人工知能を活用して離れた場所の仲間と会いやすく!社会人大学院生として「Serendipity Spot」を開発、 船橋遼さんインタビュー



今回は、Hondaでデータサイエンスなどに携わりながら、社会人大学院生としてデジタルハリウッド大学院で学ばれた船橋遼さんにインタビューをさせていただきました。船橋さんは、多人数のコミュニケーションにおける課題を解決するために、“離れた場所にいる仲間と会いやすいスポットを“というコンセプトの「Serendipity Spot」というサービスを、人工知能技術を活用して開発されました。また、2018年2月に開催された、デジタルハリウッド大学院の成果発表会デジコレ8にも登壇されました。船橋さんの現在の取り組みや、社会人大学生としてどのように学び新しい挑戦をされてきたか、お話をお伺いしました。

川島
本日はよろしくお願いします。
まずはじめに、船橋さんの現在のお仕事について教えてください。

船橋
自動車メーカーHondaのIT本部に所属しております。そこでは、アプリケーションマネージャーとデータサイエンティストが私の主な役割です。 前者は、ビジネス企画から設計・開発・保守・運用に至るまでのマネジメントがメインです。後者は、社内データの活用方法の検討やそれらデータを分析することをメインとしています。分析にはTableauやRといったソフトを活用しています。

川島
Hondaに勤務されながら、デジタルハリウッド大学院に通い、今年3月に卒業されたんですよね。まずは、デジタルハリウッド大学院に入られたきっかけを教えてください。

船橋
はい。ビジネスモデルを構築するスキルと、それらをプロトタイプとして実装するスキルの向上のためです。
私は、大学時代に最適化問題の解決法に人工知能技術を活用する研究をしていました。人間では把握できない膨大かつ複雑なパターンから最適解(それに近い近似解)を瞬時にアウトプットしてくれることに感動しました。
加えて、WEBサービス活用のマーケティングアイディアコンテストで受賞させていただいた経験から、ICTを活用して社会を豊かにしたい、゙世の中に新しい価値を提供していきたい“と強く感じていました。しかし、想いはあるものの、企画力、実装力の不足が課題で、通常の仕事とは別にスキルを向上させる必要があると考えました。そこで、デジタルハリウッド大学院への入学を決めました。ビジネスの第一線で活躍する先生方から学び、現場で本当に活きる企画力や技術力を身につけ、想いを体現できる大学院だと、説明会や入学試験を通して確信しました。入学後は、先生方はもちろん、志の高い学生の仲間や事務局の方にも大変お世話になりました。

川島
そして大学院で2年間学び、「Serendipity Spot」というサービスを開発されました。サービスについて、教えてください。

船橋
コンセプトは、“離れた場所にいる仲間と会いやすいスポットを“です。「このお店おいしそうだから食べに行こう!」ではなく、たとえば、「地元から上京してきた仲間と久しぶりに会って、ただ会って話したい。」や「空いた時間で少し打ち合わせしよう!」など、会うことを目的にした待ち合わせは、少なからず存在しています。その際、会うための場所やお店を決めると思いますが、仲間と調整して都合の良い場所を見つけることに、思っていた以上にストレスがかかると課題を感じました。この課題は私の経験もそうですが、同期・研究室の仲間からも共感がありました。だから、“目的地“ではなく、“会って話そうなどの目的“から、私たちにとって会いやすいスポットをシンプルに発見できるWEBサービスが必要だと考え、開発しました。

川島
どのように場所やお店を決めているのでしょうか。

船橋
他のサービスとの一番の違いになるのですが、本サービスは駅名やお店などの目的地を入力することなく、会ってお茶したいなど目的に合った場所を、利用者の位置情報から決定するようにしています。
路線検索サービスもナビアプリも目的地までの最適なルートを教えてくれますが、会って話すという目的のための場所を自分たちで決める必要があります。その課題がシンプルに解決されることが、本サービスの提供する価値です。
具体的には、集まる直前の場所を利用者に入力してもらいます。現在は入力フォームですが、GPS情報を取得するなど、方法は今後検討が必要です。そしてその情報をもとに、入力された位置情報から目的のために適した場所を計算します。たとえば、「全員の移動時間が最小になること」かつ「一人あたりの移動時間も最小になること」など、数種類のパラメーターを多目的最適化のアルゴリズムで計算させています。適したAPIが無かったので、アルゴリズムはスクラッチで開発しています。私自身、大学時代はC言語での開発をメインとしてましたが、今回はよりリッチな実装が必要でしたので、Pythonを学び開発言語としました。企画・開発ともに本学の教授陣・仲間には助けていただきました。

