The Hope for 2018 by Pacific Alliance Institute


下記は筆者が代表を務めるパシフィック・アライアンス総研の「2018年の世界の10の希望」です。これらが達成されることによって、世界経済及び社会は健全な発展を遂げることができることでしょう。また、希望はリスクと表裏一体の関係にあり、それらの希望が達成されない場合、それはそのまま世界のリスクとなって顕在化することを意味します。2018年が皆様にとって良い年となることを祈念いたします。

1.トランプ減税が促す世界的な善政競争

トランプ大統領と共和党議会が2017年末に可決した税制改革法案は、レーガン大統領による法人税減税のパーセントを上回る歴史的な税制改革となりました。世界の国々は一旦は静観している構えを見せていますが、再び法人税の減税競争に突入する可能性が増しています。

世界最大の経済規模を有する米国が大幅な減税策を講じることは、他国により低い税率で成果をあがることを求める善政競争を促すことにつながります。今後、更に他税率についても引き下げを求める動きが進展することになるでしょう。

世界の経済成長や市場経済へのアクセスは世界から貧困をなくすことに貢献する唯一の手段であり、税金や規制が少ない自由市場の拡がりがそれらの国々に浸透していくことは貧困に苦しむ世界各国の国民にとっての朗報となります。

2.世界的な好景気の継続による構造改革の機会

2017年では一部のメディアが主張していたトランプ大統領誕生による経済ショックの発生は全くのデタラメであったことが明らかになりました。むしろ、世界経済は未曽有の好景気に突入しており、少なくとも2018年中は好景気が継続するものと思われます。

好景気による労働需要の逼迫は、高度な技能者だけでなく単純労働者の不足にも繋がるため、世界中の移民などに対する敵対意識の緩和にも貢献し、表面的な政治的レトリックに関わらず、世界各国における労働者の移動は促進されることになるでしょう。

世界各国の中央銀行による金融引き締めペースも予想よりも早いものにはならず、各国政府は国内の政治経済改革に取り組むだけの時間が与えられることになります。好景気が継続する2018年中に政府機関のダウンサイジング、産業構造の転換、人的資本の再配置などに着手することが望まれます。

3.世界の旅行者増加による相互理解の促進

世界の海外旅行者数は2016年までの統計で7年連続増加・12.3億人となり、今年3月に発表予定となる2017年の結果も増加見通しとなっています。世界における旅行者の増加は世界の安定化、経済成長、相互理解の促進に関する重要な指標と言えます。

活発な旅行者の往来は経済・社会における血液の循環を意味しており、政府によって形成される偏狭なナショナリズムによる社会的な腫瘍を無くし、人々の精神を健全なものに保つことに寄与します。

2018年は好景気の継続によって旅行客数の更なる増加が望まれるものの、そのためには世界各国に潜む紛争の火種を上手に鎮火していくことが必要です。人の移動や資金決済に制限をかける政府の愚かな行為が健全な交流の阻害要因にならないように希望します。

4.仮想通貨の現実での利用拡大

2017年は仮想通貨の価値が飛躍的に上昇し、一般社会の中でも一定の注目を集めることになりました。各国中央銀行による法定通貨以外の仮想通貨が現実の取引に利用される機会が飛躍的に増えることになることは確定的な未来だと言えます。仮想通貨の現実社会への普及によって、世界の国々による中央集権体制の一端に綻びが生じることで、中長期的に人々の自由がより拡大することになります。

また、ブロックチェーン技術の進展は仮想通貨関連だけでなく、より広範な分野に拡大していき、自前のインフラストラクチャーを持たない企業が既存の図体ばかりが大きい企業を凌ぎ始める事例が現れることが予測されます。ブロックチェーン技術の進展はユーザーニーズというよりも技術進展が先行しているように見受けられるものの、その先には経済活動のパラダイムが大きく変わるきっかけを生み出すものと想定されます。

5.IoTの一般化の普及とロボット技術の進展

IoTが普及することによって、全ての家具や身の回りのガジェットが電子的に接続することは当たり前のことになり始めることになります。したがって、2018年IoTという言葉が更に注目されるとともに、2018年末には高齢者でもIoTの意味が理解できるほどに技術的な普及が進むものと予測されます。

また、ドローンや歩道走行ロボットなどの輸送シーンでの実用化を通じて、物流に関する環境改善が進展します。その他特定目的用のロボットが積極的に開発されることによって、未来の社会像の一端を描き出す取り組みが拡がります。これらの取り組みは少子高齢化が予測される先進各国にとっては明るい希望となるでしょう。

