スポーツ現場のリアル・第5回 本田圭佑という男(その2)


【出典】本田圭佑選手、筆者撮影

「リトルホンダ」はどう思っているのだろう・・・・
「伸びしろ」はもう・・・

2-0。ワールドカップ直前の強化試合。強豪スイスに負けたサッカー日本代表。今回、彼のプレーは残念ながら期待通りとは言えなかった模様だ。すでにトップ下として機能していないという指摘も相次ぎ、ポジションを譲るべき・限界との意見もサポーターの中から出てきている。

パチューカ(メキシコ・リーグ)で復活したとはいえ、ACミラン(イタリアリーグ)での成績は振るわなかったことも事実。

ハリルホジッチさんの日本代表では不動の地位から外され、予選突破においてもそれほどの貢献はできなかった。そもそも、23人メンバー入りが当落線上、すれすれだった存在であったことも事実。23人には選ばれて、中心選手に復権してきたが、世間の目は厳しく、冷たい。

【出典】本田圭佑、筆者撮影

ビジネスマンとしての成功

本業でのさえないニュースと同時に、副業では素晴らしいニュースが駆け巡った。

1つは、インターナショナルスクールの開校のニュース。本田さんが発起人となり、来年4月に千葉・幕張新都心エリアにて開校するらしい。

2つめは、「本田圭佑応援グッズ「KSK4」シリーズ限定発売」のニュース。Soltilo株式会社が物販事業を新たに展開することが明らかになった。

3つめは、スポーツマッチングサービスという事業展開。「Now Do(ナウドゥ)」というもので、パーソナルトレーニングを促進する事業だ

本田さん自身が宣伝している

彼はトッププロサッカー選手であると同時に、新たな時代のスポーツ選手の「その後のキャリア」の在り方を見せつつある。オーストリア、アメリカのサッカークラブの経営に関与し、日本ではソルティーロファミリアサッカースクールの経営などなど。教育事業にもかかわっている。そこからは鹿島アントラーズの安部裕葵選手のような出身者も輩出している。

ロシアワールドカップ、サッカー日本代表のリーダーである本田圭佑は彼も言うようにプレーヤーとしては「平凡」だ。足が速いわけでもない、ドリブルが凄いわけでもない、それほど守備に走り回るタイプでもない。確かに体が強く、キープ力もあるが、アイデアやパスセンスが抜群、ロングキックが正確というわけでもない。彼も「並」だということを認めている。

でも、ここぞという時に「結果」を残してきたのは彼なのだ。彼がプレーヤーとして活躍できたのは、精神面であり、メンタルというのは言うまでもない。

【出典】筆者撮影

本質はストイックで真面目な男

彼はこう言っていた

勝負を決めるのは準備
なかでも気持ちの準備ほど大事なものはない

まさに至言。

そして彼は、試合の翌日からは自分の試合でのパフォーマンスについて聞くそう。

「自分を客観視するためにとにかく聞く。自分のイメージ通りのこともあるし、聞いていて少しイラっとすることもある」

「自分のイラっとする感情なんて関係ないから。大事なのはそこじゃない。僕自身は真実しか興味のないタイプなんでね。偽って生きていてもしょうがない」

(文芸春秋社「ナンバー」、2011年8月号、p21)

「真実」に向き合うことを大切にしている。彼の仕事に対する真面目な姿がそこにはある。その時にはイエスマンは求めないのだ。

これはなかなかできないことだ。人間どうしても、厳しい意見は避けたがるもの。その厳しい意見に目を背けず、真摯に向き合っている。地位があがっても、だ。おそらくそのことが、成長につながると理解しているのだろう。

「努力する才能は超一流だった」(文芸春秋社「ナンバー」、2011年8月号, )と名古屋時代のコーチや同僚たちに言われるほどで、わからないことがあった場合、先輩の藤田俊哉さんや秋田豊さんといった日本サッカーのレジェンドたちに臆することなく質問していったそう。

本田さんの小学校の卒業文集で掲げた「ワールドカップ優勝」は有名だが、彼が夢に向かって毎日を真剣に生きてきた。

常に真剣勝負、本田さんの哲学

「夢に向かって日々努力することで人間として大事なことが学べるのではないかというのが私の哲学」

彼の努力家としての一面はこの言葉に集約されている。
本田圭佑「夢を力に2014」特別インタビューでも、語られることだが、彼の人生において語られるのは「挫折」である。「挫折がありすぎる」中でも、

・ガンバ大阪ジュニアユースでレギュラーポジションを確保できなかったこと
・ガンバ大阪ユースにあがれなかったこと
・オランダのVVVフェンローで2部リーグに落ちる

そこで悔しさをかみしめて歯を食いしばって、自分を信じて夢の存在を糧に乗り越えてきた。困った時ほど夢を呪文のように唱えて、すがっていたと語っている。

「安定というのはこれまで使ったことがない、聞いたことがない、僕の辞書にない」
「人生は上がるか、落ちるかのどっちかでしょ」

(文芸春秋社「ナンバー」、2011年8月号、p20)

このユニークな哲学が挫折を乗り越える中で作り上げられていったのだろう。

たぐいまれなるコミュニケーション能力

ただサッカーはチームスポーツでもある。1人がいかにストイックにがんばっても限界はある。コンビネーションをいかに高めるかもプレーヤーとしては大事。その面でも本田さんは優れている。

先輩に物おじしないで話しかけ、「俺流を貫こうとして外されたらアホや」と孤立しない程度で抑えるコミュニケーション能力。それは、意見を求め、話し合うことが大事という認識と自己主張はするけど他人の意見を聞く姿がよく知られている。

エピソードとして知られていることだが、星稜高校時代、先輩である豊田陽平選手(サガン鳥栖、元日本代表FW)に対して「おい、とよ」と呼び、一方、豊田さんは本田を「本田さん」と呼んでいた(若干、豊田さんが脚色している面もあるだろうが)。

さらに上下関係を撤廃したり、先輩にもさん付けもしない言動をし、監督のような視点から全体を束ねることができたのは、その人間性とコミュニケーション能力に裏付けられたリーダーシップがあってのことだろう。

【出典】FKを蹴る本田選手、筆者撮影

さてもうすぐサッカー、ワールドカップ。

サッカー日本代表は惨敗すると予想されている。本田さんへの批判も高まるばかりである。

多くの人を見返してきたのが本田圭佑さん。チームのリーダーシップをとってきた、逆境でも結果を残してきた。有言実行、こんな男は最近の日本人にかっていただろうか。

日本社会の未来、希望として、世界で輝いてほしいと切に願う。


西村健


人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。 慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで行政・民間の業務改革、能力開発を支援してきた。独立後、プレゼンテーション向上、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。

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