川島
様々なものが便利に効率化されている時代だからこそ、サービス名にもある「Serendipity (偶然)」 は、ただ会うだけじゃない偶然が日常に刺激を与えてくれて素敵だなと思います。

船橋
そうですね。実は、複数人のコミュニケーションが取れるサービスというのも、今までありそうでなかったんです。
「Entertainment. It’s Everything!」(本学のDNA)ではないですが、複数人で集まるとき、今までは便利なターミナル駅などの同じ場所で集まって話していた時間が、これからは現在地などの切り口から、候補にも挙がってこなかったり、行ったことのなかったりした場所が偶然にも発見される楽しさを創ることも魅力です。このサービスを通して新たな価値を提供できればと考えています。

川島
今後、Serendipity Spotをどのように発展させていきたいですか。

船橋
現仕様では全員が集まりやすい場所を提案していますが、最適な場所というのは人それぞれで、それらのニーズにも多く答えていきたいと考えています。例えば、A、B、Cの3人が待ち合わせをするとして、Aさんがすごく忙しい時であれば、A さんに近い場所を考えたり、趣味や好みに応じて提案できるような、より最適なアルゴリズムも考えています。 そして、最終的な目的である「複数人のコミュニケーションをより良くする」ために、試行錯誤しています。
また、デジコレ8の際に、「あったらとても嬉しい」というお声をいくつかいただきました。今後は本格的に世の中に送り出して行きたいと考えています。会社の中の企画の1つとして出すなど、どのようなかたちで出すかはまだ検討中ですが、デジタルハリウッド大学院には研究員として残りますので、より良いサービスを提供していくために研究を続けたいです。

川島
学び続けることの重要性が増していますが、社会人として大学院に通い、仕事との両立をしながら研究や開発を行い、卒業をされるのも大変だったかと思います。ぜひ、これから今後学び直しをしたい、新しいチャレンジをしたいと考えている人にメッセージをお願いします。

船橋
Hondaの創業者の言葉に、「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である。」いうものがあります。ドラッカーなどの先人も同様の言葉を残していますが、弊社だからというわけではなく、私自身とても好きな言葉です。もともとは企業哲学を指していますが、個人にも置き換えることが可能だと考えていて、私は“価値を生むためには理念と行動の双方がなければならない”という解釈をしています。
その言葉を拝借しますが、世の中に価値を生むために必要な要素は3つあると考えます。
1つ目は技術的スキルです。これはプログラミングなどですが、少なくともプロトタイプを実装するために必要不可欠です。行動するために必要です。
2つ目はリサーチスキルです。これはデータ分析スキルや統計的スキルですが、そのサービスやアウトプットが本当に世の中かに必要されるのか、また世界を幸せにするのかを検証するために必要不可欠です。これも行動するために必要です。
最後になりますが、3つ目は、世の中をもっと良くしていきたいという情熱や熱い想いです。これは理念に値しますが、学び直したい、新たなチャレンジをしたいと想いを抱いている時点で理念を持っていると考えています。この記事が、その想いや理念を価値へ変えるための行動へ繋がるきっかけになれば幸いです。

川島
素晴らしい言葉ですね。船橋さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

船橋
ありがとうございました。


川島京子
川島京子


1989年東京都生まれ。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所リサーチアソシエイト。Creative Smash株式会社代表取締役。2008年、明治大学在学中に インターネット上の仮想世界「Second Life」にて音楽ユニットをプロデュースし、企業とタイアップしたバーチャルイベントを実施。メジャー音楽レーベルに勤務を経て、24歳で独立。国内最大級の3Dプリンタメディア等ものづくりやクリエイティブに関わる事業を展開。

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