クールジャパン最前線~開発途上国のエンタメ難民の光景~ ・第6回 開発途上国に最適化されたビジネスモデルとは?


Bazaar Entertainmentの大和田です。当社はスマートフォンが爆発的勢いで拡大する一方、通信や決済のインフラが立ち遅れている開発途上国でモバイルコンテンツを提供するBazaar Platformを提供しています。

これまで、開発途上国ではユーザーのニーズは強いものの、通信インフラや金融インフラが発展していないことからコンテンツの供給が限られている、いわゆる「エンタメ難民」が発生している現実をご紹介しました。また、エンタメなら何でも良いのかというとそうではなく、ビジネスとして成立するためには、開発途上国の消費者の嗜好に適したコンテンツが必要であるという実例をご紹介させていただきました。

Bazaar Entertainmentを創業した当時、開発途上国の脆弱な通信インフラであってもゲームアプリを届けたいと考え、インターネット接続せずに、ゲームをダウンロードできる方法として、”Micro Data Center”(以下「MDC」といいます。)と呼ばれるハードウェアを開発しました。

WifiルーターにSDカードが刺さったような端末で、ゲームの入ったMDCをコンビニに設置させてもらい、ユーザーは通常のWifiのホットスポットと同様に、スマホからMDCに接続すると、ブラウザーが立ち上がり、その中に入っているゲームをダウンロードできるというサービスを開始しました。この仕組みならば、インターネット経由のダウンロードと比較して数十倍の高速でダウンロードが可能です。

そのMDCを数十店舗のコンビニに置かせてもらい、当社も積極的にプロモーションをしたのですが、全く数字が出ません。おかしいと思い、二週間後にコンビニに行ってみると、MDCが盗まれたり、壊されたり、電源が入っていなかったりなど、全く使い物にならない状態でした。そのため、管理の人間を雇い、毎日ルーティーンで回って管理してもらったり、たまにサボる管理人もいるので、その管理人をさらに管理したりするという状態が続いていました。

ニーズがあるのに、何でこんな苦労をしなくてはいけないのだろうかと思い、ある時にコンビニの店員に話をすると、「だって俺の商売じゃないし」と言われてしまいました。彼らからすると、外国人の商売に協力する理由も義理もないのです。

考えてみると、構造的に外国人とは、進出国で手にした富を本国に送金する経済的侵略者なのです。私が外国人であることは変えようのない事実です。そんな外国人ができることはビジネスをすることではなく、現地の方にビジネスをしていただく仕組みを作ることが重要なのだと考えました。現地の皆さんが儲かることをお手伝いしに来ているのですよ、という立ち位置です。

そこで、当社は MDCの役割を消費者に委ねるというビジネスモデルに転換しました。消費者の持つスマートフォン自体がMDCとなり、自分のスマホに入っているゲームを友達のスマホに直接転送できるという仕組みです。このように友達にゲームを配る人を我々はBazaar ディストリビューターと呼んでいます。

ゲーム自体は基本プレイ無料なのですが、ゲーム内で課金する時に、当社が発行するBazaar Goldを使っていただく必要があります。そのため、Bazaarディストリビューターは、当社のサイトから無料でゲームをダウンロードすると共に、当社からBazaarGoldを購入してもらい、購入したBazaarGoldをユーザーに現金で再販売します。

ユーザーはBazaarディストリビューターからもらったゲームを遊び、気が向いたらBazaarディストリビューターから現金でBazaarGoldを購入し、ゲームに課金をするという仕組みです。Bazaarディストリビューターは、ユーザーの課金に応じた利益分配を得ることができます。

この仕組みにより、ユーザーはアプリのダウンロードにインターネットを使わず、無料かつ高速に入手することが可能になります。また、クレジットカードが無くても10円単位でBazaarディストリビューターからBazaarGoldを現金で入手することができます。Bazaarディストリビューターは、利益分配があるため、責任感を持ちゲームを入手し、宣伝し、ユーザーのサポートを提供します。

思わぬ副次効果として、このように人の手を介してコンテンツを配信することで、開発途上国で最も効果の高いクチコミによるプロモーションが実現しました。「最近面白いゲームがあるから一緒に遊ばない?」といい、その場ですぐに友達にゲームを渡すことができるのです。結果として、GooglePlayでゲームを配信するよりも高いインストール成功率、継続率、課金率を達成しています。

当社のビジネスモデルは、開発途上国の通信と金融のインフラを補うだけでなく、Bazaarディストリビューターの所得増加に貢献するため、社会的意義があると考えています。実際、当社の取り組みを通じて、インドネシアの初任給の半分くらいをBazaarディストリビューターとして稼ぐ若者が出現しています。

インターネットのビジネスモデルの定石の一つとして、流通の中抜きを行い、価格を下げて顧客の獲得を図るというものがあります。その定石から考えると、当社のビジネスモデルは、Bazaarディストリビューターに利益分配をするなど、非効率なビジネスモデルと言われがちです。

しかし、開発途上国で成功しているビジネスモデルでは、周囲の人間を経済的に取り込み、エコシステムに欠けているピースを補ってもらうという包摂ビジネス(インクルーシブビジネス)が注目されています。

例えば、この写真。ペットボトルに入っているのは全てガソリンです。つまり、非正規のガソリンスタンドなのです。この非正規ガソリンスタンドのオーナーが正規のガソリンスタンドに行き、ガソリンを仕入れ、ペットボトルに小分けして再販しています。ガソリンスタンドの普及が進んでいない状況では、ユーザーは多少割高であっても、このような非正規スタンドでの給油を選びます。この例は、自然発生的に非正規流通が出来上がったものなのですが、近年、石油会社自体が、このような非正規販売店を支援し、彼らにも正規に流通を担ってもらうという取り組みが始まっています。

翻って、日本のコンテンツの開発途上国進出においては、コンテンツをただ売りつけるのではなく、エコシステム全体を俯瞰した、ビジネスモデルのグランドデザインが求められているのではないでしょうか。

Bazaar Entertainmentは、世界初(たぶん!)のインクルーシブモデルに基づいたコンテンツ配信モデルを提供する会社として、世界の「エンタメ難民」の方々に面白いコンテンツをお届けしてまいります。


大和田健人
大和田健人

Bazaar Entertainment Ltd.グループ CEO
慶應義塾大学政策・メディア研究科修了。大学院在学中より株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントでゲーム開発に従事。PlayStationの中国事業立ち上げメンバーとして2003年から約10年に渡り中華圏に駐在。マーケティング担当者として中国100都市、1000店舗の海賊版業者を訪問し、実態解明と正常化のための取り組みを実施。また、法律で輸入販売が禁止されていたPlayStationの合法化に向けて中国政府と交渉を行い、2012年に販売許可を獲得した後、同社を退社。1年間の放浪の後、2014年に開発途上国へのコンテンツ提供プラットホームを提供するBazaar Entertainmentを起業する。現在はインドネシア共和国バンドン市在住。

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