【2020年 私たちの病院選び】「第1回:あなたのまちの医療広告看板をジックリ見てみよう」


ネットがない時代の病院・クリニック選び

インターネットが無かった時代。たった20数年前のことです。
あなたの親御さんは、あなたが病気になった時、どのようにして医療施設を選んでいたのでしょうか?

当時の「医療施設選びのための主な情報源」は、近所の口コミ、道路や電柱の広告看板、(お若い方は見たことがないかも知れませんが)各家庭に配布される「電話帳」にある広告でした。

広告といっても、施設名、診療時間、診療科目、連絡先などが書かれているだけのものです。
ホームページのような情報量は期待できません。
詳しい治療方法も、医師の考え方も知ることができませんでした。

このような状況で親御さんは、あなたの病気を治す医療施設を選んでいました。

ネットによる医療情報発信の規制が変わる

インターネットが誕生し、医療機関から大量の情報が発信されることで「自分に必要で、自分に合うであろう医療を選択しやすい社会」になってきたのではないかと思います。
大切な家族を治療してもらう医療機関を選ぶツールとして、インターネットは欠かせない存在となりました。

一方で、医療サービスのトラブルが目立つようになったことをきっかけに「医療広告について見直すべきである」という声が高まり、6月1日、医療に関する広告に関する規制が大きく変化しました。

#厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」

#厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について」

広告規制の変更によって何が変わり、情報の受け手である私たちは、どのようにして医療広告を読み取り、活用していくのが良いのか?を、医療広告・広報PR業務に20年来関わってきた経験をまじえながら、一緒に考えていきたいと思います。

あなたのまちの医療広告看板をジックリ見てみよう

まちを歩いていると、病院やクリニックの案内広告看板をたくさんあります。
わかりやすい題材として「歯科」の広告看板でよく見られる「インプラント」という治療を題材に、医療広告ガイドラインに沿って「適切な医療広告とはどのようなものか?」を一緒に考えてみましょう。

(1)インプラント科は認められない
ガイドラインP15「広告することができない診療科名の表示について」を見ると、以下のように記載されています。

「以下に例示する名称は診療科名として認められない」として、
「インプラント科」「審美歯科」が認められない具体例として掲載されています。

既に一般的な言葉になっている感じもしますが「診療科名」としては認められていないのですね。

(2)インプラントという表記は条件付きで認められる
インプラントは治療の名前で、広告看板に記載することができます。しかし、インプラントは自由診療のため、自由診療での手術その他の治療の方法を広告する際には条件があります。
ガイドラインP26「自由診療のうち医薬品医療機器等法の承認又は認証を得た医薬品又は医療機器を用いる検査、手術その他の治療の方法(広告告示第2条第5号関係)」に、広告可能な条件が記載されています。

ただし、公的医療保険が適用されない旨(例えば、「全額自己負担」、「保険証は使えません」、「自由診療」等)及び標準的な費用を併記する場合に限って広告が可能であること。

つまり、「インプラント」という表記だけではダメだということです。
たとえば「※自由診療 10万~50万円程度」と記載しなくてはなりません。

(3)文字サイズについて
「インプラント」は条件付きで広告可能であるため、私が住んでいるまちにもたくさんの広告看板があります。
しかし、よく見ると、自由診療であることや費用が書かれていないように見えることがあります。気になって近づいてみると、近眼の私にはあまり認識できないような文字サイズで書かれていることもあります。
そこで「適正な文字サイズ」について当該の医療広告相談窓口に質問したことがありますが、明確な回答を得ることができませんでした。どのような文字サイズが適切であるかを判断できないのかもしれません。
今回の改正を見てみると、いくつかの項目で文字サイズについて言及されています。
たとえば、ガイドラインP11「広告可能事項の限定解除の具体的な要件」では、自由診療での説明について以下のように記載されています。

また、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと。

また、ガイドラインP7「(4)誇大な広告(誇大広告)」の具体例では以下のように記載されています。

小さな文字で注釈が付されていたとしても、当該広告物からは注釈を見落とすものと常識的判断から認識できる場合には、誇大広告として扱うべきである。

上記で述べたガイドラインP26の広告可能な条件の項目には記載がありませんが、文字サイズに言及した他項目もあります。各地の医療広告相談窓口が、文字サイズについて、どのような判断をするのか興味深いところです。

不適切な広告だと感じたら

あなたが、ご自分のまちにある医療広告看板を不適切だと感じたらどのようにすればいいのでしょうか?

相談先としては、都道府県、区、政令指定都市に医療広告相談窓口があります。

医療広告相談窓口一覧

私も仕事柄相談することがありますが、私が住んでいるまちでは医療広告看板のパトロールをしているわけではないようで(平成29年度に確認しています)、市民や事業者からの相談が確認するきっかけになっているようです。

また、相談する際には、不適切な広告だとは断言できないことに注意しましょう。
スマホ等で写真を撮り実際に見せる等、事実のみを伝え、まずは相談窓口の判断を待つのが良いのではないかと思います。

医療機関も対応は大変

医療機関も対応に追われているというのが現実だと思われます。
というのも、医療広告ガイドラインが正式公開されたのは平成30年5月8日のことですから、運用開始一ヶ月を切る時期というのは、なかなか厳しいものがあります。
真摯に医療に取り組んでいても、看板の変更などには費用もかかるものです。半年ほどは医療機関の対応を観察することも必要ではないかと思います。

今後、インターネット上のバナー広告、交通広告、ホームページによる情報発信、テレビ・ラジオ・雑誌広告など、さまざまな媒体の医療広告について、生活者視点でご紹介していきます。
あなたが医療広告、医療広報・PR媒体を活用する際の参考になることがあれば幸いです。


山内真一
山内真一

Webディレクター/コト・デザイナー
1998年テットコム創業。医療・保育・健康・士業等の制約が多い業界を編集し、新しい市場・顧客・人材を創り出す。また、地元のエリアリノベーション事業、茶畑・企業用地・中山間地での自転車レースイベント開催等のサイクルスポーツ推進事業も手がけている。

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