海外旅行や選挙もできる。政務活動費を廃止しない限り腐敗は続く



新宿区議会議員の伊藤陽平です。今回は、政務活動費についてお伝えします。

号泣県議会議員が虚偽の城崎温泉への日帰り出張や切手代を計上して問題となった一件により、政務活動費という言葉自体を初めてお知りになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「第二の報酬」と揶揄されてきた政務活動費ですが、制度自体が非常にわかりにくく、有権者にも理解されにくいのが実態です。そもそも政務活動費とは、地方自治法の一部を改正する法律(平成24年)の施行により、政務調査費から改定された制度です。議員にとっては経費に相当するもので、調査研究に加え、その他の活動に対しても支出が認められていています。

政務活動費は数千円~数十万、廃止した議会も

議会によってその金額も様々です。例えば、東京都議会では月額50万円、新宿区議会では月額15万円です。都道府県、特別区、政令市等では高額になる傾向があります。メディアで不正が取り上げられる議会は、政務活動費が高額である議会であることが多いですが、一般的な市町村では数千円〜数万円程度とそれほど大きな金額ではありません。
また、政務活動費を廃止した議会もあります。例えば、小野市のように平成29年度から月2万円の政務活動費が廃止されました。

市議会のあらまし – 政務活動費(廃止) | 小野市議会

海外旅行と視察、選挙と議会報告など曖昧な境界線

例えば、政務調査の一環で視察を行うことがあります。現場を知ることを全否定はしませんが、本当に必要な税金の使い道であるかは疑問です。特に、新宿区など特別区の場合は市町村と制度が異なります。そのため、制度の異なる市町村よりも、まずは東京都や23区など同じ特別区の視察や政策調査を行うことが適切です。その場合、コストは交通費程度で済みます。
また、遠方の場合でも公共施設の見学等をのぞけば、自治体のホームページで資料を確認したり、担当課へ電話で確認することで調査が完了することもあります。そのため、必ずしも遠方の自治体や海外視察に政務活動費を支出する必要性は、それほど高くないと考えています。
昨年、香川県議会では、1,000万円の経費がかかる海外視察をテレビカメラが秘密裏に密着し、昼間からお酒を楽しむ様子などが報道され、抗議が殺到したこともありましたが、旅行との境目が曖昧な視察は少なくありません。

そして、政務活動費が抱える最大の問題は、調査研究のみならず、その他の活動へ支出ができることです。例えば、政務活動費を使って議会報告レポートを作成することは一般的です。しかし、顔や名前が大きく掲載されたレポートを一見すると、選挙チラシのようにも見えます。政務活動費での議会レポートの作成・配布は、多くの自治体で可能です。

私は政務活動費でチラシを印刷したことは1度もありませんし、全ての議員が選挙チラシのようなレポートを作成しているわけでもありません。ただ、新人は自己資金で政治活動や選挙活動を行う一方で、議会費が事実上選挙資金に流用可能である状況は問題です。
多くの議員は純粋な気持ちで議会活動に政務活動を充当されていると思います。しかし、結果として海外旅行や選挙に政務活動費が支出されていることになれば、制度上問題なく無自覚であっても、腐敗と呼ぶのが適切だと考えます。

政治家側のデメリット、会派の会計担当や議会事務局の負担も

そもそも政務活動費の適切な使途とは何か、正解はありません。そのため、政治家側にもリスクがつきまとっていることは見落とされがちです。先ほどの香川県議会の海外視察の件についても、本来は制度上は問題のないことです。議員には、勤務時間が定められていませんし、海外であっても視察を行ったことに変わりはありません。昼間や夜間問わず、お酒を飲むことも特に制度で禁止すべきことではありません。

政治と金の問題では、クリーンにお金を使ったかどうかはあまり関係ありません。政務活動費の領収書を洗い出し、最もインパクトの強そうな支出をピックアップし、適当なストーリをつくって印象操作すれば、多くの議員に疑惑をかけることは簡単です。たまたま指摘されていないだけで、多くの政治家は政治と金の問題を防ぐすべはありません。
今後、政務活動費の利用使途にさらなる制限がかかる可能性はありますが、程度の差はあれ政治の問題は繰り返されることになるでしょう。

さらに、政務活動費を制度として維持するために多大なリソースが発生しています。例えば、各議会ごとに政務活動費の細かい使い方について一定の取り決めが行われています。飲食など政務活動費で支出が禁止されているものを決めたり、公私の境目が曖昧な支出は按分という支出できる額に上限が設けられるなどの対応が議論されています。また、領収書の管理や関連書類の作成が必要になります。会計担当に加え、議会事務局の負担が発生しています。政務活動費のために多大なリソースを割くこと自体、本当に住民のためになっているのかは冷静に考えなくてはなりません。

議員報酬との一本化が望ましい理由

結論を申し上げると、政務活動費は不要な制度だと考えています。より正確には、議員報酬と政務活動費は類似する制度であり、統合することが望ましいと考えています。その理由は、議員報酬は兼業ができない公務員の給与とは異なり、生計費的な根拠が定められているわけではないからです。つまり、議員報酬にはすでに政務活動費の要素も含まれていると考えることができます。二重に活動費が支出されてるため、非常にわかりにくい制度運営になっています。

私は政務活動費ゼロの公約を掲げ、実際に前年度から全額返還に切り替えました。しかし、議会活動の質が落ちたとは感じません。そもそも、政務活動費によって賄われてきた取り組みが、本当に有権者が望んでいたものとは限りません。社会的にニーズがあることは、お金や機会が集まる可能性があります。実際に私も、ICTに関して調査研究を行いたいと投稿したことがあります。民間企業からお声がけをいただき、費用をかけずに必要な情報が手に入りました。また、政務活動費を使わないことで情報公開にかかる事務作業が減少し、議会活動の自由度も高まり、むしろプラスに働いていると考えることもできます。

政治と金の問題は、クリーンなお金の使い道を徹底するということでは、根本的な解決にならないため、制度自体を廃止しなければなりません。
また、事務コストが増大等の課題はありますが、議員報酬を廃止して政務活動費に一本かしたうえで領収書の添付を義務付けるという議会も一つの考え方です。

自身が受益者にも関わらず、議員のみで政務活動費に関する制度を決めていますが、改革が進まない原因とも考えられます。主権者も議論に加わり、政務活動費のあり方について議論が必要です。


伊藤陽平
伊藤陽平

新宿区議会議員
30歳最年少の新宿区議会議員。立教大学経済学部経済政策学科卒業。大学在学中にIT企業を設立し、代表取締役に就任。Webアプリケーションの開発やWebマーケティング事業を展開。 ブロガー議員として365日年中無休でブログを更新し、多数のメディアへ寄稿する。また、日本初のAI議員として機械学習を議会活動で活用している。

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