大学改革~日大でさえ必要?(その3)


【出典】日大アメフト部グランド、筆者撮影

・定員割れが5年間続いた大学が4割
・定員割れの大学等への補助額が全体の2割

という大学経営の「問題」。

こうした中、大学の無償化も言われている中、いったいどうなっていくのか、不透明な現状だ。今回、大学経営の改革において、歴史の文脈を踏まえつつ、その改革の必要性を考えていきたい。

だけど、日本の大学は

文科省が舵を切った大学改革はとってもまっとうである。「2018年度から私学助成の配分ルールが大きく変わる。定員割れによる減額率が大きくなる一方、教育の質も評価指標に加え、めりはりある配分をめざす」ということで、私学助成の配分も改善。

しかし、

◇加計学園経営の千葉科学大学のような定員割れ大学の新設(自民党文教族が力をつけてきた背景か?)
◇田中真紀子大臣が行った不認可問題:秋田公立美術大など3大学の2013年度開校を不認可とした「事件」(大反発をくらう)
◇留学生によって定員割れを防止の大学が多く存在すること、2010年に青森大学で発覚した「偽装留学事件」など
◇法科大学院の「失敗」(とされている)
◇乱立する専門大学院(専門学校でよくね?)
◇経営の厳しい地方私大が地方自治体の公立大学に(行政が引き取る?)

といった問題への処方箋は見いだせない。

現代の大学へ至る道

前回も書いたが、大学は16世紀にはじまる近代への歴史の中で大学はダイナミズムを失い、知的生産の中心的な場ではなくなり、書籍に敗北。その後に国民国家の支援を得て再生した歴史がある。デカルトなど有名な偉人が「大学教授」でないことからもそれが理解できるだろう。

そうした中、近代の大学は国民国家からの支援を受けつつ、「学問の自由」を主張するという内的矛盾を持った形で発展していったと思う。

近代日本での大学は、ドイツを中心に欧米各地に広がった大学概念を移植することにより誕生したとされている。例えば、医学はドイツ、法学はフランス、工学はスコットランド、農学はアメリカ、文学はイングランドといった当時の最先端からおかかえ教師、いや外国人教師を招いて一気にキャッチアップする形をとった。

印刷革命が席巻する新たな状況に対応できず一度死んだ大学。現在も、インターネットを介在した「エドテック」の隆盛に対応できてない、過渡期を迎えているといえる。

新たな大学像を模索できないか?

少子化の長期傾向の中、大学経営が、今後一気に厳しくなることは前回述べた通りである。それゆえ、目前の(経営という意味での)危機を目前にして我々は方向性を見失っている。

・文系学部、教養学部の廃止
・ビジネスに役立つ実学志向
・教養の意味合い・大事さの模索・価値の再考
・資格取得サポート支援
・マーケティング重視

といったそれぞれが近視眼的な「対策」、「戦術論」で終わっている。

水野和夫さんや玉木俊明さんが主張するように

・現代は超低金利のもとでの投資機会が失われていく時代
・16世紀はそれを契機に政治・経済・社会体制が大転換を遂げた
・資本主義とは、中心と周辺から構成され、周辺を広げることで中心が利潤率を高め、資本の自己増殖を促進するシステム
・近代資本主義・主権国家システムは存在意義を問われている
・現在は現在は中世のイデオロギーや価値観、システムが一新された「長い16世紀」と同じ
・21世紀は新しいシステムを模索せざるを得ない

という時代認識をもとに、その文脈をもとに大学の改革を考えるべきだと思える。

【出典】水野和夫「株式会社の終焉」を基に筆者作成

また、辻田真佐憲さんが「文部省の研究~「理想の日本人像」を求めた150年」(文藝春秋)で主張するように、日本の教育は、世界の価値観を基準とする普遍主義と日本の価値観を基準とする共同体主義の間を常にさまよっている状況だ。

こうした中、新たな大学像を模索せざるを得ない、周りをみていて、護送船団方式で進んでいては、どのみち生き残れないというところだろう。

東大合格者数一位の開成高校では既に海外大学への進学熱が高まっていることも最近話題になったように、グローバル競争にもさらされている。ミネルバ大学のような「エドテック」とも競争していかなければならない。

未来を予測して、学生にどういった「価値」「経験」「経験からの学び」「視野」を提供するのか。チャレンジの先陣を切ったところが生き残るということだろう。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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