6.米国におけるオルト・ライトの影響力の減少

米国におけるオルト・ライトと呼ばれる保護主義的な政策を求める政治勢力の影響力が減退する可能性が存在しています。これらはスティーブ・バノン前首席戦略官が実質的に率いてきた政治勢力ですが、2017年12月に実施された米国上院議員補欠選挙で敗北し、その影響力の実政治への低さが露呈する形となりました。

2018年は米国中間選挙やメキシコ大統領選挙などが存在し、一時的に米国の対中国・対NAFTAに向けた強硬姿勢が取られることが予測されるものの、元々自由貿易肯定派が多数を占める共和党が連邦議会で過半数を占めた場合、トランプ大統領が主張する保護主的な政策傾向にストップがかかる可能性があります。ただし、共和党内の自由貿易肯定派が敗北し、オルト・ライトと米国民主党が議席を増やすことになれば世界の保護主義化は加速することになります。

7.北朝鮮問題に関する米中協力の可能性

北朝鮮の核弾頭を搭載したICBMが再突入技術を完成させるには、専門家筋でもあと2年程度の猶予が存在すると仮定されています。ただし、北朝鮮が再突入技術自体を完成させられないという見方はなく、北朝鮮が米本土に着弾できる核ミサイルを持つのは時間の問題となっています。外交的問題解決までの時間的猶予は限定されたものになりつつあります。

一方、米朝関係は急速に冷却化しつつあり、朝鮮半島有事において米国と中国の間で協調行動が行われる可能性が米国の安全保障専門家筋から中国側に提案されています。米国上院選挙州が製造業州であることから中間選挙を見据えた貿易問題の激化や台湾問題を重視するランドール・シュバイツァー国防次官補の政策的方向によって、米中関係は大枠としては厳しいものになっていくと予測されますが、両者の共通利益が唯一見いだせる地政学上の問題である北朝鮮問題への対応が速やかに協調して行われることに期待します。

中国側の反応は依然として不明であるものの、朝鮮半島有事が実際に米朝衝突によって発生することを想定することだけを想定するだけでなく、日本を含めた周辺国は地政学上の変動を伴う米中接近も可能性は高くないものの起き得るシナリオの中に含めておくべきでしょう。

8.サウジアラビア問題の克服

中東における大きな不安定要因として、サウジアラビアとイランの対立を背景として、米国とイランの国際的な対立が存在しています。特に、米国共和党は対イラン意識が非常に強く、中東地域は2018年における最もリスクが高い地域と言えます。

特にサウジアラビアは自国内での急進的な政治・経済改革の問題が解決しておらず、強硬な外交姿勢はレバノン、イエメン、シリアらの周辺諸国との間に緊張感をもたらしています。既に親イラン化しつつあるそれら諸国への過度な圧力強化は、イスラム国の復活やアルカイーダらのテロリストを涵養する結果に繋がることでしょう。

サウジアラビアの国情が安定し、石油以外の経済政策が軌道に乗り、周辺国に対する盟主としての穏健な立ち位置を取り戻すことを望みます。

9.非効率・不透明な国際機関からの脱却・説明責任の強化

トランプ大統領が率いる米国政府との対立によって国連の影響力が低下しつつあり、英国のブリグジットはEUの官僚機構のあり方にNoを突きつけました。これは一時的には国際的な混乱を引き起こす可能性がありますが、中長期的には好ましい改革につながる可能性を持っています。

国連をはじめとした国際機関はそのガバナンスの透明性について、世界各国でほとんど議論されることなく、毎年のように各国政府からの上納金を召し上げてきました。しかし、それらの機関による指導に対して、各国の民衆が拒否の意思を示したことで、今後国際機関は一層の説明責任を果たすことが求められるようになります。世界各国でのエリート層の教育の普遍化によって、国際機関はかつてのような一部の特権エリートが情報を牛耳る組織ではなくなりつつあります。

10.非現実なリベラル系メディアの影響力の相対化

2016年大統領選挙から2017年末にかけて、トランプ大統領をめぐって欧米のリベラルメディアはありもしない世界破滅論をまき散らしました。そして、何かにつけて「社会の分断」という言葉を使って総括し、各国社会の中に存在するリベラルな言論以外への弾圧に努めてきました。

このような各国の主流メディアの非現実な論調に対し、先進各国での信頼感が大きく低下していることは数字が証明しています。これは民衆が愚かになったのではなく、民衆のほうが社会の現実を良く知っているからに他なりません。これは民衆がインターネットなどの多様な情報ツールを得て賢くなったことによる慶事と言えます。

リベラル系メディアは自分たちの価値観を絶対視して他の価値観を蔑視するのではなく、あくまでも自分たちが相対的な社会中に存在することを認識し、謙虚な姿勢を伴ったメディアに変化するべきでしょう。そして、多様な言論の中から人々が自らの価値観を構築して議論を交わす自由が拡大することを望みます。


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渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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