eliminate use of these crypto-assets in financing illegitimate activities or as part of the payment system. The Government will explore use of block chain technology proactively for ushering in digital economy.”

上記のコメントは、大きく3つのメッセージに分解して理解することができます。

1.インド政府は仮想通貨(Crypto-Currencies)を法貨として認めない

2.インド政府は非合法活動及び支払システムへの仮想通貨を利用したファイナンスを根絶するためにあらゆる手段を尽くす

3.インド政府はデジタル経済を推進するためにブロックチェーン技術の活用を積極的に検討する

本メッセージを順番に見ていくと、

1の仮想通貨を法貨として認めないというのは、他国政府(日本政府含む)と同様の見解で非常に一般的な内容です。

また、2についても、仮想通貨を含むいかなる手段においても非合法活動を支援することは取り締まられるべきであり、異論はないでしょう。

最後の3についても、デジタル経済推進のために積極的に先進技術の活用を検討するというもので、これも特に異議を挟む内容ではありません。

2018年4月6日(インド準備銀行 通達)

本通達は、タイトルも“Prohibition on dealing in Virtual Currencies (VCs)”となっており、インド準備銀行の規制対象となる事業体について、仮想通貨取引並びに取引を行うためのサービスを禁止するとしました。(以下抜粋、英文原文)

“entities regulated by the Reserve Bank shall not deal in VCs or provide services for facilitating any person or entity in dealing with or settling VCs.”

対象となる事業体については、3カ月以内に当該取引の停止を命じられており、物議を醸しています。

金融機関も監督官庁であるインド準備銀行の方針に逆らうメリットはなく、大手金融機関は仮想通貨取引所との取引もしくは口座維持・開設には消極的になっていくと予想されます。尚、本通達については既に仮想通貨取引所がデリー高等裁判所へ異議申立を行っており、デリー高裁はそれを受けてインド準備銀行に対して当該申立に対してコメントを出すように通達しています。

次回の審問は5月24日に予定されており、政府が何らかのコメントを出すとして注目されています。

今後のシナリオ

脱税などの不正資金が二重の経済を構築していることに加え、近隣の国家や国内に潜在的なテロリストを抱えているインド政府にとっては、匿名性の高い仮想通貨を野放しにしていくことは考えられないでしょう。一方で、広大な国土を有し紙幣の流通コストもかかることから、キャッシュレス・デジタル経済への移行は必至であり、政府が仮想通貨技術を活用すべく検討していることは事実です。

また、今後仮想通貨取引所がインド国内で生き残ることができたとしても、ユーザーに対しては厳しいKYC(‘Know Your Customer’/本人身元確認)が行われ、生体認証番号のアーダールなどの紐付けも必須になると思われます。仮想通貨取引所ビジネスは非常に儲かることは間違いないものの、規制が一夜にして変わったり、頻繁に改正が行われたりするインドでは、その舵取りは非常に難しくなりそうです。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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