日本は「蚊帳の外」ではなく米国の「蚊帳そのもの」だ


日本外交が「蚊帳の外」か否かということについて、安倍政権が世論動向に敏感に反応して国内向けの積極的な広報活動を行っています。

【安倍晋三首相インタビュー】詳報 「日本は蚊帳の外ではない」「日米の絆が北朝鮮を動かした」

「蚊帳の外」論こそ、金正恩氏の手のひらだ

その結果として、「日本は蚊帳の外」論は北朝鮮による世論攻勢の一環だという主張が保守界隈では広まっているようです。そのような主張にも一理ないわけでもないし、日本が積極的に情勢を作っているとする安倍政権の主張も全否定するほどのこともありません。

しかし、あえて言うなら現在の日本は「蚊帳の外」か「蚊帳の内」かという議論よりも「蚊帳そのもの」と言ったほうがより的確だと思います。つまり、北朝鮮という「蚊」が持っている核の防波堤となる「蚊帳」です。もちろん、蚊帳の内には米国がいることになります。

日本が北朝鮮に対する圧力を低下させないことは基本的に正しい方向性だと思います。なぜなら、北朝鮮が核を廃絶する可能性は極めて低く、現在および将来に渡って日本の脅威として存在し続けることはほぼ明白だからです。

米国が北朝鮮問題に本腰を入れた理由は「蚊帳に穴が開いて」米国本土にまでミサイルが届くことになったからです。朝鮮戦争が終結してきたが長距離ミサイルを一時的に放棄して形だけの非核化という状況が生まれることになった場合、何が起きるのでしょうか。それこそが日本にとっての最悪の事態だと言えるでしょう。

日本は米国が主張する内容をそのまま繰り返すばかりであり、自国の拉致被害者すら独力で取り戻すことができません。米国大統領や国務長官に現政権のメンツを保つためのリップサービスを言ってもらうためにその意向に従うばかりです。そして、自国にとって明白な脅威である核の問題について自力で解決することすらできない有様です。

イランの核武装についてサウジアラビアは再三に渡って批判し、イランが核武装するならサウジは核武装する、と公言してきました。サウジはNPT加盟国であるため、その発言がどこまで本気かはわかりませんが、日本も当然そのぐらいのことを述べてしかるべきでしょう。イスラエルはサイバー攻撃でイランの核開発施設を破壊し、イラクの原子炉を爆撃したことすらあります。一部の有識者とされる方には日本は「非核国」であることを主張せよ、という方もいますが、この期に及んでお花畑はいい加減にしてほしいと思います。

安倍首相は「日本は米国の蚊帳そのもの」になっていることで外交上の役割を果たしていると思っているようですが、一体どこの国民を代表する首相なのかを今一度考え直すべきではないでしょうか。仮に北朝鮮に核が残る状態で事態が収束した場合、安倍政権は外交の失策の責任を取って総辞職するべきです。

筆者は左翼系の識者のように「圧力を回避して対話路線に転換せよ」と述べるつもりはありません。むしろ、国際社会による北朝鮮への圧力維持に全力を傾けるとともに、仮に日本にとって不利になる対話路線に転換するなら「核武装も辞さない」という更に強い姿勢を取るべきと考えます。現在の米国にとってのみ都合が良い中途半端な圧力路線は下策であり、米国も含めた関係国が日本の主張に耳を貸さざるを得ない環境を作ることが必要です。

安倍政権は「日本が蚊帳の内」にいるつもりなのかもしれませんが、米国から見た場合の日本は「単なる蚊帳」にしか過ぎず、自国の意思と決意を持たない指導者など最初から相手にされるわけがありません。筆者は安倍首相が米国議会での上下両院議会演説で行った国辱モノのポチ演説を耳にした時から、この政権は本当の意味で米国からも他国からも相手にされない政権であることを確信しています。

日本人は今自らが「蚊帳」として扱われていることを認識し、この屈辱的な状況からどのように脱していくべきかを真剣に考えるときがきていると思います。

 

 


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

渡瀬 裕哉の記事一覧