AWS Summit LondonとAmazonの強さとは


AmazonのクラウドサービスであるAWSの大規模イベント、AWS Summit London 2018が5月9日と10日の二日間の日程で開催された。イベントでは複数の分科会があり、その内容もエンジニア向けのセッションから事業開発担当者向けのものまであり幅広い。今回はその中の一つであるスタートアップビジネスに特化した分科会、AWS Startup Dayに関してご紹介したい。

この分科会では、どのようにスタートアップ企業がAWSを活用できるかという点が主なテーマとなる。各セッションでは、Deliveroo、Starling Bank、TransferWiseやBabylon Health等、ロンドンを代表するスタートアップのエンジニア部門の役員等が登壇。AWSの活用により、インフラ関連の投資を最小限に抑えることができ、自社サービスの発展にリソースを配分でき非常に助かったという話や、アイデアの実装からトラブルの対応等の様々な場面で、多くの実績を持つAWSチームからのアドバイスに支えられたという話が聞けた。

中でも興味深かったのは、ロンドンの広告企業、MirriadのCTOによるプレゼンテーション。テレビ視聴者の減少等により厳しくなる広告ビジネスの現状に対して、Mirriadはコンテンツと広告の融合を実践する。その仕組みは、映画やドラマの各シーンで現れる広告媒体となり得る物体への広告掲載を通して、自然に視聴者へ広告を提供する形態をとる。何が広告媒体として活用可能か各シーンをAIで分析、特定し(ビルボード、車、飲食品のパッケージ、ボトル等)、それらをカテゴリーごとに分け、広告掲載企業のニーズとマッチングさせる。各スタートアップ企業がこうしたユニークなサービスを展開できるのも、AWSのAIに関するインフラがあってこそだと説明された(画像はMirriadのウェブサイトより。シーン内の新聞紙面を広告掲載に活用した事例)。

また非常に勉強になったのはAmazonのイノベーション部門のヘッドによる社内カルチャーに関するセッション。Eコマースの分野でも、送料無料、一時間以内の配送、30分以内の配送等、顧客のニーズは常に進化し続ける。なぜAmazonはこうした進化に対応し続けることができるのかに関して説明された。

一つ目はジェフ・ベゾスの有名なピザの理論で、一つのチームはピザ2枚で賄える人数の8人を越えるべきはでないとされる。このような少人数チームでは個々人は最大限の生産性を発揮できる。また意思決定もそこで完結する仕組みをとるためスピードも維持できる。興味深いのは、通常、企業では意思決定は一方通行で行われるため、一度承認が下りれば必ず遂行が必要となると同時に、承認までかなり時間がかかる傾向がある。しかしAmazonではそれは双方向であるのが自然とされ、状況に応じて決定事項の良し悪しも変化するので、その撤回も行われて当然とされる。こうして変更や失敗も当たり前とされ、従業員が委縮することなく挑戦し続けられるカルチャーがイノベーションの秘訣となる。

これは別の所で聞いたことだが、上記のような現場の仕組みに加え、人材採用の場面でもあるビジネススクールでは一学年で50人近くMBA生を採用し、2000万円以上の報酬を提示することも普通だという。また世界中のビジネススクールから管理職のポジションを毎年1000人近く採用しているとも言われる。この優秀な人材の層の厚さと、それを最大限活用可能な組織文化を見るだけでも、Amazonが強いのも当然と感じられる。

他にも、イベントではランチの時間や夕方の懇親会で、展示ブースでAWSのエンジニアに実際に相談できたり、またクラウドの活用に特化した出展企業の担当者と話せたりと有益な時間を過ごすことができる。業界の最新動向に加え、Amazonのカルチャーに関しても学べる、非常に内容の濃い、充実した二日間だった。


山中 翔大郎
山中 翔大郎


国際機関等でのインターンシップや難民支援の社会起業立ち上げを経験。急速に進化するテクノロジーの活用による国内外の様々な課題解決を目指す。一橋大学大学院社会学研究科修了。外資系投資銀行、ケニアの投資ファンド勤務を経て現在はロンドンビジネススクール、ファイナンスコース在学中。

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