空き家問題を考える前に~責任の所在



出典:田母沢御用邸(筆者撮影)

先日愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から平尾さんが脱走した事件では、「空き家」が逃走の拠点に使われたと言われています。向島では空き家が1000軒と言われ、皆さん驚かれたことかと思います。

空き家問題、日本の「問題」ともいわれている言われている現象です。

・空き家の総数は、この20年で1.8倍(448万戸→820万戸)に増加
・空き家の55%が賃貸住宅
・個人宅の空き家数が激増
・空き家となった住宅の取得原因は、相続が半数以上
・空き家の所有者の約4分の1が遠隔地(車・電車などで1時間超)に居住
・現状の空家率は17%

出典:国土交通省『空き家等の現状について』ほか

こうした問題に対して、地方自治体の職員は色々アイデアを出して対応していて、非常に頭が下がります。地方創生の中で、頑張っている人、空き家の活用で頑張る人も知っていますし、本当にリスペクトします。「社会課題」と意識されることが多く、自治体での政策議論でもそうした議論をすることが多いものです。多くの自治体では空き家調査をやったり、現状把握の動きが盛んです。代執行についての足立区の助成制度などの先進事例も見られます。

空き家問題の深層

なぜ空き家が発生するのか、その構造を理解することが大事です。やはり、第一に、相続の問題、居住者の死亡や転居、相続人が居住しないことがその発生のきっかけです。
第二に、取り壊しにもお金がかかります。数百万円にものぼります。さらに、建物を取り壊すと固定資産税が跳ね上がります。中では固定資産税6倍にものぼるともいわれています。

地方自治体が所有者に適切な管理を求めようとしても、登記簿の情報が更新されておらず、現在の建物の所有者やその連絡先を確認できず、対策が遅れるケースも多いのです。
民法239条には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」という規定があるのですが、仮に、いや万が一所有権の放棄が認められれば、国所有になるそうなのですが、現実的に、実際のところは難しいようです。

あるアンケート調査で空き家状況について聞かれた人のうち、「特に何もしない」と回答した人が7割の現状です。「いずれなんとかしなければ」と思いつつ、上記の理由でずるずるしているうちに、対応が難しくなっているのが現状でしょう。

空き家がもたらすリスクは本当か?

空き家のリスク、地域へもたらす可能性としてあげられるのが以下のリスクです。

・建物倒壊
・火災発生
・犯罪発生
・不法侵入・居住
・ゴミ・廃棄物の不法投棄
・景観、草・木の越境

これをまとめれば、治安の低下や犯罪の発生、安全性の低下、雑草繁茂や不法投棄の誘発による公衆衛生の低下、景観の悪化や地域イメージの低下などということになります。

たしかに、駅から自宅まで15分、歩くとして、無人廃屋や草ぼうぼうの空き地だらけになるとしたら・・・。危なさは増すかもしれません。お金がないので街灯やカメラできちっと管理とはなりそうもないですし・・・。犯罪面はブロークン理論のように、危険性は増し、犯罪の温床になるかもしれません。ただし、街頭カメラや車載カメラが増え、10年後は犯罪も減るかもしれないなあとも思います。

しかし、本当に問題なのか?

そもそも空き家があって何が悪いのだろうと思ってしまうのです。中長期的な将来を考えなかった地主の方の責任で、ビジネスとしてはじめたものですし、家を購入した方が、将来を見据えて売却するなり対処すべきだと思います。
その方の責任を問わないで、社会的なツケを周りの人たちが支払う構造は、社会的、公共的な倫理としておかしい気がします。

厳しい言い方をすれば自分たちの認識不足・行動不足を社会的「問題」として取り上げるのは、どうなのかと思うのです。

「自己責任」という言葉を言いたくないですが、家を放置してしまったり、家の「終活」をするのは持ち主の責任ではないでしょうか。困った時だけ、行政を頼るというのはどういうことなのでしょうか。モラルハザードの典型例としか思えません。

行政ができること

地域の人から「空き家をどうにかしろ」と言われたら、まず、行政は持ち主に厳しく当たるべきだと思います。罰則化なりの検討、死亡届を受けたときに家族に対応を求めることなどできることはあると思います。とっとと所有権を放棄させる政策を構築するべきです。そして、空き家ビジネスなど民間参入を促進する政策を構築していくことです。

極端なことを言うと思われるかもしれませんが、私の率直な意見として、個人的には「野」「自然」に返せばいいと思います。そもそも、平城宮跡、廃寺などは朽ち果てていったではないでしょうか。歴史研究者によると、宮廷の異動に伴い、解体された古い建物の資材は一部は新たなところに持って行かれ、その他は住民が勝手に持って行って使ったといわれています。廃寺もそうでしょう。いつの間にかなくなりました。そのように規制をかえられないでしょうか。

財政破綻しかねない状態で、空き家対策に余計なコストをかけること、未来に負担させることには反対です。そもそも住宅を作ることで、そこに住む昆虫、植物、生物の権利を奪ってきました。これまで人間が帝王として自然界を支配、いや蹂躙していた訳ですから、そのことをわきまえたうえで、自然に戻すことを求めていくべきだと思うのです。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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