空き家は何が問題なのか:二種類の空き家問題を知ること


【出典】ぱくたそフリー素材

空き家問題と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。空き家問題を考える場合、まず、空き家の種類を知る必要があります。以下はその種類を大別したものです。

1.二次的住宅:別荘及びその他(たまに寝泊まりする人がいる住宅)
2.賃貸用又は売却用の住宅:新築・中古を問わず,賃貸又は売却のために空き家になっている住宅
3.その他の住宅:上記の他に人が住んでいない住宅で,例えば,転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など

上記の1と2は、その目的(別荘、賃貸・売却)を達成する為に空き家となっているものです。しかし3は他の「目的の達成」の為に空き家になっている訳ではないので、その管理が不全になりがちです。一般的に空き家問題とはこの「その他の住宅」を指すことが多いでしょう。

管理不全に陥った空き家は、屋根や壁がボロボロになり草木が生い茂り、様々な問題を引き起こします。例えば、防災性の低下(倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれ)、防犯性の低下(犯罪の誘発)、ごみの不法投棄、風景・景観の悪化など、その影響は多岐に渡ります。特筆すべきは、この種類の空き家(その他の住宅)の取得原因の半数以上が相続によるものだということです。つまり自らが何らかの利用目的をもって取得したものではなく、民法に基づく相続権によって取得したものなのです。自らが利用する目的が無い住宅を取得したのならばその住宅が空き家になるのもある意味、当然なのかもしれません。

上記のような空き家は外部不経済(周辺地域に与える経済的不利益)とその不動産の有効利用の機会損失につながるとされ、この解消に様々な政策がとられてきました。その中でも、もっとも大きな施策は2014年11月27日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」で定義された「特定空家等」について、強い公権力の行使を伴う行為が規定されたことです。

上記を簡単に説明すると、特定空家に指定されると行政側はその建物の所有者に対し、その住宅を(勧告のうえ)固定資産税の特例から除外したり、最終的には代執行(強制的に家屋や門塀・樹木等を除却すること)を可能にしたのです。除却費用等は所有者に請求するとはいえ、その回収が難しい場合は公費によるものとなる場合も多く、その賛否が問われる施策ではありますが、上述したように、空き家がもたらす外部不経済が継続することを防ぎ、危険な空家等の解消・除却に対する社会意識の変化を促したことは大きな意味を持つ施策だと言えるのではないのでしょうか。

ここまでは現在目にする機会が多い「その他の住宅」の空き家問題を取り上げましたが、筆者が懸念するのは既述した空き家の種類の内、2に分類される空き家(賃貸用又は売却用の住宅)に関する問題です。それは、この種類の空き家が「都市部」に多いことによってもたらされる問題だからなのです。

「東京ではその他の住宅の空き家が減り、賃貸用の住宅の空き家が増え続けている」

東京都では全国で増え続けている「その他の住宅」の空き家は減少しています。東京都都市整備局HPによると、“平成25年時点で都内に空き家は約82万戸あり、空き家率は平成10年からほぼ横ばいで、11%前後を推移しています。”とのことです。これだけを見ると東京都では空き家の発生に一定の歯止めがかかっているように感じます。しかし、注目すべきはその内訳と空き家の総数です。上記HPの「空き家の推移」を見ると、その印象が少し変わるのです。まず、2008年当時の東京都の空き家総数は75万戸で、そのうち賃貸用住宅の空き家は49万2千戸となっています。それが2013年になると空き家総数は81万7千戸まで増加し、そのうち賃貸用住宅の空き家は59万8千戸まで増加しているのです。つまり、賃貸用住宅だけ見れば5年間で10万戸以上の空き家が増加したことになります。それにもかかわらず、東京都における2017年の住宅着工件数のうち、賃貸用住宅は7万3千戸を超えています。これは前年比1.9%増で、7年連続の増加となっているのです。本年3月の住宅着工件数のうち貸家の着工件数が5,933戸であることを見れば、この傾向はまだしばらく続きそうです。

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計が正しいとすれば、東京都では2025年まで人口増加が続き、2030年から徐々に減少に転じます。その時、もし賃貸住宅の空き家が今のペースで増えているとすれば、その影響は多方向に及ぶでしょう。賃貸住宅市場はこれまでにない供給過剰状態に陥るでしょうし、それに伴う賃貸料の下落や賃貸住宅の市場価値が低下するのは想像に難くありません。さらに、賃貸用住宅が長期に渡り空き家になれば、その住宅は「その他の住宅の空き家」に変貌する可能性すらあるのです。

本稿で示したように、日本全体で見れば「その他の住宅」の空き家増加は「今の」日本にとっての社会問題であり、その為の施策が求められています。しかし、将来における日本の空き家問題は「都市の空き家」がその主題になり代わる可能性が大いにあるのです。


高幡 和也


1969年生まれ。28年に渡り不動産業に服務し各種企業の事業用地売買や未利用地の有効活用、個人用住宅地のデベロップメントなど幅広い数多くの業務を担当。不動産取引の専門士としての視点で、人口減少時代において派生する土地・住宅問題に対して様々な論考と提言を発信。

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