大学改革~日大でさえ必要?(その2)


【出典】MIT(マサチューセッツ工科大学)、筆者撮影

日本大学アメフト部の問題が世間を騒がせている一方、世界では、「エドテック」の動きが進んでいる。教育(Education)に情報技術(Technology)をいれていこうもので、Urban Folksでも伊藤陽平さんが執筆されているのでご存知の方も多いと思う。

エドテックで大学教育は改革競争時代に

中でも注目を集めているのはミネルバ大学。講堂や教室は一切ない、授業はすべてオンラインで、しかも双方向で集中度・発言回数をチェックする、さらに、世界7都市のキャンパスを移動しながら学ぶという点、全寮制4年制大学の点など画期的なものとして知られている。

大学というわけではないが、Courseraなどのオンライン教育も花盛り。ここは、世界トップクラスの教育を世界中に配信されていて、最高峰の大学や組織とのパートナーシップなどもある。

こうした動きは日本にも波及している。先端技術ならUdemyといったオンライン教育で学ぶことも可能だ。筆者は人工知能のプログラミング技術をそこで学んでいるが、昔のe-learningを知っている筆者からすると、隔世の感がある。そのほか、ストアカ(ストリートアカデミー)といったスキルに絞った、双方向の学習システムもある。

こうしたエドテックの時代に、大学となると、旧態依然の授業も多い。大学の先生は研究の専門家であるが、学ぶ機会を与える専門家ではない。頑張っていて魅力的な先生も多いことも知っているが、学習効果の専門家としてそこは厳しい言い方をさせてもらいたい。

なぜなら、大学の先生はそもそも「教える力」の専門家ではないので、彼らに授業の質や楽しい授業を求めるのもなかなか難しいものなのだ。そうしたトレーニングを受けていないので、属人的な能力に期待するしかない。

大学経営の2018年問題

大学経営はかなり厳しい。2018年問題と呼ばれる問題に今年直面することになる。18歳人口は「30年には118万人と再び減少」、局面になり、「大学進学率は50%台後半で頭打ちにあり、収益を学生の授業料に依存する大学にとって、18歳人口の減少は経営を直撃する死活問題」ということだ。

私立大学の入学定員充足率は4割程度で定員割れが慢性化している状況も多く見られ、公立大学として再出発しているところもちょいちょい出ている状況だ。

大学院重点化、国立大学の法人化など文部科学省はそれなりの改革を進めてきたが、あまりにグローバル競争が激しく。制度の在り方を根本から揺るがされているといっても過言ではないだろう。

【出典】大学受験ナビ

上図を見れば、18歳人口が減少しているのに、進学数が増加しているという何とも信じられない状況があそこにはある。こうして、新設された大学は需要を作り出すために、マーケティングに熱心になり、その結果、カタカタの「学部名」が増えることになるわけだ。

別にこれらは悪いことではないし、批判するつもりもない。現状の延長線上で生き残りを考えると当然のことだ(私が大学関係者としていても同じような経営をしただろう)。

しかし、そもそも大学の存在意義は変化すべきでは?

【出典】上智大学。筆者撮影

東大副学長の吉見俊哉さんによると「大学はこれまで少なくとも2度の誕生と1度の死を経ていて、12,13世紀に誕生、中世的秩序のなかで全土に増殖、15世紀まで高揚期。16世紀にはじまる近代への歴史の中で大学はダイナミズムを失い、知的生産の中心的な場ではなくなった」と指摘されている。
印刷術、つまり書籍が大学に勝利して、大学は敗北したのだ。近代知を発展させた基盤は活版印刷にあり、「軍事・法学・医学・科学・工学などの近代的諸分野で新しい知識形成の中核となったのは専門学校やアカデミーの専門教育」であったといわれている。

そう、大学は未来永劫続くものではないのだ。大学は政府の支援を受けながら再生して、総合的な高等教育研究機関となったに過ぎない。

つまり、大学は時代的に「過渡期」を迎えているのだ。この基本的な認識が必要だろう。オンライン教育が出てくる中、時代認識が問われよう。子供たちの期待、将来につなげるために何ができるのか、を徹底的に検討することが必要とされる。

日大への期待

日大は前回紹介したように

・国からの補助金 100億円
・都や県からの補助金 55億円

という支援を受けている。予算2698億円のうちわずか5%にすぎない。比較的余裕がある大学である。

だからこそ、こうした経営状況が安定的で余裕のある大学こそ、学内の権力闘争にいそしむのではなく、先進的なことに挑戦していかないと日本の大学をめぐる環境は厳しくなっていくのではなかろうか。短期的な戦略ではなく、歴史的な文脈をふまえた長期的な戦略、大学の在り方を再考して日本をリードする存在でないとこのままマンモス大学として恐竜と同じ運命をたどりかねない。

日大の建学の精神はこうある

◆日本大学の目的及び使命◆
日本大学は 日本精神にもとづき
道統をたつとび 憲章にしたがい
自主創造の気風をやしない
文化の進展をはかり
世界の平和と人類の福祉とに
寄与することを目的とする

日本大学は 広く知識を世界にもとめて
深遠な学術を研究し
心身ともに健全な文化人を
育成することを使命とする

ピンチはチャンス。日大には日大の良さがある。日大の改革に期待したい。

PS
次回は大学経営の未来について考えていきたい。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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