【第3回・ポリテック最前線】政治家が率先し、まず積極的に「紙」を廃止せよ


新宿区議会議員の伊藤陽平です。今回のテーマは、ポリテックを進める上での政治家の役割です。民間では、ディープラーニングやブロックチェーン等のテクノロジーを活用した新たなサービスが生まれています。新たなサービスを成功させるには、ただ流行りのテクノロジーを活用してサービスを立ち上げるだけでは上手く行きません。人々が抱える課題を発見し解決するという前提があります。

最も現場の課題を熟知しているのは、政治家自身

実は、現実世界にある課題を最も把握できる立場にあるのは政治家自身です。
ポリテックへの参入を考えるIT事業者からご相談をいただくことがあります。しかし、多くの場合は実現可能性の低いプランが多いです。そういった方々が当面も政治家の実務を知る機会が限られていることは、ポリテック業界への参入障壁の一つとなるでしょう。
ポリテックに挑戦される起業家は、こうした参入障壁をクリアするために、議員事務所や選挙事務所で短い間でも実務を経験積むことも珍しくありません。

一方で、政治家がテクノロジーを活用できるポイントを発見できるかどうかにも、個人差があります。さらに、政治家自身も古い慣習を当たり前に受け入れるようになってしまうことで、課題が見えなくなってしまうという問題があります。

ポリテックとは、株式会社によるビジネスに限ったことではありません。ベンチャー企業のように、政党がWebサービスを立ち上げる事例も出てきました。私は無所属で活動していますが、スタートアップ新宿という一人会派を活用し、ディープラーニングで区民意見の分析を行うなど、先進的な取り組みを行ってきました。このように政治家個人単位でもポリテックに挑戦することは可能です。
さらに、前回連載をさせていただいたエドテック(教育とテクノロジー)の場合、民間だけで教育にインパクトを与えることも可能でした。しかし、ポリテックの場合は、どこかのタイミングで政治家が動かなければなりません。

地味だけど、ネット回線の整備や紙の廃止が効果的

スタートアップの世界では、AIやブロックチェーンの活用が模索されています。しかし、政治の現場で仕事をしていると、驚くほどテクノロジーとはかけ離れています。まずは、紙と会議の廃止を目指す必要があります。

例えば私が区議会議員になった直後、議会事務局からのお知らせは、紙で個別に配布されるかFAXでしか受け取ることができませんでした。私はFAXを持っていなかったため、スマートフォンでFAXを受信できるサービスを契約し、対応することになりました。議会でも改善を求め、1年後にはFAXからメールによる情報共有が行われるようになりました。この程度の改革を行うだけでも合意形成が必要で、時間がかかってしまうのが政治です。

また、区議会でのパソコン等の端末を使用は、一部の会議を除いて原則禁止されていました。今では委員会室にインターネット回線が引かれ、ほとんどの会議で端末の持ち込みも可能となりました。まだパソコンの持ち込みが認められていない議会もあります。予算も必要ありませんので、最低限自身で購入した端末やルーターを持ち込むことを認めるだけでも、議会を活性化させることが可能です。

紙を廃止することで大きなインパクトを与えることができる最も典型的なイノベーションは、投票用紙を廃止するインターネット投票です。それに付随して、選挙に関する情報発信も重要になります。
民間で政治や選挙に関する情報発信をポータルサイトが存在しますが、実は自治体のホームページにも大きな可能性があります。例えば、新宿区のホームページ上にある選挙に関するコンテンツは、選挙期間になると通常の約72倍ものアクセスが集まります。ポータルサイト運営など主なコンテンツは民間に任せることが大切ですが、候補者のホームページやSNSへのリンクの掲載は、自治体のホームページでも有効です。

他にも、無駄な会議をICTで削減することも有効です。新宿区議会にも、資料を音読しているだけの形式的な議案説明など、無駄な会議があります。さらに、一般公開されている本会議では、質問も答弁も事前に用意した原稿を音読する場合も多いです。公開の会議で意思決定を行ったことを示すためだけに、形式的な会議が行われています。
文書質問という制度がありますが、書面上で質問し、インターネットで答弁を公開するだけでも問題ありません。全議員と幹部職員が一斉に集う本会議の場合、発言する議員や職員は限られ、1日中座っているだけの議員や職員も多く同席するため非効率です。

これらの改革すらまともに行われていないのが、議会の現状です。民主主義である以上、合意形成が不可欠です。ICTリテラシーや改革への意欲などは、人それぞれです。だからこそ、少数の意見を強引に通することは望ましいと考えていません。スピード感を求めることが難しいことは政治の弱点であり、日進月歩のテクノロジーとの相性の悪さにもつながっています。
起業家には、規制や慣習により参入障壁のある事業を避けるか、政治家の協力が得られる分野で事業に取り組むことのどちらかが求められています。ただし、まだ参入可能な領域が限られていることは否めません。

次回以降でポリテックに関する具体的なサービスをご紹介させていただきます。


伊藤陽平
伊藤陽平

新宿区議会議員
30歳最年少の新宿区議会議員。立教大学経済学部経済政策学科卒業。大学在学中にIT企業を設立し、代表取締役に就任。Webアプリケーションの開発やWebマーケティング事業を展開。 ブロガー議員として365日年中無休でブログを更新し、多数のメディアへ寄稿する。また、日本初のAI議員として機械学習を議会活動で活用している。

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