2019年インド下院総選挙を占うカルナタカ州選挙


2014年の総選挙から4年、インドは5年に1度の下院総選挙を翌年2019年に控え政局は徐々に緊張感を増していっています。2018年はインド国内の各州で総選挙の前哨戦とも言える州議会の選挙が予定されています。先般5月12日、ITで有名なバンガロールを首都にもつカルナタカ州で議会選挙が行われました。構図としては、現政権与党BJP(インド人民党)、最大野党コングレス(インド国民会議)、地方政党JDS(ジャナタ・ダル(世俗派))の3党での争いとなりました。

【出典】Times of India.comより転載

BJPは大幅に議席数を伸ばしたと言えるのか?

前回5年前の選挙では、40議席だったBJPは今回の選挙で104議席まで拡大し大幅に議席数を拡大しました。一方で、前回は単独で過半数以上の議席を有していたコングレスは122議席から78議席へと議席数を減らしました。BJPの勝利は国政与党のBJPへの信任と見ることもできますが、インドでは与党が選挙を戦うのは難しく多くのケースで議席数を減らしています。同州の前々回(10年前)の選挙結果を見ても同様の傾向を見て取ることができます。

一方で、得票率でみた場合にはBJP(36.2%)、コングレス(38.0%)、JDS(18.3%)と、既にコングレス単体でBJPを上回る得票率でした。議席数を増やしたものの必ずしもそれがBJP支持の結果であるとは言うことは難しいでしょう。

カルナタカ州首相はいずれの党から擁立するのか?

選挙後、州知事はBJPへ州首相擁立の機会を与え、Yeddyurappaが州首相として17日就任しカルナタカ州議会で指名選挙を行い過半数の支持を得られることを証明する予定でした。州知事から与えられた期限は15日間でしたが、早速19日に議会が招集され最終的にBJPは過半数を得られず即日Yeddyurappaは辞表を州知事へ提出することになりました。わずか55時間という2日間あまりでBJPが擁立した州首相は電撃退任したのです。

議会での指名選挙までの数日間は混迷を極めていました。コングレスがBJPが自党に有利な投票を促すために賄賂で買収を試みる音声テープを公表、コングレス党員議員2名が誘拐されたものの市内ホテルへBJPが買収交渉のためかくまっていたりなど、あからさまな買収工作の報道が飛び交っていました。最終的にはコングレスも、BJPからの買収交渉を遮断するために自党員をバスでリゾートへ移送し下界と遮断するという日本では考えられないような力技にでました。

BJP州首相の退任後は、速やかにJDSよりHD Kumaraswamyが擁立され、ここにコングレス・JDSの連立政権が誕生する予定です。

2019年下院総選挙はどのようなシナリオになるのか?

今回のカルナタカ州選挙で明確になった構図は、与党BJP対野党連合(コングレス+地方政党)という構図です。コングレスとしては適切に地方政党と調整を行い擁立候補や利害調整を行えばBJPを上回る勢力を構築できることを実証したと思います。

また、BJPとコングレスが対立していく場合、各々のリーダー、現首相ナレンドラ・モディ(BJP)とラフール・ガンディ(コングレス)の支持率も気になるところです。ここには面白い傾向があり、就任当初圧倒的な人気を誇ったナレンドラ・モディ首相も徐々に支持率が低下してきています。一方で、カリスマという点では見劣りのするラフール・ガンディは支持率が上昇傾向にあります。以下に、CSDSという政府機関の発行する調査のデータを紹介します。2017年に両社の差は35%あったのに対して、今年に入りその差は17%にまで縮小しています。

加えて、足元の原油価格上昇、上昇傾向のインフレ、ルピー安などのマクロ経済要因もさらにモディ政権にとっては逆風となる要因です。年末にかけてさらにインフレ率の上昇、金利上昇などが重なれば投票心理に大きく影響を与えることは避けられません。これらの要因から2019年の下院総選挙はBJPにとって困難な戦いになることでしょう。過去の総選挙の傾向からすると5年での政権交代というのはほとんど例がありませんが、次は年末に向けて次の州選挙の動向を注視していきたいと思います。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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