今の時代に市役所の庁舎建設はあり?


ハコモノ、街のシンボル、無駄の象徴、記憶に残るレガシー・・・。

市役所・町役場の庁舎建設。これほどに住民からの評判が悪い政策はない。「我々の税金で立派なものを作りやがって」など、嫉妬と怨嗟など複雑な感情が入り乱れる。

先日、新庁舎建設工事の中止を掲げて近江八幡市長に当選した小西理さんが「工事契約の解除を通告した」と発表して業界では大騒ぎになっている。
庁舎建設、ここ数年、首長選挙の争点になることも多い。

防災の拠点として必要であるし、職員の働き方からして職場環境は重要である。無意識的に心理に影響を及ぼす。働き方改革にとっては非常に重要だ。

他方、膨大な予算が必要となる。ここでは計算しないが、1人当たり結構な金額の税金が使われる。最近は国からの支援も期待できない。なので、住民からしたら納得いかない人も多いだろう。多分、住民に意識調査・アンケートを取ったら、80~90%くらいが反対することだろう。

最近更新時期を控えているため、建設の動きが散見される。ただし、耐用年数が過ぎ去っているまま耐震大丈夫か?的な自治体もあり、問題を深刻化させる。

誰も言わないが、莫大な工事になるため、ゼネコンなど選挙の支援する側の「期待」も絡むからややこしい。

また、庁舎を氷見市のように、体育館を大規模改修して、住民が集ってワークショップができる会議室を増やし、「フューチャーセンター」として活用したりするところも出てきた。

私の意見は正直どっちでもない、条件付き賛成・反対

私の意見は正直どっちでもない、条件付き賛成・反対という立場だ。
どちらかというと、私も巨大な庁舎を建設するのではない、新たな方向を模索べきと考える。住民が庁舎に行かなくてもすむ行政を目指すべきだと考えているし、増加する空き家や空きビル・テナントの活用、事務についてはRPAや情報システムで効率化すればいいのだと思う。そもそも「お上」が建築物を作って権威を誇ることに心理的に違和感を感じるし、民主主義的な価値観からしてどうなのかと思うし、時代に即していないと感じられる。海外、特に欧州の市庁舎を見てみてください。日本のような豪勢なものはあまり見ない。日本の「お城」の中に役所があるイメージのところも多い。

【出典】トリノ市庁舎(筆者撮影)

ただし、マネジメントの面で見ると、庁舎があることでの能率アップも軽く見ることはできない。会議で打ち合わせすること、コミュニケーション・情報共有のスムーズさ、問題解決への対処など支障が出てしまうことも事実。なんとも難しい。

しかし、本当に必要か

横浜市では新庁舎建設が始まる模様。関内駅前から、みなとみらい線馬車道駅に直結した場所に移転するみたいだが、土地代を含む総工費はなんと850億円。地上32階、地下2階の高層ビルが新設される模様だ。

大きい自治体では、「かっこいい庁舎を建設したら、採用試験の倍率が上がった」と言われるくらい、職場環境は重要なことも確か。いいのかわるいのか判断はできない。

しかし、今は景気が良く、建設費も高いから、今でなくても、このタイミングでなくても、というのは誰もが思うことだろう。景気が下降してきて、公共事業としてやるのならわかるのだが・・・。

地方創生の起爆剤に

このように、誰もが答えが見いだせない状況だ。それぞれの市の事情があるので、どうすればいいのか、悩む関係者も多いだろう。

筆者は地方創生と庁舎建設と相反するものをつなぐ発想はできないかと考えた。

筆者案は

・庁舎を住民協働で作ってしまう
・ゼネコンがかかわること、地元の大工ができること、素人でもかかわれることを役割分担して、希望する人全員が、庁舎の建設に関わり、ワークショップを進めながら作っていく

住民はブロックを置くだけでもいいし、柵を作るのでもよい、自分のできる範囲で何らかの形で参画してもらっていくのだ。

過去にある町でこうした活動を行おうとして失敗した事例はあったと聞く。専門家以外の人も参画できたら、みなで集いながら仕事をすれば、まちが1つになる。

そもそも「古墳」だってその建設に免許や法律があったとは思えない。

【出典】箸墓古墳(筆者撮影)

建設の過程で参画できれば、庁舎に愛着が湧く。そして、庁舎内に住民協働のスペースを置いたり、ワークショップができるようにしたりすればより愛着は増す。

出会いの場、協力の場、そして住民もふらりとよれて参画できる。共同体再生の場になるかもしれない。

シビックプライドを持てるようになるための「場」としての庁舎建設を模索して欲しいものだ。


西村健


人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。 慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで行政・民間の業務改革、能力開発を支援してきた。独立後、プレゼンテーション向上、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。

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