日曜持論「2018年は『脱輸入ポリコレ』元年に」


(日本テレビ)

2018年が明けて早速目に入ってきたのは、ダウンタウンの浜ちゃんがエディー・マーフィーの物真似をした姿を放映したことで、「日本メディアの人権意識の後進性だ」と社会起業家が問題提起したというニュースでした。

筆者の率直な感想としては、芸人のやることにイチイチ目くじらを立てる、教育委員会やらPTAのオバサンのような意見だなと辟易します。この手のポリコレ取締官が蔓延る世の中というのは実に息苦しい世の中だなと思う次第です。まあ、筆者も別の意味でテレビの小学生のノリの番組が面白いとは思いませんが。

日本もグローバル化が進んで在日アフリカ人の方がそれを見て不快に思った、というのが事の発端らしいけれども、それについてはそういう考え方もあるのか、と皆が学習すれば良いだけの話で人権後進国だと揶揄されるような話ではありません。

筆者は日本に外人が来る理由をイチイチ尋ねる番組のほうが毎日外国人観光客を近所で見かける時代に時代錯誤も甚だしい、と素直に思ってしまうし、人それぞれ疑問だったり不快に思ったりするポイントは違うものです。

とは言うものの、少なくとも日本国内では黒人差別の歴史はアフリカなどの植民地支配を持つ西欧人とは話が違うので、日本人にとってはグローバル化の中で既存の社会的文脈外の異質な文脈を有する人々の社会参画にどのように対応すべきか、という良いケーススタディになったのではないかと思います。ますます進展するグローバル化の流れの中で対応するかしないかは各テレビ局や芸人が自分で自然と判断すれば良いことで外部から規制を強制するような話ではありません。

閑話休題。

さて、今回、筆者が最低だなと思うことは、現在メディアで活躍しているリベラル系の知識人には、欧米で言われている言論を直輸入しようとする中途半端な知的レベルの人々が非常に多いことです。それが日本社会にどのように当てはまるのかを考えることもなく輸入した概念を徒に振り回す人が多すぎると思います。

たとえば、巷の運動家ならいざ知らず、それなりの肩書を持った知識人が安倍政権を新自由主義政権だと批判する言論を述べていますが、安倍政権は異次元緩和・機動的財政出動
そして民間企業への賃上げ要求、地方へのバラマキ、消費増税の事実上の決定を行った、世界基準ではリベラル、つまり大きな政府を志向する政権だったりします。実際、安倍首相本人ですら自分自身は世界基準で見たらリベラルだと発言しているくらいです。

日本のリベラルな知識人は、保守政権=新自由主義、という海外では常識の構図を単純に日本に直輸入して、リベラルな政策を推進している安倍政権に新自由主義のレッテルを貼って攻撃しています。海外の人たちが使用している社会的概念と対立構図を政治的敵対者を叩くためだけに何も考えずに表面的に直輸入するから、野党やリベラルの人たちは自分たちが何を批判しているのかすら分からないのです。

百歩譲って日本では小さな政府を求める政党が存在しないので、巨大な政府=野党、大きな政府=安倍政権、という図式で新自由主義のレッテルを貼ろうとしているのかもしれません。しかし、それはいくら何でも無理がある話だと思います。むしろ、彼らから筆者が海外から新自由主義やらの概念を直輸入するなと逆に怒られりして(笑)

この手の日本的文脈を踏まえないポリコレや社会的概念の輸入によって日本の知的空間は混乱しているのですが、海外で使用されているポリコレや社会的概念をそのまま輸入したとしても「それが日本の中でそのまま通用するのか」という一歩立ち止まる思考習慣はリベラル派の言論人には持ってほしいと思います。

そして、一般の日本の人々も欧米のポリティカルコレクトネスやその他の社会的概念はあくまでも彼らの文化の文脈に沿ったものであることを理解し、その良し悪しについて相対的に学習していくくらいの気持ちがほしいです。

欧米人のポリコレ文化は行き過ぎの面もかなりあるのでこれ以上彼らのポリコレを無批判に直輸入することはやめましょう。2018年がリベラルなメディアや知識人がおかしなことを話しているときに、「あっ、これは輸入ポリコレだわ」と分かる、そのような感覚が普及する年の始まりになれば良いなと思っています。

ところで、浜ちゃんやバラエティ番組の話に戻ると、テレビ番組の趣向の違いは見なければ良いだけの話ですし、むしろ「何で批判するほどそれを見てんの?」と不思議にすら思う次第です。小姑みたいな人たちが自分の好きな番組だけを楽しめるようにメディアの自由化・多様化を更に推進していくことが望まれます。


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渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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