フィンテック最前線・第4回 海外上場の本邦仮想通貨が下落する理由


5月20日までに、年末年始に話題であったいくつかの日本発となる仮想通貨が相次いで海外の仮想通貨取引所に上場した。しかし、残念なことに、これらの仮想通貨は大幅に下落し、プレセール中の価格すらも割れてしまった。時価総額の変動たるや甚だしい限りだ。

到底、遵法精神があるとは思えないが、トークン発行体は、トークンセールスも違法だとは言われない期限で行ったし、上場もしたのだから、投資家には詐欺はしていなかった、少なくとも違法ではなかったと言えるようになったので、今となっては安堵の気持ちであろう。

一方、利益相反の対極にいる情報弱者である投資家は、有名人や一部上場企業であるからこそと価格上昇を期待したのに、当てが外れ、縁故募集の価格さえも大幅に割れてしまったという状況下にいる。

一見してみると、資金調達を行ったトークン発行体が加害者、期待が外れた“情弱”投資家が被害者の構図だ。果たしてそうであろうか?

確かに、トークン発行体には、多数の投資家からの期待に沿うような道義的規範はなかったと言える。しかし、今この底値圏の自社発行トークンを市場で買い戻せば、少なくとも発行価格とそれを大幅に下回った市場価格との差から、1)キャピタルゲインを得られるし、2)ホワイトペーパーで謳ったコンセプトを実現するための投資ができる自由を確保できる。私見では、そうするとは思えないが、少なくともその選択肢は存在する。

投資家は、中身をきちんと理解することもなく、また、上場してからのロックアップ程度の簡単なスマートコントラクトすらも実装できないような技術力のトークンを購入してしまったような情報弱者だ。

なぜ、この程度の情報弱者が、このような“まがい物”に手を出してしまったのかを分析してみると、昨年後半に噴き上がったビットコインのみならず、エイダ(ADA)などのアルトコインとされる“まがい物”の値動きに触発されたとしか思えない。すなわち、中身を吟味することもなく値上がり期待だけで購入したわけだ。

残念ながら、値上がり期待だけが存在することはなく、それと同程度の値下がりリスクが暗黒物質のように同時に存在していたことに気づかなかったのは、これらの情報弱者がそもそも投資判断を行うべき水準ではなかったとしか言えまい。

そもそも仮想通貨というのはブロックチェーン技術の一例であり、ブロックチェーン技術というのは仮想通貨に限らず極めて汎用性が高いものである。日本では、取り扱いを行える仮想通貨業者が定められ、また、取り扱える仮想通貨の種類も決まっている。これに対して、日本以外ではそうではない状態であり“まがい物”も混在している。“まがい物”が混ざっている比率は、99%を超えていると言われている。

ブロックチェーン技術者からすれば“まがい物”とされる仮想通貨も、ある一定の方々からはERC20というブロックチェーン技術を実装しているから“まがい物”ではないとされる。この意見は無視できないが、かかる技術は確かにブロックチェーン技術を使っているものの、中身のないスマートコントラクトであり、トークン発行体が掲げるコンセプトを実装しているものでは断じてない。

先日、試しに実験的にERC20を実装するトークンを作らせてみたところ、15分で作成できた。その上で、海外の取引所にお金を払って上場した、これもたった4時間程度でできた。すなわち素人でも、トークン作成から上場まで4時間15分でできるのだ。

では、なぜトークン発光体は、このような簡単なことを、わざわざスケジュールを組んで、素敵なウェブサイトを公開し、ホワイトペーパーを作成し、著名人やプロフィールが素晴らしい人たちを集めるのだろうか?それは資金調達のために他ならない。

トークンを作って海外取引所に上場させるだけであれば投資家がいなくてもできるのだが、トークンを作って、ストーリーを第三者に聞かせ、それを元に資金を調達し、上場したら、それで終わり、というのは上場をゴールとする詐欺的な資金調達でしかない。上場してからもコンセプト通りのことを果たして作っているか?果たしてそこに継続性は存在しているのか?残念ながら、99%はそれを行っていない。

実際に年末話題であったADAも、コンセプト通りのことを行わず、今も下落が続いている。このようなことでブロックチェーン技術が萎えてしまうのは誠に残念だが、何とかモラルある方々の手で実証を重ね、技術を確立させて、成功させて欲しい。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

鬼澤礼志の記事一覧